(6)意識高い系

 普段、僕が仕事をしていると、打合せやメールで色々な「ビジネス用語」が交わされる。


 20年位前に最初に大阪から東京に出てきて思ったのは「東京はビジネスがしやすい」という事だ。


 大阪で営業していると、顧客はこちらの話をよく聞いてくれる。


 が、色々商品の案内をしても最後には


「考えときますわ」


 で終わってしまう。


 大阪でこのセリフは、言わば「断り文句」だ。


 が、東京では違う。


「考えておきます」


 と言われて「あー、ダメだったか」と思った翌日に、「考えた結果、御社の案を採用する事になりました」というメールが届いたりする。


 つまり、言葉通りに「考えて」くれた訳だ。


 これが僕が東京を好きになったきっかけだ。


 しかし、企業のグローバル化が進むにつれて、英語を使う表現が増えてきて、しまいには「とにかく横文字で表現しときゃいいんだろ?」みたいな風潮が出て来た気がする。


 更に新しく入社した若者達も、まずは「ビジネス用語を覚えなくちゃ」となり、会話の中で異常なまでに横文字を使う様になってきたのだ。


 やがて「意識高い系」と呼ばれる様になり、実際に「意識が高い人」とは別の、「意識高い系」という人種が定着した訳だ。


 仕事をしていると、そういう人と出会う事もある。


「今日のミーティングは例のプロジェクトのブレインストーミングの場に出来ればと思います。オポチュニティが無駄にならない様に、皆さんもキャッチアップ出来る様にお願いします」


 みたいな司会が始まると、確かに僕はウンザリする。


「今日の会議は例の企画の意見交換会にできればと思うので、この機会が無駄にならない様、みんなちゃんと付いて来てね!」


 でいいと思うのだが・・・


 しかし時代はグローバル化の波に飲まれている訳で。


 仕方が無い、僕も頑張って使っていくとするか。


 今日もテキストのハードコピーをチェックして、スペックをエビデンスにサゼッションを作成し、プロダクトのインフォメーションとプロポーザルクォーテーションをクライアントにセンディングしなくちゃな。


 ・・・・・・・・・


 ふひっ。


 変なの。

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