第144話 縁日のグルメは恥ずかしい。
僕が住む街から
一時間弱の乗車時間に若い女性客が僕達を何度も見る、僕達と言うより完全に天野さんに注目してるだろと感じる、幸いな事にスマホをかざす無礼者は居ないが、小さな声でヒソヒソ話をする若い女性の二人組を見た。
目的地に近づくと電車内の乗車客も増えて、周りの視線を感じなくなり気が休まる。
「裕人君を二人組のお姉さん達がメッチャ見てたね」
それは違うよ、
兎に角、駅の改札を出て神社への参道を歩く。目の前に玉金神社の鳥居が見えて、その両脇に祭り縁日の屋台が並ぶ、予定は往路でグルメを物色して復路で購入し、食べ歩きを計画した僕と天野さんの目に飛び込んできたのは、鯛焼きや林檎飴よりも目立っている大きく反り返ったチョコバナナ、しかもその名は『バナちん』。
皮を剥いたバナナの先端に切込みを入れてカメあたまを再現して、茶色とピンクのチョコをコーティングした男根風の姿に驚く
「買うのは帰りだよ」
僕の言葉に、
「うん」
と一つだけ頷く
それとは別に若いカップルの女性がバナちんを購入して食べ始めると、恋人らしき男性が、
「優しく舐めてから、絶対に歯を立てちゃ駄目だよ」
エロい言葉を恋人の女性に掛ける。
「バカぁ、そんなの分かっているわよエッチねぇ、和也の方がこのバナちんより大きいから」
エロカップルの男性は和也なんだ、女性の逆襲に彼氏の和也は赤面している。
思春期から好奇心旺盛な
「裕人君、先を急ぎましょ」
天野さんを赤面させたのはバナちんだけじゃなく、その後に見つけた『珍宝焼き』は中に餡子が入った男根型のドラヤキで、その他にも子宝飴は先端が茶色にその柱は白くておよそ12cmの男根型とピンクのお姫様風の飴に、
「裕人君、エッチな御土産ゾーンは過ぎた?」
いつもの小悪魔女子が大人しくなって可愛いと思う僕は、
「もう大丈夫だけど、着物の女性が大事そうに抱えている木製のお守りは
「え、それってどういう事?」
僕の説明に理解出来ない
僕と天野さんの会話が聞こえていた和装の女性二人は、およそ50cmは有る桧の男根を腕に抱えて、
「昨年、この神社で子供宝を願い、それから間もなく授かり無事に出産できたお礼参りです」
和装の女性二人はお姑さんか、お嫁さんの実母のどちらにしても幸せな事だと思う。
その先にどこの神社でも有る小さな立て看板に書かれた、
<
これを見て、受験生の僕と
本来は三月十五日に行われる豊年祭りだけ、直径60cm、長さ2mあまりの大きな男茎形の神輿を担がれるが、新型肺炎の自粛が解除された今年は、三年ぶりの祭り開催を祝して、正月三ヶ日は男根神輿が御披露目されるらしい。
男根神輿を担ぐ威勢の善い氏子衆の掛け声に老若男女が笑顔に成り、その意味を知らない小学生くらいの子供達も祭りの雰囲気を楽しんでいる。
始めて見る奇祭に来て良かったと思う僕へ、
「裕人君、お参りしたら早く帰ろうよ」
恥かしさの限界を超えている
「僕はお土産を買いたいから、
「何も要らない、裕人君だけ急いで買って」
それならそうで良いかと、僕は数店の屋台を回って、白いレジ袋に御土産を購入して来た参道を駅へ歩いた。
「裕人君、もう大丈夫?」
天野さんが僕に大丈夫と訊くのは、男根神輿と屋台のバナちんの事だと思うから、
「うん、神輿は行ったし、バナちんの店はもう無いと思う」
僕と二人きりの時は小悪魔的な悪戯で密着したがるのに、子孫繁栄の奇祭に照れている
玉金神社前駅に到着し、改札を抜けて乗車する電車を待つ僕達はホームの椅子に掛けた。
「
帰り道に急いで購入したお土産のレジ袋から、白い紙に包まれた焼きたての鯛焼きを
「え、いつの間に?」
「そんな事は良いから」
「でも一つしか無いよ、裕人君の分は?」
「うん、僕は甘い物は苦手だから
「電車の中で食べるのは恥かしいけど、ホームのベンチで私だけが食べるのも恥かしいから半分っこしよ」
「そうだね、分かった」
「裕人君は頭と尻尾のどっちが良い?」
「餡子が少ない尻尾が欲しい」
まだ熱い鯛焼きを両手で二つに割った天野さんは尻尾の半分を僕へ手渡した。
それを齧る僕は、
「熱っつ、鯛焼きの皮は冷めているけど中の餡子はまだ熱いよ」
正月元日の寒さに油断したのか、思うより熱い甘味に驚く僕を見て、
「裕人君は猫舌なの?見た目は大きくて怖いけど、やっぱり可愛い」
可愛いとか言うなよ、僕でも恥かしいだろ・・・
僕と天野さんは一匹の鯛焼きを半分にシェアして乗車する電車を待った。
後日談と言うか約一時間後、僕と帰宅した天野さんはレジ袋の中を見て、
「これって男根型の子宝飴でしょ?明日の二日は午前中に受験勉強して、午後からは性教育を勉強しましょう、私がこの飴で練習してから裕人君で実践するからね」
玉金神社では照れて何も出来なった
「じゃぁ僕もピンクのお姫様子宝飴で練習して、
エッチな言葉で反撃したら、
「裕人君のエッチ、変態、馬鹿ぁ、想像するだけで恥かしくて死んじゃう」
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