戦う星
戦う星
――ドーン、ドーン
――ダダダダダ、ダダダダダ……
激しい爆音と銃撃音で飛び起きた。
脱出ポッドから出てみると、どうやら戦争の真っ只中、しかもちょうど最前線のど真ん中に降りてしまったようだ。
「わあっ」
脱出ポッドはある程度の衝撃に耐えられるだろうが、私が耐えられない。
左右から飛んでくる銃弾やミサイルのような爆発物に当たらないように耳をふさいでしゃがみこんでいるのが精一杯だった。
しばらくそうしていると、音が止んだようなのでおそるおそる顔を上げてみた。
「やっぱりお客様だ、少し休憩しよう」
「ソウダナ」
右側から大きな銃をかかえたタコのような宇宙人が、左側からは全身がシルバーの鎧とマスクを着けている人間のような体格の宇宙人が近付いてきていた。
「人間がいるとは知らず失礼しました」
シルバーが私に向かって頭を下げた。
「ダカラムコウデヤロウトイッタンダ」
タコがブツブツ話している。
「すみません、戦争の邪魔をしてしまったみたいで」
私は立ち上がりながら二人を交互に見た。
「戦争ではありません。ただの日課です」
「日課?」
「はい。私たちはお互いに武器を製造して宇宙中に売りさばいています。なので毎日試作品のテストや性能を確認しているのです」
「ウチノミサイルヲコエルモノハ、オマエタチハツクレナイカラナ」
「なにぃ? お前のとこのマシンガンなんかすぐ壊れてクレームばっかりじゃないか」
「オマエノシュルュウダンミタイ二、ゴバクシタコトハナイケドナ」
「はあ? だいたいお前のとこよりも俺たちの方が注文多いんだからな」
「イヤイヤ、ウチノホウガオオカッタゾ」
「何だと? 計算もできなくなったのかよ、このタコ野郎」
「タコジャナイッテイッテルダロウ! オマエノナカミハイカノクセニ」
「なんだ、やる気か?」
「ソッチコソ」
――カチャ
――カシャカシャ
二人はお互いに銃を向けあった。
「ち、ちょっとちょっと、落ち着いて下さい」
私は慌てて二人の間に入った。
「とめないで下さい」
「ソウダソウダ」
「そんなあ、無理です。ケンかはやめて下さい」
「……じゃあ、あなたが決めて下さい」
「は?」
「タコとイカ、どちらが好きですか?」
「はあ?」
「ドッチダ」
「両方好きとかは無しでお願いします」
「ええ……」
二人が私に注目している。
「私は……焼いたイカが好きです」
「……」
「……」
少しの静寂のあと、二人は笑い出した。
「ハッハッハ。オマエハヤカレルンダ。コレハオモシロイ」
「焼かれたとしてもイカの方が好きなことには変わりはないがな。ハハハッ」
私はほっと胸を撫で下ろした。
「それでは私はそろそろ行きます」
「いやぁ、面白い答えをありがとうございました」
「マタナ」
私は急いで脱出ポッドに乗り込んだ。
(なんだったんだ……)
間違った答えを言わなくてよかった。
いや、もしかしたらあの二人はここに来た者みんなにどちらが好きか聞いているのではないのか?
統計をとっていたりして……。
(タコとイカ、どっちも好きだけどな)
そんなことを考えながら、また長い旅が始まるのだった。
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