(52)良い子
小説を読んでいて、小さな子供に「良い子だね」というシーンがあったのだが、この「良い子」っていったい「どんな子」なんだろうかと、ふと思った。
その小説の話の流れは「落とし物を拾って交番に届ける」というシーンからの流れなので、交番に届けた子供が「良い子」というのは納得なのだが、ひねくれ者の僕は、「そもそも『良い子』という評価は『誰にとって良い子』なのか」という疑問を感じた訳だ。
例えば交番に落とし物を届けた子は、公共秩序の視点でも良い子だし、落とし物をした人にとっても「良い子」だし、届けられた交番の警察官にとっても「問題を減らしてくれる良い子」だし、何も悪い所は見当たらない。
つまり誰から見ても「良い子」な訳で、これはこれでいいのだが、僕が子供の頃に「良い子だね~」と僕に言ってきた大人のセリフに、いつも違和感を感じていた僕は、どうしてもこうしたひねくれた疑問を感じてしまう訳なのだ。
例えば電車の中で、買い物袋を沢山抱えた母親とその子供が座席に座っていたとする。
そこに高齢者が二人乗って来て、子供が席を譲ったとする。
そして「良い子だね~」と高齢者の一人が席に座った場合、荷物を抱えた母親は「自分も席を立つべきかどうか」を悩むハメになるのではなかろうか。
席を譲れば高齢者に感謝はされるだろうが、重たい荷物を指がちぎれそうな思いをしながら持っていなければならないかも知れないし、席を譲らなければ「子供はいい子なのに、母親は冷たい人」などと思われかねない。
こんな事なら「最初から子供が席を譲らなければ良かったのに」と思ったりして、この母親は自分の子供に「良い子」と素直に思えないのではなかろうか。
むしろ「気の利かない子」などと考えてしまうのではないか?
そう考えると、「良い子」ってセリフ、ちょっと怖い響きに聞こえてきませんか?
と、そんな事を考えてしまった僕は、「これって小説の中で使えるかも知れないな」とネタ帳宜しくここに記載している訳である。
怖い話に使えるように、もうちょっと掘り下げて考えてみる事にしよう。
うん。
「良い子」の恐怖話とか、面白いかも知れないな。
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