4話
だがその日、飛び出して行ったオタケが連れてきたのは沖那君一人だった。
いつもはスポットライトでも浴びているかのように光っている美少年が、顔色悪く、体を縮こませて入店してくる。奥のテーブルでは、沖那君とすずめちゃんが顔を突き合わす形で何やら話し合い、オタケは存在を消すようにして端に座って控えている。
なにかがまた、街に起こる、ママは直感した。
沖那君はテーブルに手をついて、すずめちゃんに頭を下げていた。
「椅子に座ったまま下げる頭に意味なんかねーだろ!」
オタケの声が店に響いた。オタケはとにかく声が大きい。
すずめちゃんは無言で裏拳をかまして、オタケは鼻を抑えてうずくまった。
ソファから立ち上がり、床に膝をつこうとする沖那君を、すずめちゃんは子どもにするように脇を支えて立ち上がらせた。それから一言、二言、籠もった声で伝えると、オタケを連れて店を出ていった。三人分のジュース代が支払われていたので、ママは座席に残され頭を抱える沖那君に、オレンジジュースを運んでいった。
いよいよウナ先輩が出てきた。
その報は街の不良たちの間に一瞬にして広まった。ウナ先輩は最恐にして最凶であるからだ。
舌を切り取られたすずめちゃんの、ごぶごぶと血を吐いてのたうつ姿をチームのメンバーは思い出していた。のたうつすずめちゃんの腹に、蹴りを入れ続けるウナ先輩の憤怒の形相をみな見ていた。天ノ雀のメンバーは、元は舞米である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます