オシャレな星


オシャレな星




 細長い綺麗な高層ビルが建ち並び、上空には飛行する格好いい車が行き交っている。


 地上を歩く様々な見た目の宇宙人は何処かせわしなく、いかにも都会的な雰囲気が漂っていた。


 とにかく建物も車も宇宙人も、全てがオシャレで圧倒された。


 宇宙人はみんな細くて背が高く、地球で言うところのパリコレを星全体で開催しているようだった。


 (……これではまるで大人と子どもだ)


 自分の格好に恥ずかしさを感じるほど場違いなところに居る気がした。


「あら珍しい。観光客?」


 声をかけてきたのは、肌が緑色で首が異様に長い女性だった。


「あ、はい。ここは素敵な星ですね」


 女性は見上げるほど背が高く、ゴールドのドレスにゴールドのアクセサリーをたくさん身に付けていた。


「当然よ。ここは宇宙の流行の最先端の星だもの。あちこちの星からトップモデルやデザイナーがここに次の流行をチェックしにくるのよ」


「へえ。スゴいですね」


 女性は自慢気な顔をしていた。


「それにしてもあなたのその格好、見過ごせないわ。ついてきなさい」


「えっ?」


 女性は私の腕をつかみ歩き出した。


 ついていくというよりもなかば引きずられるようにしてすぐ目の前の建物に入らされた。


 だだっ広い鏡貼りの空間に衣装が並べられ、オシャレなガラスケースにこれまたオシャレなアクセサリーがたくさん飾られている。


 横には美容室をイメージさせる椅子と色とりどりのヘアメイク用のアイテムがぎっしりと並べられていた。


「あの、……ここは?」


「ここはあなたのような観光客やダサい人を素敵に変身させる場所よ」


「……はあ」


 自分がダサいと言われた気がして微妙な気分だった。


「この星にはダサいモノは似合わないの。さあ座って」


「失礼します」


 言われるがまま椅子に座った。


「今年の流行は坊主なの」


「は?」


 女性はバリカンを手にとった。


「あなたを流行の最先端にしてさしあげるわ」


 女性は不気味に笑いながらバリカンのスイッチを入れた。


「ち、ちょっと待って下さい。それはムリです」


「あら、どうして?」


 私は慌てて椅子から立ち上がった。


「じ、時間がないので、もう行きます。お邪魔しました」


 一応頭を下げてから逃げるように建物を出た。


「ちょっとぉ! そんな格好でうろうろしないでよぉ……」


 女性が叫んでいたが気にせず走った。



 (危なかった……)


 危うく坊主になるところだった。


 脱出ポッドに戻るまでに道行く人たちを観察したが、坊主の人はほとんどいなかった。


 本当に今年の流行なのだろうか。


 というか、もっとこのオシャレな星を観光したかったのに……。


 残念な気持ちと、オシャレな金持ちとは合わないなという気持ちが複雑に絡み合っていた。



 ポッドに乗ると、どっと疲れていることに気づいた。


 (わがままなセレブにはうんざりだ……)


 宇宙に飛び立ち、ひと眠りして忘れることにした。





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