ロックな星
ロックな星
脱出ポッドを降りてすぐに答えは出ていた。
(ここには絶対に住めないな……)
見渡す限りの山々は噴火しているようで、所々赤くなっていた。
「暑い……」
思わず口に出してしまう程の暑さだ。
「アツイのは当たり前だぜ、地球人さんよ」
軽快な声に振り向くと、そこにはゴツゴツした丸い岩に目と鼻と口が付いている犬くらいの大きさの物体が転がっていた。
「あ、どうも。お邪魔してます」
「なんだ? こんな星に観光かい?」
顔のついた岩はピョンピョンと飛び跳ねていた。
「いえ、永住出来る星を探している途中です」
「ホウ! とうとう地球も失くなっちまったか! ロックだねぇ」
気のせいか岩は楽しそうにしている。
「あの、ここはいつもこんなに暑いのですか?」
「当たり前よ! オレたちはロックだぜ! 魂を燃やしてんだ!」
「はあ……」
「さあどうする? ここに住んでロック魂ってもんを見せてみるかい?」
「いえ、私にはちょっと暑すぎるみたいです。溶岩にも耐えられませんし」
「ハッハッハ、それもそうだ。オレたちは溶岩を浴びてさらにでっかくなるんだ!」
岩はどや顔でコロコロと転がっていた。
するともうひとつ、今度は自動車ほどの大きな岩が転がって来た。
「コラァ! お前またこんな所でサボって何やってんだい! さっさと仕事しな!」
大きな岩は小さな岩に怒鳴り散らしている。
「わあっ、かあちゃん、ごめんなさい!」
小さい岩は逃げるようにしてコロコロと転がっていってしまった。
「ったく、あの子はいつもああなんだから。ごめんなさいね、人間さん」
「いえ、とんでもない。おかげで楽しかったです」
「まあ、見た目も柔らかそうだけど、心も柔らかいのね、ふふふ」
大きい岩はぶきみに笑っていた。
「あの、仕事って、いったい何をしているのですか?」
「ああ、仕事ね。あの山々から流れてくる溶岩を少しずつ浴びて、自分の体を大きくしていくのよ。暑さに耐えながらね。どう? ロックでしょ? ふふふ」
「ど、どうしてそんなことを」
「えっ? どうしてって……さあ……。どうしてかしら。ロックっぽいなら何でもいいのよ。あはは」
「……はは」
暑さに限界を感じてきた私は、それじゃあと大きな岩に頭を下げてから脱出ポッドに乗り込んだ。
(ロックに生きているロックか……)
ポッドから下を見下ろすと大きな岩がこちらを見ながらピョンピョンと飛び跳ねていた。
(はは、可愛いな……)
私はシャワーで汗だくになった体を冷ますことにした。
(久しぶりにロックでも聴くとするか)
大音量でロックをかけながらノリノリで浴びるシャワーは楽しかった。
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