(28)実体験

 小説の中で色々なシーンを書く時に、過去の自分自身の実体験というものが参考になる事が多くある。


 というか、そうした体験や経験が無ければ、リアルな表現など出来ないのではなかろうか。


 今の僕は東京都内に住んでいるが、20年位前までは大阪に住んでいた。


 根本的なところが大阪人の僕は、基本的に「日常が面白くないと我慢できない」という性格だ。


「面白い」というのは「笑いがこぼれる程に」というのが条件で、東京に住んでいる今も、長い間面白い事が無い日が続くと、何となく生きる力を失ってしまう気がしている。


 そうした体験や経験は、僕の小説にも当然活かされている。


 カクヨムで初めて書いた「通学電車」という短編小説では「電車の扉に挟まる小太りのオジサン」を描いたシーンがあるのだが、これは僕が「東京メトロ銀座線」という地下鉄で実際に目の当たりにした事が元になっている。


 この時の僕は、スマホでフェイスブックにこの事を書き込みながら、肩を震わせて笑いを堪えるのに必死だった訳だが、忘れられなかったこの体験に脚色して執筆したのが「通学電車」のこのシーンであり「帆地槍ぽちやりさんは愛したい」の第一話に出てくる「帆地槍ほちやりさん」自身が扉に挟まるシーンでもある。


 他にも「帆地槍さんのペーソス」という小説にある「公園で子供に挨拶をしただけで、地域の防犯掲示板に不審者として公表される」というエピソードも、僕が実際に経験した事だ。


 これは、とある小学校から児童に贈る「ノベルティ」の提案を求められた事があり、僕は「防犯ブザー」を最初に思いついたのだが、今の児童はみんな既に防犯ブザーを持っていたので、他に何かないかと、近くの公園で子供達を見ながら考えていた時の事だ。


 たまたまボールが僕が座っていたベンチのところに転がってきて、それを追ってきた小学生にボールを渡しながら

「こんにちは」

 と挨拶をしただけなのだが、その日のうちに「〇〇公園で男の子が不審者に『こんにちは』と声を掛けられる事案が発生」などと書かれていた事があって、それを脚色したのがあのシーンになっている。


 他にも若い頃に色々な面白い経験をしてきたので、そうしたエピソードを小説に落とし込んでいきたいところなのだが、僕の書く物語は、けっこうシリアスなものが多い。


 なので、いつかコメディ小説を書く事があったら、大阪人としての本領を発揮できるのではと、密かに思っているのである。


 うん、いつか書こう。


 コメディなやつを!

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