第21話 今回のエピローグ①
俺はローズマリー=エイミを肩に担ぎ上げ、廃城から離れて『
『
『
『
だから安全と思われる位置まで逃げておくことにしている。
ジェーンにそう指導された。
今回俺が代償に払った感覚は、嗅覚だった。
他の感覚に比べると、まだ行動への影響は少ない方ではあるが、やはり臭いも周辺探知のための重要なファクターであるため、森の中をあまり動き回る訳にはいかない。
廃城から数百m程離れた場所に元は密林グマの巣穴だった
ローズマリー=エイミを抱え、嗅覚がない状態で森を抜けるまで移動するというのは無謀に過ぎる。
それと間もなく確実に暴風雨が降り出すことがわかっていたこともあり、そこに身を潜めることにした。
暴風雨は『
暴風雨は俺達が
ローズマリー=エイミは3日程ずっと眠り続けた。
その間はずっと
元々麓の街道から廃城までは3昼夜かかると聞かされていたので、出発前に食料と水を多めに用意してきたおかげで食料探しをする必要も無かった。
俺は
とは言っても
4日目の夕方、ローズマリー=エイミは目を覚ました。
ガバっと跳ね起きたローズマリー=エイミは「‼
俺はあの後のことを本当に
ローズマリー=エイミが俺にかけた魅了は
それを聞き、ローズマリー=エイミは小躍りして喜んだ。
「本当に『爆縮』したのねぇ? 嘘だったら許さないわよぉ!」
「本当にやったよ。そこから廃城のあったところを見てみるといい」
そう俺が言うとローズマリー=エイミは
俺も後に続いて廃城跡を仰ぎ見る。
激しい雨に打たれ続ける廃城は完全に内部に向かって崩れ、城だった外見を留めてはいない。
辛うじて残った石造りの基礎部分が、そこに城があったことを見る者に教えてくれている。
『
「本当にやってくれたのねぇ! 早速回収に行かなくちゃ」
「焦るなよ、3日3晩眠りっ放しだったんだぞ」
「焦るわよぉ! あの煙は恐らくシャンリーの教会からも見えているわぁ。多分もうすぐ結界を一部解いてシャンリー常駐の聖堂騎士団が廃城を確認に来る!」
「焦るなって。あの
俺がそう言うと同時にローズマリー=エイミの腹がくう~っと鳴った。
「ちょっと! これは生理現象なんだからぁ!」
顔を赤くして恥ずかしがるローズマリー=エイミ。
「ハイハイ体は正直だなお嬢さん、グヘヘ」
と俺が茶化して言った瞬間、ローズマリー=エイミの手が見えない速さで俺の首に伸び、俺の頸動脈を首の中から直接摘まんだ。
その表情は実に冷ややかで、秘めた殺意すら感じられる。
脳への血流が止まりスーッと意識が薄れる。
「振り払おうとしても無駄よぉ、動けば頸動脈が千切れるわぁ。あんまり私を
そう言うと俺が意識を失う寸前で手を戻した。
もしかしたら下卑た物言いが、過去に襲った男達をフラッシュバックさせたのか……
脳への血流が戻ったが、立ち眩みのように立っていられず俺はその場に膝をつく。
「どうせあの
そう言うローズマリー=エイミの腹がまたくう~っと鳴る。
「……でも、確かにあなたの言う通りだわぁ。この時間になっても聖堂騎士団の姿が現れてないってことは、大規模に調査隊を編成しているってことねぇ。
日が落ちてしばらくしたら行くわぁ。アナタは関係ないけどぉ、何か食べときなさぁい、カワイ=ケイスケさぁん」
そう言ってローズマリー=エイミはまた
日が落ちてからしばらくして、ローズマリー=エイミは一人でまだ激しく降る雨の中を廃城跡に向かった。
最もローズマリー=エイミの『特能』は雨に濡れることもない。
そして『特能』で地面に潜って魔輝石を探すのだから、俺が一緒に行っても足手まといにしかならない。
数時間後の深夜にローズマリー=エイミは戻って来た。
「お目当てのものは見つかったのかい」
「ええ、あったわぁ。
小躍りして喜ぶローズマリー=エイミ。
俺が
そしてそれを教えてやる義理はない。
依頼は「
最も
多分1都市で使用している魔道具全てを100年程度フル稼働させるくらいの魔力は秘めているだろう。
例えローズマリー=エイミ自身の
ローズマリー=エイミの『特能』を使って、俺達はその夜のうちにシャンリーまで戻った。
明け方近くに『黄金の夜明け亭シャンリー店』に到着した俺達は夜明けとともにランキン商会へ報告に行く。
ローズマリー=エイミと俺はランキン商会会頭エリック=ランキン氏に
ローズマリー=エイミは
魔輝石を回収した時に見つけたのだろう。
確かに戦闘で鱗が剝がれ落ちた場所は『
また、そんなものまで見つけて来るローズマリー=エイミのしたたかさにも感心した。
エリック=ランキン氏は
少しづつ進めていた移転のための準備をその日から加速させるとのことだったので、俺も道中の護衛について、閉鎖する冒険者ギルド・シャンリー支部の副支部長アレックス=ブレナンに信頼できる冒険者たちの取り纏めを依頼しており、護衛の冒険者は全員ファーテス支部に所属を移してから報酬を支払うことにしていることを話した。
エリック=ランキン氏は護衛の冒険者たちの道中の食事の支給とシャンリー支部閉鎖後になるが前金の支払いを約束してくれた。
出発は10日後ということになったが、それまでランキン商会の周辺の警戒などにアレックス=ブレナンから信頼できる冒険者を回してもらった方がいいかランキン氏にたずねたところ、多人数は必要なさそうだが念のため数人荷の運搬などの名目で来てもらえる方が助かる、との返答だった。
「その程度でよろしいのですか? ここシャンリーの治安を考えると、荷造りなどの動きがあれば冒険者崩れが徒党を組んで襲撃してきそうな気もしますが」
俺がそう尋ねると、ランキン氏が答える。
「実は3日程前から他領所属の聖堂騎士団がすぐそこのシャンリー教会に集結しているのだ。いよいよ教会も領主の横暴を叱責する気になってくれたのかも知れんと噂になっている。
聖堂騎士が集結しているおかげでこの周辺の治安は保たれているのだよ」
ランキン氏は教団が
「エリック、聖堂騎士団は領主に諫言するために集まっているのではないわぁ。教会は教会の思惑で動いているのよぉ。だから
それと、私たちが
あなたに不幸が降りかかりかねないわぁ」
ローズマリー=エイミは妖しく笑みを浮かべランキン氏に釘を差す。
エリック=ランキン氏は苦笑いで承諾するしかなかった。
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