クローンの星
クローンの星
(まともな星だといいな……)
脱出ポッドから外へ出た。
辺りを見渡す。
地球よりもテクノロジーは進化しているようで、自動車に似た乗り物が空を行き来している。
高いビルのような建物もたくさんあって、私はそのビルの屋上のような広場にいるようだ。
きっと来客用の宇宙船駐艇場なのだろう。
自動ドアが開く音がしたのでそちらに目をやった。
(子供?)
小さい生物が三体こちらに向かってくる。
近づくと、みんな同じ顔をしていた。
髪の毛はなく、耳もない。
目は黒くて大きい。
一般的に宇宙人といわれているあの姿だった。
「ようこそお越しくださいました」
三体のうちどれが話したのかはわからなかった。
「お邪魔します。この星はどういう星ですか?」
「私たちは一つの母体、マザーの遺伝子を組み換えられて造られた、いわゆるクローンです」
「クローン?」
「はい。その昔、この星に迷いこんでしまったマザーが自分のクローンを大量に造り、ここまで進化した星になりました」
「スゴい……」
私は普通に感心した。
「地球人もたまにこの星を見学に来ていました」
「そうでしたか」
「もしここに住むのでしたら、あなたのクローンも造ってみたいとマザーが言っております」
「マザーは今も生きているのですか?」
「マザーは永遠に私たちの遺伝子の中で生きています」
「ああ、そういうことですね」
「どうされますか。ここに住みますか」
「いえ。失礼かもしれませんが、私は自分のクローンがほしいとは思いません」
「そうですか。今なら特別に一体無料でさしあげますとマザーが言っておりますが」
……普段はお金を取るのか?
とつっこみを入れたくなったが、グッと我慢した。
「ありがたいですが、遠慮しておきます。私も早く、次の星を探さなければなりませんので」
「わかりました。もしどこかで誰かがクローンに興味がありそうでしたら、ぜひここを宣伝して下さいとマザーが言っております」
私は思わず笑ってしまった。
「あはは。ええ……わかりました。必ず宣伝しておきます」
「ありがとうございます」
「こちらこそ、お忙しいところお邪魔しました。
では失礼します」
私は頭を下げてお礼を言い、脱出ポッドに乗り込んだ。
なんだか久しぶりに変なセールスマンに引っかかったような感じだ。
どこか懐かしい感覚で、私はポッドの中でしばらくの間、笑顔だった。
(クローンか……)
いったいいくら取るつもりだったのか。
まあ、面白かったから次の星で宣伝してあげようか。
(ふふ……)
私はまた思い出し笑いをした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます