第9話 お悩み内容:婚約者になりたいです B.K
さぁ、今日は、どんなお悩みが聴けるのか楽しみだわ。
私は、お悩み相談室にいる。
カレンダーの今日の日付の下には、B.Kと書かれていた。今日は、B.K様が来られるのね。
そして、カレンダーには、予約が、沢山、埋まっていた。嬉しいわ。予約が増えているってことは、私がお悩み相談に来た人に意地悪していることが、伝わってないのね。良かったわ。
ドアが開き、ドアにつけてあるベルがチリンチリンと鳴る。B.K様が部屋に入ってくる。B.K様は、目の周りだけ隠す仮面をしている。
「どうぞ、お座りください」
私は、座るよう促す。私の机の先にある革張りの1人掛けのソファにB.K様が座る。
「B.K様、私は、アクターS♡ です。今日は、よろしくお願いします。今日は、どういったお悩みで来られたのですか? 」
「はい、私は、殿下の婚約者になりたいです! 」
あ~、この声、ブラウンの髪、ベロニカね。イニシャルもB.Kだものね。ベロニカ・クリトリアよね。殿下に続いて、今度はベロニカなの・・・・。身近な方が続くわね。
「B.K様のお悩みは、婚約者になりたいことなのですか? 」
「はい」
うふふ、殿下の婚約者になりたいのね。
本当は、殿下の婚約者になってほしいわ。そうすれば、私は、もう殿下の婚約者に返り咲くこともないものね。
でも、今、私は、あなたの人生の悪役令嬢よ。
このポリシーは、変えられないわ。
だから、婚約者になんてさせないわ。
私は、『あなたのお悩み解決しません! 』と心で言う。
「なぜ、殿下の婚約者になりたいのですか? 」
「えっと、王太子妃になりたいからです」
「王太子妃になりたいんですか? 」
ベロニカってもの好きね。何がいいのかしら、王太子妃なんて。そうか、殿下のことが、好きだからなのね。
「はい」
「なんでですか? 」
王太子妃なんて、大変よ。
「それは、王太子妃になれば、私、注目されるでしょう。それに、皆、私の言う事聞いてくれるでしょう? わがままが言えるわ。それに、好きなものが買えるでしょう? 贅沢できるわ」
あー、嬉しそうな表情してるわ。目の周りだけの仮面だから、よくわかるわ。ベロニカ、王太子妃は、注目されるだけに大変なのよ。贅沢できるわけないでしょう! 民の税金を使ってるのよ! ベロニカの浅はかな考えに腹が立ってきた。落ち着いて、私。あれ? 殿下のことが好きってこと言ってなかったわよね。まぁ、どうでもいいわ。
「ベロ・・・・、いや、B.K様。王太子妃のことをよくご存じないようなので、お教えしてさしあげますわね。私、王太子妃教育の教師とお知り合いなのよ」
危ない、ベロニカと言おうとしてしまったわ。気を付けないといけないわね。つい、先日まで私、王太子妃教育受けてたから、教えてあげるわよ、ベロニカ。
「えっ、王太子妃のこと知っているのね、教えてください」
「まず、王太子妃は、B.K様がおっしゃるように皆に注目されます。そのため、淑女の鏡になるような立ち振る舞いをしなければなりません。そして、他国などとの親睦の為の社交場に出席しますので、他国の知識、語学を学ばなければなりません。ですから、毎日、王太子妃教育で、厳しく学ばされます。時には、鞭で打たれることもあります」
本当は、鞭で打たれることは、ないけれど、少し脅しておきましょう。でも、厳しいのは本当よ。私、もうやりたくないもの。私は、ベロニカを見る。先ほどに比べて、顔色が悪い。青白いわ。いい感じね。
「そうなのですか」
震えた声でベロニカは、言う。ベロニカは、素直なのだ。
「はい。例えば、語学については、最低3か国語は、話せないといけません。話せるようになるまで、特訓をします。他国の知識も暗唱できるよう特訓です。特訓は、教養だけではありません。綺麗な立ち振る舞いができるようになるために、背中に定規を入れられたり、頭に本を載せられて、本が落ちないように歩く特訓もします。毎日、スクワットと腹筋といった筋トレは、必須です」
これは、全て本当よ。ベロニカに出来るかしら。
「そうなのですか」
震えた声でベロニカは、また言う。ますます、いい感じだわ。
「はい、そうです。そして、いずれ王妃になるために、つまり国母になるために、誰にでも優しく、落ち着き、冷静で、そして謙虚でなければなりません。なれそうですか? 」
「無理です! 」
えっ、早! 悩みもしないの? さすが、ベロニカだわ。
「では、どうされますか? 」
「王太子妃になるのやめます! 」
「それは、殿下の婚約者には、ならないということですか? 」
「はい、王太子妃に憧れてましたけど、もう、婚約者になりたくないです。私には、王太子妃は無理です。それが、わかって良かったです! 」
やったわ! 婚約者になることを阻止したわ。
あれ? 殿下のでの字も出てこなかったわね。ベロニカは、殿下が好きなわけではなく、王太子妃になりたくて、殿下に付きまとってたのかしら。まぁ、どうでもいいわ。
「それは、良かったわ」
私は、笑顔で言う。
うふふ、B.K様 (ベロニカ) は、婚約者にはなりたくないと言ったわよね。
B.K様 (ベロニカ) のお悩み、解決できなかったわ。
私、B.K様( ベロニカ) の
うふふ、これで、私は、あなたの人生の悪役令嬢になれたはずだわ。
おほほほ・・・・・・。
心の中で、悪役令嬢らしく高らかに笑う。
でも、完璧な悪役令嬢にはなりきれず、実は、心の奥底で、ごめんなさいね。と謝っている。
ーーー
次の日の朝、
学院に着き、馬車から降りると、ベロニカが私のもとへ、走って来た。
「エミリア」
と私を呼び、目をうるうるさせ、哀れみの目で私を見る。
「大変だったわね。ちょっと見せて」
とベロニカは、言うと、私の手を取り、両手のひらや甲を見る。制服の袖をまくり、腕を見る。私は、ベロニカの指示通り、ベロニカに頭を下げて頭上を見せたり、背中を見せたり、足を見せたりした。
「良かったわ。傷もなく、無事で・・・・。じゃぁ」
と言い、安堵した表情を浮かべると、手を振って校舎へ走って行った。
なんなの? ベロニカ。あっ、もしかして、昨日の王太子妃教育の話を聞いて心配して、来てくれたのかしら。鞭で打たれてないかどうか確認しに来たのね。
うふふ、きっとそうね。ベロニカは、意外に優しいのだ。
それから、ベロニカは、殿下を避けるようになり、私たちのクラスに来ることは、なくなった。
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