第142話 元日の初詣。
一月一日の朝を元旦と言うがいったい何時までが元旦なんだろう、
大晦日に除夜の鐘を聞いてから眠りについた僕に、天野さんは『一人は寒いから裕人君と』密着されて翌日を迎えた。
殆どの男性は射精後に眠くなる本能と同じ様な僕は、隣に甘い香りと柔らかい温もりを感じながら深い眠りに落ちた。
遅く寝て遅く起きた僕が目覚めて、階下に下りて居間の時計を見ると午前11時を過ぎている。
「あけましておめでとう、裕人君、良く寝ていたね」
今日から令和六年か、お早うには遅い時間でも、声を掛けてくれる
「裕人君、今朝も朝立ちしてたから昨日みたいに触りたかったけど、寝ている間に遊ぶのはルール違反でしょ、ほら、親しき仲にも礼儀ありって、ね」
ね、とか言われても、寝ている間に僕の股間を
「そうだね、
「嫌だぁ、配慮なんて他人行儀よ、裕人君が私の陥没ポチを吸ってくれて感謝しているし、あれで二人の間、心の距離が縮まったと思う」
体の中心の粘膜が密着した行為なら男女の距離は物理的に縮まったと言えるが、心の距離を縮めるのは難しい。
結果的に白液を飲まれた僕は搾乳成らぬ搾精で抜かれ、単純でスケベな男心を
「裕人君、お雑煮のお餅を幾つ食べる?」
小学生の頃に母が作った元日の朝食で食べたお雑煮が美味しくて、母が呆れたお代わりで切り餅を八個食べて、その後に人生初の胃もたれを経験して昼食を食べられなかってから消化が遅いお雑煮の餅は苦手になった。
「うん、僕は一つで善いよ」
「え、何で?」
不思議に思う
「お雑煮の餅がトラウマって、裕人君にとって笑えない話ね」
「うん、だからカップ麺を食べても善いでしょう?」
この申し出を受け入れてもらえば、僕は堂々とカップ麺を食べられると思った。
「裕人君、お餅が苦手だからカップ麺が食べたいでは論点がずれているわ、それにカップ麺のどこが好いの?」
休業中とは言えCMモデルの天野さんは、そのスリムな体型維持の為にレトルトやインスタント食品を制限しているなら、きっとカップ麺の美味しさを知らないのだろう。
「インスタント袋麺と違ってカップ麺には色んな具材がフリーズドライで入っているから、栄養的にもバランスが取れていると思う」
「裕人君のとって付けたような説明って本当なの?」
「
「そこまで言うなら、人生初のカップ麺に挑戦するわ」
やったぁ、自分でも驚く位に上手く説得できた、これで年末年始の目標が一つ叶うと叫びたい衝動に・・・
「じゃぁ、天野さんは何味にする?」
「うん、裕人君と一緒で好いよ」
三種類のカップ麺を一個づつ購入したが同じ物は二個買ってない、天野さんが言う『同じで好いよ』は、どう言う事だろう・・・
「天野さん、同じ味は二つ無いよ」
「だから、裕人君が食べたいカップ麺を私と半分っこでシェアするの、体に悪い添加物も裕人君と私で半分っこよ」
このやり取りを母が見ていたら、きっと腹を抱えて笑い転げるだろう。
それでも念願のカップ麺が食べられるならこれ以上は文句は言うまい。
台所の電気ケトルで湯を沸かし、カップ麺の透明ラップを破り蓋を三分の一だけ開く僕の作業を天野さんは凝視して、
「へぇ~,そんな感じでカップ麺が食べられるの?」
ある意味で世間知らずと言うか、もしも天野さんに冷凍レンチン生パスタを食べさせたら驚いて腰を抜かすかもしれないと、想像しながら僕は含み笑いを抑えられない。
「裕人君は何がそんなに面白いの?」
「いや、天野さんが人生初のカップ麺なら『カップ麺初体験』でしょ、感動の涙を流すかなって?」
「ふん、誰がカップ麺バージンよ、それじゃ裕人君は経験豊富なカップ麺ヤリチンでしょ」
あぁこれはヤブヘビだったな、口は災いの元、今後の失言に気を付けなけりゃ・・・
「下の方にスープの素が溜まっているからお湯はラインより多めに」
いつもの独り言で注意しながらお湯を注ぎ、キッチンタイマーで二分三十秒をセットした。
「お湯を入れて三分じゃないの?」
「そこは個人の好みだけど、三分経ってから蓋を取ってスープと麺を混ぜる時間を三十秒前倒しで」
「へえ~、裕人君はカップ麺にも拘りが有るんだ」
僕の作業を見ている天野さんへ、お椀に取り分けた醤油味のカップ麺を差し出した。
醤油味のスープを味見してフウフウと息をかけて麺を啜る
「これは小さいエビと黄色い玉子ね、この四角いのは何?」
良くぞ訊いてくれた、カップ麺の具材で外せないお肉だけど、初体験の
「それが有名なナゾ肉だよ」
「え、ナゾって、材料は大豆でしょ?」
「そこは企業秘密らしいよ」
「もしかして石油製品とか?」
石油からタンパク質のナゾ肉が出来るのか、いつかネット検察で調べてみよう・・・
「どう?人生初のカップ麺は美味しい?」
「こんなの美味しくないよ、お母さんに制限されているから嬉しい裕人君の舌が馬鹿じゃないの?」
どうせ僕は犬レベルの馬鹿舌だよ、それでもカップ麺の匂いは僕の食欲をそそる。
「
「うん、本物のカツオや昆布じゃない、人工甘味料とインチキ出汁の素がいっぱいの味」
それを言っちゃお終いよ、今度からは母と天野さんが居ない時に一人でカップ麺を賞味しよう、と心に誓う僕だった。
「さぁ裕人君、食事が終わったら初詣に行くわよ」
「え、初詣?」
「そうよ、今年は受験の合格お願いに行かなくちゃ」
「別に神頼みは必要ないでしょう」
「私は大丈夫でも、裕人君は心配でしょ、だから気持ちの問題よ」
そこまで強く言うなら、初詣に行こうじゃないか、出も何処の神社に?・・・
「近い所?」
「う~ん、折角なら人が多い白金神社より・・・」
白金神社に初詣で、昨年の初詣は看護師の
僕に取って
たった一年前が遠い昔のようで、その懐かしさから少しだけ目頭がウルッとした。
「男女の恋愛を願う
初めて聞く神事を疑う僕は、
「テレビニュースで見たことないけど作り話じゃなくて本当なの?」
「うん、猥褻物ナントカ罪でテレビに映せないらしいから、現場で見るしかないよ」
そう言えば節分の裸祭りも全裸の新男をテレビニュースではモザイクを入れるか、編集で見えなくすると商店街の長老から聞いた事が有った。
「でもご神体の合体って女性が見て恥かしくないの?」
「所がどっこい、男性より女性の参拝者が多いって、現地で見た私も驚いたわよ」
なんか分かる気がする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます