第10話 悪役令嬢 失格
さぁ、今日は、どんなお悩みが聴けるのか楽しみだわ。
カレンダーの今日の日付の下には、A.Oと書かれていた。今日は、A.O様が来られるのね。
ドアが開き、ドアにつけてあるベルがチリンチリンと鳴る。A.O様が部屋に入ってくる。A.O様は、仮面をせず、素顔だ。
「どうぞ、お座りください」
私は、座るよう促す。私の机の先にある革張りの1人掛けのソファにA.O様が座る。
「A.O様、私は、アクターS♡ です。今日は、よろしくお願いします。今日は、どういったお悩みで来られたのですか? 」
「えぇ、よろしくお願いします。今日は、お礼を言いに来たのです」
「えっ」
私は、驚く。
「私、婚約者が嫌いで婚約破棄したいと相談にきたアザレア・オニバスです」
と笑顔で言う。素顔で本名まで教えてくれた。目が大きく、とても可愛らしい女性だった。
「アザレア様ですか。ところで、お礼とは? 」
私は、首を傾ける。私は、悪役令嬢よ。意地悪したのよ。それなのにお礼ですか?
「はい、アクターS♡ 様にお悩みを聴いてもらい、嫌いだった婚約者が今では、大好きになりました。結婚するのが楽しみなんです」
アザレア様が、満面の笑みで言う。
そして、話を続ける。
「お悩み相談の後、彼と市井に出かけたんです。その時、お爺さんから財布を奪った男が私の方に向かって走って来たんです。そしたら、彼が、私をかばうように前に出てくれたんです。そしたら、男は、彼の体にぶつかり、跳ね返り、倒れ、彼が、男を捕まえたんです。とても男らしく、頼もしかったです」
「それは、すごいですね」
アザレア様は、とても嬉しそうだ。
「えぇ、そうなんです。それに、初めて2人で、彼の友人のお茶会に参加したんです。彼の周りには、常に沢山の方が集まって来てました。多くはしゃべらず、よく話を聞いて、友人に慕われていることがわかりました。・・・・それに、私と目を合わさなかったのは、私のことが可愛くて、好きで、照れてたそうです。顔を真っ赤にして教えてくれました」
アザレア様は、両手を握り、薄っすら顔を赤らめて言った。幸せそうだ。
「まぁ、それは、良かったですわ」
「はい、アクターS♡ 様が、私が彼のネガティブなところばかり見ていたところを、ポジティブに見るよう気付かせてくれたおかげです。本当にありがとうございました」
「いいえ、お幸せになってください」
「はい」
おかしいわね。アザレア様のお悩み解決しなかったのに感謝されてしまったわ。
私、悪役令嬢、失格ね。
ーーー
次の日の放課後、
さぁ、今日は、どんなお悩みが聴けるのか楽しみね。
カレンダーの今日の日付の下を見る。M.Rと書かれていた。今日は、M.R様が来られるのね。
ドアが開き、ドアにつけてあるベルがチリンチリンと鳴る。M.R様が部屋に入ってくる。M.R様は、昨日のアザレア様と同様に仮面をせず、素顔だ。
「どうぞ、お座りください」
私は、座るよう促す。私の机の先にある革張りの1人掛けのソファにM.R様が座る。
「M.R様、私は、アクターS♡ です。今日は、よろしくお願いします。今日は、どういったお悩みで来られたのですか? 」
「はい、よろしくお願いします。今日は、お礼を言いに来ました」
「えっ」
私は、驚く。またお礼?
「私は、好きな人ができたと相談に来たモナルダ・ルクリアです」
と笑顔で言う。やはり、彼女もアザレア様と同様、素顔で本名まで教えてくれた。黒髪ストレートで全体的に綺麗な印象の女性だ。
「モナルダ様、ところで、お礼とは? 」
私は、首を傾ける。私は、悪役令嬢よ。意地悪したのよ。それなのにまたお礼ですか?
「はい、アクターS♡ 様にお悩みを聴いてもらい、好きだった彼を魅力的に思わなくなりました。そして、今、新しい恋を見つけたのです! 彼には、婚約者がいないので、安心して好きになれます。ありがとうございました」
モナルダ様が、満面の笑みで言う。
そして、話を続ける。
「実は、私が相談した好きだった彼は、どうしようもない浮気性の男だったんですよ。何人もの女性と付き合っていて、婚約者に婚約破棄されたんですよ。本当、私があのまま好きで、もし気持ちを告げて、付き合っていたら私も浮気相手のひとりになってたんです。良かったです、魅力を感じなくなっていて・・・・。
それも、アクターS♡ 様のアドバスのおかげです。ありがとうございました」
モナルダ様は、笑顔で言う。
「まぁ、それは、良かったです。今度の新しい恋は、実るといいですね」
「はい」
また、おかしいわね。モナルダ様もお悩み解決しなかったのに感謝されてしまったわ。
はぁ、私、悪役令嬢、失格ね。
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