第140話 エッチな質問。
アポ無しで僕の家を
時刻は日暮れの十七時前、とりあえず居間に座ってもらい僕は夕食の支度を始めた。
水を入れた電気ケトルのスイッチを押し、小皿を二枚と祝い箸を二つ居間のコタツに置いた。
「裕人君、何をしているの?」
何をしていると訊かれたから、
「カップ麺のお湯を沸かすけど、
そのまま僕は答える。
「私がお節料理を持参しているのに、それにお母さんから『裕人はカップ麺を食べたがるからサヤカちゃんが阻止してね』強く言われているのよ」
え、母は僕の行動をお見通しなのか、計画したカップ麺生活が早くも頓挫しそうだ。
「母が居ないこの機会しかカップ麺を食べられない、どうか見逃してください」
両手を合わせた合掌ポーズで僕は渾身の願いをアピールする。
「うん、それじゃ私が用意した料理で物足りなかったらカップ麺を許すかな?」
いつもの
「天野さんのお節料理を有り難く頂くよ」
僕の返事に合わせて持参した三段重の包みを開いてテーブルに並べた。
一の重は鰤か鰆の照り焼きと卵焼き、蒲鉾と田つくりに醤油色のバイ貝は和の重、
二の重は鳥肉を揚げて甘酢をかけた
この時点でカップ麺は戦意喪失、更に追い討ちと言うより、止めの一撃が三の重に敷き詰められたチラシ寿司に蒸しエビと蒸しタコ、すし屋の玉とホタテの貝柱、そして僕が一番好きな魚の鯖を甘酢で絞めた酢サバ、別の小鉢に炙った辛子明太子とイカキムチの波状攻撃に飢えた胃袋が唸りをあげる。
まるでテレビ番組の『孤高のグルメ』みたいだが、今の僕は五郎さんはが憑依している。
「裕人君、これでもカップ麺を食べたいの?」
「ゴメンなさい、僕が間違っていました」
良く良く考えれば、僕の好みを知る母から伝授された
完全に僕は胃袋を
天野さんと一緒にご満悦な
「片付けの後にお風呂を頂いて好いかしら?」
もちろん、暫く泊まっていくなら入浴を断る理由はないし、逆に入浴しなくても平気な女性は有りえない僕は匂いに敏感だから・・・
「ごゆっくりどうぞ、湯船の湯が浅かったら足したり追い炊きしてね」
「有難う、私の入浴を覗いたり、こっそり一人エッチするの?」
心の中を読まれたみたいで少し恥かしい。
「先に言われたら、どっちも出来ないでしょ」
この時の僕は自分でも分かるほど苦笑いしていたと思う。
「それじゃ、直ぐに出るから待っていてね」
橋本に『雑学の為に』と言われて、最近は民放テレビを見るように成っていたが、どこが面白いのか理解出来ないお笑いバラエティーや知識自慢のクイズ王に飽き飽きしていた、しかも大晦日の夜はお笑い番組が多いし、白赤歌合戦は母のリクエストで録画予約してあるし、二十二時過ぎから『孤高のグルメ大晦日スペシャル』が始まる。
お腹が満腹の僕は少しだけ横に成った積りが、三秒で睡魔に負けて夢の世界に落ちた。
「Z・Z・Z・Z~」
どれ位の心地良い時間が過ぎたのだろう、
「裕人君、裕人君、起きて、居間で寝ると風邪を引くよ」
その言い方は僕の母にソックリで、
「母さん分かったよ、今直ぐベッドに行くから」
住み慣れた自宅で、いつも就寝前に習慣でトイレへ行く僕は居間からトイレに続く廊下の鴨居で『ゴツン』と額を強くぶつけた。
「痛ったぁ~」
平成の日本家屋は標準的な日本人男性に合わせて床から鴨居まで180cmで施工されている、そんなことは重々承知しているが寝惚けた僕にその注意が無く、眠気を吹き飛ばす衝撃で一気に目覚めた。
「裕人君、大丈夫?」
「大丈夫だけど、痛い、眠気も覚めた」
少し前の僕なら鴨居で頭頂部をぶつけたが、190cmを超えてからは額を当ててばかりで、嬉しいような嬉しくないような複雑な気分を感じる。
冷えた水で濡らしたタオルを僕に手渡す
「痛みで眠らないなら、私も恥かしいけど、答える裕人君も恥かしいエッチな質問して善い?」
天野さんが言う、訊くも答えるのも恥かしい質問とは、何だろう・・・
「僕に分かる事なら」
「裕人君、これ知っている?」
それは確か同人誌の無料エロ漫画で、一時期バスケ部の後輩達が話題にしていたと思う。
「ねえ、どうしてこの漫画の女性は巨乳ばかりなの?」
「多分だけど、エロ漫画の読者は99%男子で、巨乳は読者の願望だと思う」
「そうなんだ、じゃあ男性の陰茎が大きいのも?」
「うん、それも読者の願望じゃないかな?」
「じゃあ、女性がお口で御奉仕するのも願望?」
「きっとね」
「お口で奉仕して、ゴックンするのも男性の望み?」
「そうだよ、エロ漫画は男の理想しかない」
「じゃあ、私みたいな女子が読んじゃ駄目なの?」
「駄目じゃないけど、それが正常な行為と勘違いしちゃうと良くないよ」
幼い子供が何で何で、と親を質問攻めにするみたいだが、世の中に氾濫するミスリードを正すのも優しさと自負する僕へ、
「最期の質問、裕人君も巨乳に挟まれたり、お口で御奉仕されてゴックンされたいの?」
「いや、そこは、否定出来ないけど、無理してやるモノじゃない」
本心からと思う。
「うん、分かったわ、無理の無い範囲で試してみるね」
真面目な顔で納得する
なんと言うエロい会話か、駄目だと思う僕の心と裏腹に別人格の海綿体がウズウズしてきた。
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