(27)読み間違い、聞き間違い

 小説とはあまり関係の無い話なのだが、仕事で顧客からFAXで資料の申込書などが送られてくる事がある。


 そこには、会社名と部署名、担当者名と連絡先の情報が書かれていて、それを見た僕が連絡先に電話をして営業活動をするといった具合だ。


 ある日、とある大手企業からFAXが届き、担当者名には「シエロ」と書かれていた。


 なるほど、外国人の様だ。


 そこで僕は、資料を準備して電話を掛けると、電話口に出た女性に

「シエロさんはいらっしゃいますか?」

 と問いかける。


 すると女性は

「どちらへお掛けですか?」

 と逆に問い返してきた。


 僕はFAXに書かれた社名と部署名を伝え、FAXに記載されていた電話番号を伝えると、どうやら電話番号は合っているし、社名も部署名も間違ってはいないらしい。


 しかし、シエロという人は居ない様で、どうしたものかともう一度FAXの名前の欄をよくよく見て、やっと気付いた。


 文字が自由奔放過ぎてさっきは気付かなかったが、もしかしたら「シエロ」じゃなくて、「江口」かも知れない!


 そこで

「あ、すみません。もしかしたら、江口様かも知れません」

 と僕が言うと、電話の向こうで女性が吹き出すのが聞こえ、すぐに保留の音楽が鳴りだした。


 で、結局「江口さん」が電話に出てくれたのだが、電話の向こうはまだ爆笑しているらしく、僕の読み間違いが相当面白かったらしい。


 なるほど。


 これはコメディな小説に使えるかも知れない。


 同じ様な例で、こんな話があった。


 とある会社の電話相談窓口の女性が、かかって来た電話に対応していたらしい。


 相談者は仮に「山崎さん」としよう。


 で、相談窓口の女性は、相談内容を記録する為に、

「ヤマザキ様は、どんな漢字ですか?」

 と訊いたところ、


「普通の・・・、ちょっと大人しそうな感じって言われます」

 と答えたんだとか。


 相談窓口の女性は最初意味が解らず、しばらくしてから

「あ、そういう事では無くですね。ヤマザキ様の名前の漢字を教えて頂きたくて」

 と言い直しながら、ずっと笑いを堪えていたらしい。


「漢字」と「感じ」を聞き間違えたという事なのだろうが、同音異義語というのはいくらでもある。


 小説を書く際には、こうした誤解を生じさせないような読み方も考慮した方がいいのかも知れないな。


 そして、聞き間違いや読み間違いっていうのは、コメディやミステリー等でも使えそうな気がしてきたぞ。


 ちょっとそういうエピソードにもチャレンジしてみようと思う僕なのであった。

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