第161話 運命の日、もう一つの理由は。

今回の卒業旅行を天野さんは『婚約旅行です』と隣席するご夫人に答えた。

理解出来ない僕は、

「それってどういう事なの?」

と深い意味も無く訊いた。


「だから、私が裕人君のお嫁さんに成るって決めた日と、それから」


天野さんが言う『運命の日』とは、年中組の頃に天野さんを虐める年長組の三人と僕が鼻血を流しながら喧嘩した日の、それからとは・・・

天野サヤカさんの真意は?」


「今日初めて言うけど、裕人君はドン引きしないでよ」

理由を聞いてドン引きする意味が分からんし,その先を聞きくのは怖いけど興味本位で開けてはいけないパンドラの箱なのか、もしも後悔先に立たず僕が天野サヤカさんの逆鱗に触れない事を願うばかり・・・


「うん、聞かせてもらう」

覚悟を決めてそう答える僕は天野さんの瞳を見つめた。


「今から約十年前、裕人君に助けて貰った運命の日から私は毎夜、一日も欠かさずに裕人君と結婚する夢を見続けているの、純白のウエディングドレスを着て家族や友達から祝福されて、神父様の前で指輪の交換と誓いのキス、皆に祝福されて新婚旅行へ出発、そこで目覚めてから眠れなくなって、今も三時間から四時間睡眠のショートスリーパーが治らなくて、小学五年で性教育を学んでから私の夢は挙式から初夜まで続くけど、未経験バージンだからそこで目覚めて朝まで眠れない。これが真実なの」


天野サヤカさんは十年間僕と結婚する同じ夢を見続けると言う、一年三百六十五日で十年なら三千六百五十日、そこに閏歳うるうとしを加算して三千六百五十三日も同じ夢を見るのは心の病だと思う。



「それ、僕の所為かな?」

「半分は裕人君の所為と言うより私の自己暗示でメンタルが崩壊していると思う、その影響とストレスからCMモデルの休業とか、十年間の呪縛から私を解放させて」


他人から見たら『美少女と野獣』みたいな天野さんと僕、自らの思い込みで呪いを掛けられていたのは美少女の天野サヤカさんだった。


天野さんの積極的な迫り方に僕は、これがヤンデレ女子なのかと疑っていた。

「天野さんの為に僕が出来る事なら何でも言ってほしい」


幼馴染として好意と同情の混じった僕から慰めの言葉に、


「本当に何でもお願いして善いの、じゃあ私の妄想と同じ様に婚約旅行、いいえ新婚旅行をお願いします」

うん?妄想の新婚旅行って、ハテナ・ハテナ・ハテナ・・・


「裕人君、部屋の露天風呂で私と混浴しましょう」

過去に僕と混浴は恥かしいと言っていた天野さんから『混浴』の言葉が出るとは意外と思う。


「へっへっへ、ジャーン、私の全てを見て」

僕より先に脱衣した天野さんは全裸で腰に手を当ててポーズを作る、そして通常有るべき所に体毛が無い。


「どうしたの?」

「裕人君より体毛が濃いと恥かしいから、この日の為に処理してきたの」

思春期女子の体毛で隠されている部分があらわになる方が恥かしいと、元々体毛が薄い僕は思う。


それでも大理石で彫刻されたビーナスの様な白い肌に内臓が入っているのか不思議な位に細くくびれたウエスト、細い太股ふとももから続く小さい臀部ヒップとツルリと滑らかなビーナスの丘を見て、


「本当に恥かしくないの?」

「男性と違って女性は両足を閉じれば大事な所が隠れるでしょ、裕人君の大事な所はは剥き出し状態でしょう、混浴は当然新婚さんだから私が裕人君の背中を流します」


言われるままに椅子に座り、僕の背中をバス・スポンジで洗う天野サヤカさんは、

「裕人君の背中は広いね、後ろはお終い、次は前を洗うからこっちを向いて」


「前は自分で洗えるから大丈夫だよ」

「これは私の望みなの、裕人君は拒否出来ないのよ、さあ早くこちらを向いて」


『僕に出来る事なら何でも』と言ったから全て受け入れるしかないと諦めて、天野サヤカさんの方に身体を半回転させた。


大きなキャリーバッグから持参したお気に入りのボディソープをワンプッシュして、両手で泡立てる天野サヤカさんは、僕の首筋から胸と腹、そして通常は柔らかいアソコを念入りに擦り洗いすると、見る見る内にムクムクと硬化を始める。


その変化を手の感触と目視した天野サヤカさんは、

「ねえ、私の手と自分で処理するの、どっちが気持ち好い?」

両手いっぱいの泡で僕のアソコを滑るように洗い刺激するから、

「ひゃぁ、百倍、天野さんの手の方が気持ち好い、あ、もう我慢出来ないかも」

腰から背中に電気が走る様な絶頂にもう耐え切れない状態を言葉にした。


「まだ駄目、これで少し我慢して」

右手で僕の付け根をギュッと絞り、左手に持った湯桶で身体に付いた泡を流して、


「いつ出しても好いわよ」

その言葉に我慢していた僕は全ての欲望を解放した。


爆発した股間が熱いと感じる僕へ、

「裕人君のモノは私のモノ、遠慮なく頂きます、ゴクリ、すこし苦いけど美味しい」

病んでいる天野さんに僕の体液は美味しく感じるのか、それとも飲精のサキュバスなのか、

「本当に美味しいの?」

馬鹿な質問をしたと思う僕へ天野さんは顔を近づけてキスして、僕と舌を絡める。


「どう裕人君、私とシェアした自分の味は気に入らない?」

その味より天野サヤカさんの行為に驚き、僕のアレを美味しいとか不味いとか判断できなかった。


脱衣から混浴を始めた時点で天野サヤカさんに主導権を取られている僕へ、

「今度は裕人君が私の身体を洗ってね」


僕と同じ様にスポンジを使おうと握ったら、

「肌が傷付くからスポンジはダメ、裕人君の両手で泡立てて、そのまま素手で洗ってよ」

言われるままボディーソープを両手で泡立てて、天野さんの白い肌を撫でるように優しく洗う僕へ、

「裕人君、一回出したのにまたエッチな気持ちに成っちゃうの?」

白く細くて柔らかい天野さんの身体を上から下まで洗う僕は、


「そ、そんな気持ちは無いけど、僕の上半身と下半身は別の生物だからこれは生理現象と思って」

苦し紛れの言い訳に、

「そうね、裕人君の生理現象なら仕方無いわね、次は洗髪シャンプーをお願いします」


浴室用の椅子に座る天野さんの長い黒髪を傷つけない様に泡立てたシャンプーで僕が洗う、理髪店では下を向いて洗髪するが、女性が利用する美容室では化粧メイクの為に上を向いて洗髪する、だから僕の膝にもたれ掛かる全裸の天野サヤカさんが眼を閉じて無防備過ぎて僕のドキドキが止まらない。


「裕人君、私の背中に何か固いものが当たっているけど、これも生理現象なの?」

「面目ないです」


「もうエッチ、お風呂を出たら『十八歳までエッチしない』約束を破っても善いよ」

そこだけは何が有っても守りたい僕が、

「サヤカさんを傷付ける事はしたくないから」


「裕人君は妊娠が心配なの、ならママがくれた薄々ブランドの避妊具が有るでしょ?」

娘のサヤカさんを待つ間にママのエミリさんが『我慢出来ない時はこれを使って』と渡してくれた避妊具を知っているのか、

「どうしてこれを」


「ジャケットのポケットに入っているのを見たから、それを渡したのはママでしょう、それならママの公認じゃないの」

女子の母親から渡された避妊具をそのまま使うなんて、男の意地プライドが許さない。


「最後の一線だけ死守するから、他の事で我慢したい」

何の役にも起たない男の意地プライドを理由に、天野サヤカさんが希望する初夜の営みを先送りに出来て、一件落着と思う僕へ。


「ずるいよ、裕人君は自慰オナニーで欲望を処理できるけど、私はどうしたら好いの?」

怒りより甘えるような声で言うサヤカさんへ、

「自分で処理しないの?」


「それって女子の自慰?他の子は知らないけど私は独りエッチした事がない」

本人が言うからそうだと思うけど、これも個人差が有るのだろうか?・・・


「女子の扱いに慣れている裕人君が私に独りエッチを教えて、自分じゃ見えない所を触るって怖いでしょ」

僕が天野サヤカさんへ自慰を教えるって、それは普通に愛撫でしょう・・・


「本当に僕が?」

新婚旅行を想定した天野サヤカさんは持参した紐と透けるレースだけのセクシージェリーに着替えた姿を僕に見せて訊く。

「恥かしいから早くしてよ、ねぇ私のソコって変じゃない?」


「ちょっと膝を開いて、全然変じゃないよ、肌は白いし、中は綺麗なピンク色でもう湿っているね」


「解説しないでよ、あ~ん、そこは駄目なところ、弱い所を攻めるなんて裕人君の意地悪」

「・・・」

無言で愛撫する僕のアソコが硬化して、それを握る天野サヤカさんが、

「裕人君の操縦桿そうじょうかんを掴んだわ」

「あ~、それは駄目だって」

仮想ハネムーンの天野サヤカさんと僕は半裸で寝落ちした。


妄想新婚旅行がこの日だけで終わるとは思わなかった。

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