5話

 すずめちゃんの下で天ノ雀というチームを作っていることは、もうウナ先輩の耳には入っているだろう。ウナ先輩は奇襲、夜襲も問わない。

 いつもの公園で集会を開いているときだったので、どうしよう、ヤバいよ、殺される、そんな言葉で広場はざわめいていった。オタケが活を入れて回る。そこに、沖那君が飛び込んできた。

「沖那オマエ、ウナ先輩のとこに頭下げに行ったんじゃねえのかよ。何しに来やがった」

 凄むオタケの腹にすずめちゃんが無言で肘鉄を入れた。

「沖那『君』らろうが。ウナへんぱいの男ら」

「あ、はい、すみませんすずめちゃん……」

「沖那君、ウナへんぱいに頭さげらんらよね?」

 すずめちゃんが優しく訊ねると、沖那君はシャツの袖と裾をまくりあげた。そこに残る生生しい青あざと、無傷のきれいな顔のギャップに、一同密かに唾を飲んだ。

「シメられたけど、元さやだよ。でもすずめちゃんも頭下げに来いって、仁義きれって、それを伝えに来たんだ」

「仁義だあ?」

 オタケが声を上げるのを、すずめちゃんがひと睨みで黙らせる。それから耳打ちをして、オタケにあるものを取りに行かせた。

 オタケが持ってきたのは、小さな菓子の空き箱と、大きなせんべいの空き缶だった。

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