古事記を語ろう
昔、お前に
「農学部講師なんて金になるのか?」
なんて言われたこともあったな。
当時は、やり手弁護士としてバリバリ稼いでるお前に言われ、返す言葉もなかったけどな。
だか、やっぱり特許。
特許がオレの人生を変えてくれたんだよ。
名だたる大企業がオレの特許を引っ張りだこで使ってくれてさ。
おかげで金がわんさか入ってくるようになったのさ。
長い間、万年講師なんて馬鹿にされてたけど、これで大学にも世間にも一矢報いる事ができたって訳さ。
ホント、特許さまさまだよ。
研究はやりたい時にやればいい。
眠い時には好きなだけ寝ていられる。
最近じゃ研究は生徒たちに任せて、
オレはノンビリし放題。
まさに天国みたいな生活さ。
羨ましいだろ?
いやいや自慢になっちまうな。
スマンスマン。
そういえばお前の方はどうなんだよ。
何がって?
女遊びに決まってんだろ?
どうせ学生の時みたいに取っ替え引っ替え遊び回ってるんじゃないのか?
え?もうそんな歳じゃないって。
どうだかな。
分かった、分かった。
そうだな。
歳を取ると人間変わるもんだよな。
お前も変わった。
そういうことにしといてやるよ。
そういえばオレも歳をとったせいか関心あるものが変わってな。
たまたま読んだ本がおもしろくてな。
ド理系のオレが文化人類学なんてものに興味を持ち始めてな。
神話やら昔話や民俗とかそういったものだ。
学生時代から理系一筋だった俺がそんなことに興味を持つなんて、当時じゃ考えられないけどな。
でも、こうして歳をとってから読んだりすると意外に面白いもんなんだよ。
神話ってやつは。
お前も知っているだろ?
古事記。
日本のはじまりといわれる神話だよ。
え?名前しか知らないって?
全く、お前というヤツは…
昔から法律とか金になること以外は、まるで興味が無かったっけ。
まぁスポーツ万能のアウトドア派。
おまけに女好きのお前にとっちゃ、
神話なんてものに興味を持てと言うのが無理な話かもな。
ハハハ。
でも少しくらいは聞いたことはあるだろ?
イザナギ、イザナミとか大黒様とかだよ。
そうそう、因幡の白兎。
あれが古事記だよ。
だったらヤマタノオロチも分かるだろ?
そう。
八つの頭を持つ巨大な蛇のことさ。
そのヤマタノオロチを退治したのが、
英雄スサノオだ。
まぁ文化人類学的に、巨大な蛇って言うのは、実は川の氾濫を指しているらしいんだ。
んでスサノオは、川の氾濫に苦しむ人々に、土木工事を施した技術者だったなんて説もあるみたいだけどな。
まぁいいや。本題。
スサノオについて。
彼にはこんなエピソードがあるんだ。
元々、古事記の世界では、我々が住む世界の他に、神々が住む「高天原」という天界があったんだ。
その高天原にスサノオも神の一人として住んでいた。
だが、スサノオは性格が子どもっぽく粗暴。
しかも死んだ母親に会いたいというワガママから、高天原で大暴れをしてしまうんだ。
これに怒った神々と、
スサノオの姉、アマテラスオオミカミは、
スサノオを高天原から追放してしまうんだな。
まぁヤマタノオロチを倒す猛々しい男だから、
力を持て余していたところが正直なところだろうな。
その後、高天原を追放され、行く当てもなくなったスサノオは失意の中、放浪する。
そんな時。
空腹に苦しむスサノオを助けてあげたのが、
オオツゲヒメだった。
オオツゲヒメはスサノオを哀れに思い、
スサノオに食べ物を分け与えたんだ。
ありがたく食べ物を頂戴するスサノオ。
だが、オオツゲヒメの食事の準備が、
あまりに早すぎるため、
スサノオは不審に思ってしまうんだ。
そこで、スサノオは、
オオツゲヒメが料理をしているところをこっそり覗いてみた。
するとどうだろう!
オオツゲヒメは、自身の鼻の穴や口、はては尻の穴から食材を取り出し、
それらを調理してスサノオに食べさせていたんだ。
当然、スサノオは激怒した。
「そんな汚いモノを俺に食わせていたのか」と。
怒ったスサノオは勢い余って、
オオツゲヒメを殺してしまったのさ。
なんてかわいそうなオオツゲヒメ。
善意でスサノオを助けてあげたのにな。
確かに排泄物をスサノオに食べさせていたのは
悪かったかもしれない。
しかし何もそのくらいで殺すことはないのにと思うよな。
仮にオオツゲヒメがスサノオの妻で、
スサノオの友人と不倫してたなら、
殺されても当然とは思うけどさ。
えっ?
不倫くらいで殺すのはやりすぎだって?
まぁ、そうか。
遊び人のお前にとっちゃ不倫なんて大したことないことかもな。
でもな。
された方は、
殺したいくらい根に持つかもしれんからな。
国によっちゃ不倫は死刑って場合もあるくらいだから。
ん?どうした?顔色が悪いぞ。
水でも持ってこようか?
え?そんなことないって。
そうか。気のせいか。
ならよかった。
じゃ話を戻そうか。
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