そっくりな星


そっくりな星




 見た目からしてそうだった。


 脱出ポッドの窓から綺麗なブルーの星を目にした時はタイムスリップでもしたのかと思うほどその小さな星は地球にそっくりだった。


 脱出ポッドを降りても夢を見ているかのようで信じられなかった。


「やあ、お疲れ様」

「随分宇宙を彷徨ったみたいだな」

「まだ生存者がいたとはね」


 脱出ポッドは遠隔操作されスムーズに街中の広い駐艇場に到着した。


 私の周りに集まってきたのはまぎれもなく地球人、人間だった。


「あの……ここは……」


「地球にそっくりだろう?」

「この星を偶然見つけた人間が地球人に信号を送ったのさ」

「そして集まった我々がこうやって地球そっくりな星を作った」


「作った?」


 どや顔で嬉しそうに話す人間たち。


「もともとこの星は地球みたいに自然豊かでね。海もあれば山も森もあった。地球とは少し違うけれど、いろいろな動物が住んでいたんだ」

「そう、先住の宇宙人がいなかったからよかったよ」

「我々はすぐにこの星の開拓を進めた」


「山や森? もしかして山を切り開いたのですか?」


 自然豊かだったとは到底考えられなかった。


 とにかく今のところ見渡す限りコンクリートの道路と家々だ。


 以前の地球のような高層ビルはないものの、それ以外はあの懐かしい街並みだった。


「我々には知識がある。人間もたくさん集まって知恵を出し合いこうやって街を作っていったんだ」


 言われて見ると確かにまだところどころ、大量の工事用ロボットが道路工事をしたり家を建築したりしている。


 工事用ロボットを見るのも久しぶりだ。


 誰かが脱出ポッドに乗せてきたのだろうか。


「今ロボが工事している区画、あそこはまだ全部空き家だから、好きな家を選んで住むといい」


「はあ……ありがとうございます」


「ゆっくり見て決めるといいよ。勝手は前と同じさ。家に入ったらAIに名前を登録すればいい」

「買い物だって同じだよ。全てAIに頼めばいい」

「とにかく地球と同じってこと」


「はい……ありがとうございます」


 どこか半信半疑なままではあったが、とりあえず言われた通り、工事中の区画へと歩き出した。


 それに地球と同じ、という言葉に違和感を感じていた。


 やっと見つけた永住できそうな星。


 喜ばしいはずなのに何故か私は寂しさに似たような感覚を抱いていた。


 住宅地と呼べるような街中は地球と同じように普通に人間が歩いている。


 この景色もまた懐かしい。


 この辺りで好きな家を選んでいいとは言われたが、見た目はどれも似たような四角いだけの建物だった。


 手っ取り早く一番手前の家に入った。


 地球と同じならば、とにかくコンピューターにアクセスさえすればこの星の全容が明らかになるはずだ。


『名前を入力してください』


 早速AIに感知された。


 メインサーバーは玄関ドアの横に設置されていた。


「君の名前は?」


『私の名前はリアースです』


「リアース、この星の地図を」


『この星の地図です』


 壁に埋め込まれた大画面に地図が映し出された。


 そのほとんどが海のようだった。


 大陸らしきものは一つしかない。


「リアース、地球人が来る前のことを教えて」


『はい……』


 私は長いことリアースと話しながらこの星を画面を通して眺めていた。





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