第4話:反撃

「えっ、ええええええ!!!!」

家中にこの声が響いた。

無理もない。妄想の中にいた彼女が僕の家にいるのだから。

「な、なんで陽菜が?」

「最後に必要なのは彼女でしょ?」

「相手よりも今はかっこいいし強いけど彼女がいないと相手よりも上に立てないしね!」

彼女は言った。

「でも、学校とかはどうするんだい?」

妄想の中では彼女は僕と同年代となっている。

だから学校に行かないと不思議で仕方ないのだ。

「行くよ。転校生として。それと、こうすけ君の彼女として!」

そう彼女は言った。

こんなに美人な彼女が現実でできるなんて昔の僕は思いもしなかっただろう。

見渡すと彼女の服やメイク用品などなど様々なものが増えていた。


彼女が現実にやってきてから約1週間が経とうとした頃

彼女は入学の手続きを済ませ、今日から僕らの学校に来ることになった。

僕は復讐の準備をしている時は学校に行ってなかったから半年近く学校に行ってなかったことになる。

「こうすけ君。行こっか。」

そう彼女が言った。

彼女の隣に立つと妙に心臓の鼓動が速くなった。

こんなに美人な彼女が僕の隣に立っているからだろうか?

それとも久しぶりの学校で緊張しているのか?

僕はその両方だと考えた。

すると彼女は勘づいたように僕の手を握った。

「大丈夫だよ。今のこうすけ君は見間違えるほどに変わった。きっと成功するよ!」

そう彼女は僕を勇気づけてくれた。

そうだ。僕は変わったんだ。もう負けない。負けるはずがない。絶対に成功させるんだ。

僕は彼女と手を繋ぎながら通学路を歩いた。

「ヒソヒソヒソ」

同じ学校の生徒たちから小声が聞こえる。

そのせいで胸が痛む。

それを気づいて彼女が強く手を握る。

優しく微笑んでくれる。

それを何回か繰り返しているとやっと学校に着いた。

「じゃあ私はここで。校長先生たちに挨拶をしに行かないとならないらしい。」

「わかったよ。じゃあね。」

「うん!バイバイ!」

そう交わした後僕は半年ぶりの教室に向かった。

階段を登り、曲がり角を曲がると見慣れた僕らの教室がそこにはあった。

さあ、挨拶をして入ろう。

そう思い深く深呼吸をしてから教室に入った。

「お、おはよう!」

すると今いる生徒全員が僕の方を向く。

変な汗が流れる。

大丈夫。何も怖くない。

そう自分に言い聞かせて

教室の奥に向かっていった。

通学路のような小声がここでも聞こえてくる。

だが今回は少し違った。

「ねぇ、貴方転校生?」

そう僕に話しかけてきたのは変わり果てた彼女だった。

そう。赤城晴人に変えられてしまった小鳥居すみれさんだった。

「やっぱりわかんないよね。」

そう僕は彼女に言いながら自分の席に座る。

するとみんなが信じられないと言わんばかりの顔をしている。

「もしかしてお前キモ男か?」

今度はあいつが話してきた。

でも僕は無視をすることにした。

「…」

「おい!キモ男か?って聞いてんだよ!答えろよ!」

「やっぱ外見がいくら変わろうと内面は変わんないんだって性格は根暗なインキャのままだぜこいつ。」

そうヘラヘラしながらみんなに向かっていった。

「ドンッ!」

僕は無意識に椅子を蹴飛ばしていた。

「ハッ!」

僕はすぐに冷静になり廊下に出た。

まだ衝動的になる場面じゃないだろ。俺。

落ち着け。

いつだってやることができるんだ。

まだその時でないだけ。

陽菜が居ないうちは自分で冷静にならないといけない。

だけどそろそろそれにも慣れてきた。

窓の外を眺めているとホームルームのチャイムが鳴った。

僕は再び教室に戻る。

みんなが僕の方を見る。

怖がっている人もいればヘラヘラしている人もいる。

でも僕は冷静を保ち椅子に座った。

「さて、みんなに行っておきたいことがある。」

「急だがうちのクラスに転校生が来た。」

そう先生が言う。

きっと陽菜のことだろう。

「入ってこい」

その言葉と共に陽菜は姿を現した。

一度みんなに深くお辞儀をしてから黒板に名前を書き出す。

伊東陽菜。

そう縦書きで書かれた文字にみんなが注目していた。

「伊東陽菜です。こうすけ君の彼女であり、晴人君の敵です。以後よろしくお願いします。」

そう言いもう一度深くお辞儀をする。

ちょっとまて、陽菜のやつなんて言った?

そう思い今さっきの記憶を蘇らせる。

『晴人君の敵です。』

いらないことを言ったな。

そう思う僕だった。

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