第20話 悪役令嬢の選択

 次の日、パキラがわが家に遊びに来た。

 私は、殿下のよりを戻したい気持ちとサフラン様の婚約者になってほしいの気持ちを聴き、どうしたらよいかわからず、悩み、ほとんど眠れなかった。


 私とパキラは、わが家の庭園にあるテラスにある椅子に座って、お茶を飲んでいる。

「昨日のサフラン様とのデートはどうだった? 」

 パキラは、目を輝かせて聞いてくる。

「えぇ、楽しかったわよ。まぁ、乱入者がいたけど・・・・」

 私は、苦笑し答え、昨日あったことをパキラに説明した。


「まぁ、殿下って本当、エミリアが大好きね」

「えっ」

「エミリア気付いてないの? 殿下、教室でいつもエミリアのこと見てるわよ。気にしてるわよ、きっと元に戻りたいんだろうなと思ってたわ」


「ねぇ、エミリアは婚約破棄をスキップして喜んでたじゃない? なんで王太子妃になりたくないの? 」

「えっ、王太子妃教育が辛いからよ」

「どんなところが辛いの? 」

「常に立ち振る舞いを気にして淑女の鏡でいなくてはいけないわ」

「今、立ち振る舞いを気にしてる? 」

「いいえ」

「エミリア、今、気にしてなくても、ちゃんと婚約破棄前と変わらず淑女の鏡の立ち振る舞いをしているわよ」

「えっ」

婚約破棄前は、日々、淑女の鏡になるよう立ち振る舞いを気にしてたわ。今は、全く気にしてないのに、淑女の鏡の立ち振る舞いを私は、今しているの・・・・。

「多分、もう身についてしまったのではないかしら。だから、気にしなくても、いつも淑女の鏡の立ち振る舞いができているのよ。他には?」

 なんてこと! もう気にしなくてよかったの・・・・。


「そうね。いい子でいなければいけないわ。誰にでも優しく、落ち着き、冷静で、謙虚でなけらばならないわ」

「それも問題ないわね。エミリアは、優しいし、謙虚だわ。それに冷静だわ。動揺してそうな時もあるけど、見た目は落ち着いてるように見えてるもの。他には・・・・」

 ごめんなさい、パキラ。これは言えないけど、悪役令嬢をやっているわ・・・・。


「あぁ、ベロニカ様が言ってたわね。毎日100回の筋トレが辛いの? 」

「いや、それは慣れたわ」

 パキラ、それ20回よ。

「あぁ、3か国語マスターが辛い? 」

「いや、もう3か国語マスターしたわ」

 必死にマスターしたわよ。


「婚約破棄前の王太子妃教育で他に辛いことあったの? 」

「いいえ、もう、先生の講義を聞くだけだったわ」

 あれ? 私、何が辛いの? もしかして、辛かったの間違い?

「「?」」

 私とパキラは首を傾ける。



「あっ、殿下に問題があるのね? 殿下ってどういう人なの? 」

「そうね、まず傲慢ね」

「まぁ、傲慢なんて、自分に自信のある方なのね」

「わがまま」

「まぁ、わがままなんて、正直で、自分の気持ちを大切にされる方なのね」

「偉そう」

「まぁ、偉そうなんて、堂々として頼りになりそうな方ね」


「プライドが高い」

「まぁ、プライドが高いなんて、う~ん、やっぱり自分に自信がある方なのね」

「頑固」

「まだあるのね・・・・。まぁ頑固なんて、自分の意志をきちんと持ってる方なのね」

「負けず嫌い」

「まだあるのね・・・・。う~ん、負けず嫌いね。負けず嫌いなんて、一生懸命で、向上心のある方なのね」

「そんなところかしら」


「つまり、殿下は、堂々としていて、正直で、自分に自信があって、自分の意志をきちんと持っていて、向上心のある頼りになるお方だったのね。

 この国を引っ張ってく次期国王らしいお方ではないかしら。あと優しさと謙虚さもあるといいんだけど・・・・。でも足りない部分は他の方、王太子妃がカバーすればいいのよね」

「えっ」


「私ね。友達がいなくてみじめで、お悩み相談に行ったことがあるのよ。そこで、アクターS♡ 様が、私のネガティブな言葉をポジティブな言葉に見方を変えてくれてね。自信を持たせてくれたの。それからね。私、ネガティブに考えてしまいそうになる時は、ポジティブに考えるようにしたの。そしたら、なんか日々の生活が以前に比べて楽しくなってきたのよ。だから、アクターS♡ 様ほど上手じゃないけど、エミリアの言ったネガティブな言葉を見方を変えてポジティブな言葉に言い換えてみたの。どう? 」


「うふふ、言い換え上手だわ。パキラの言うとおりね」

 私ったら自分のお悩み相談の時、やってたことを自分には全くやってなかったわね。


 そっか・・・・。殿下、いいところ、いっぱいあるじゃない。

 自然と頬が緩む。


「そっか・・・・。殿下は、堂々としていて、正直で、自分に自信があって、自分の意志をきちんと持っていて、向上心のある頼りになる人だったのね。うふふ、確かに、昨日、男を倒した時は、頼りになるとは思ったわ。でも、変装してデートに付いてきてたのは、堂々とはしてなかったわよね・・・・」

 私は、考え込む。


「でも、バレたら、堂々と「奇遇だな」と言って、逃げなかったんでしょう? 」

「そうね。そういうことにしておきましょう。普段は、堂々としているものね、うふふ・・・・」

 2人で笑い合った。



「殿下は、他にいいところは、ないの? 」

「・・・・・・・・そうね。あっ、婚約者してた時、ちゃんと夜会では、エスコートしてくれてたわ」

「えっ、それ、婚約者として当たり前のことじゃない? 」

 パキラ、甘いわね。世の中には、当たり前のことができない人がいるのよ。浮気する人がいるのよ。


「あと、婚約者してた時、私が風邪をひくと、文句を言いながらお見舞いに来てくれてたわ」

「えっ、文句を言いながらは気になるけど、婚約者として当たり前じゃない。あっ、つまり、殿下は、当たり前のことはできるっていうことね。まぁ、良く言えば、誠実だってことね」

「そういうことね」

 また、2人で笑いあった。

 そういえば、お悩み相談で、反省したり、謝ったりしてきたわね。でも、これは内緒にしておこう。



「じゃ、次は、サフラン様ね。サフラン様ってどんな方? }

「えぇ、優しくて、笑顔が素敵で、笑い上戸で、頼りになるお方かしら・・・・」

 正直、あまりサフラン様のことわからないのよね。夜会のエスコートとデートの様子から考える。

「サフラン様は、いいことしか出てこないのね」

「だって、パキラ。サフラン様のこと私、まだよくわからないもの。殿下とは10年も婚約者してたから、だいたいの性格はわかってるわ」

「そっか~。そうよね」


「「・・・・・・・・」」


「エミリア、答えは出たんじゃない? 」

「うふふ、 そうね」



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