第105話 秋の夕日はナントカ落し。
灰原中学から同じ方角へ男女子十人位の集団で帰路、冗談交じりの会話に
「あれ、
いつもと顔ぶれが違うと
「図書館に用事が有って、二人で帰るらしいよ」
「用事って何だろう?」
誰もその理由に勘づくが、
「野暮ね、二人だけで話がしたいのよ、空気を読みなさい」
橋本と交際している
男子同士でワイワイ遊ぶ事が好きで社交的な橋本には理解が難しいらしい。
元々は女子生徒が下校時の変質者に襲われる心配から男女の集団下校だったが、その翌日は
橋本は『高校入試が終わったら遊園地に行こう』と言う、そこへ吉田さんも『温泉へ卒業旅行に行きたいね』と現実逃避の会話で無理に笑った。
「ところで
他人の志望校を訊くのは、余程の親友以外は気が引けるデリケートな質問で、『やっぱりバスケの強豪校?』と
「県内バスケの強豪県立は青竹高校と東郷高校、私立の三鴨高校と横田学園だろ、今は他に選択肢が無いな」
僕の説明で県内一番の青竹高校バスケ部が第一志望を疑わないだろう。
それでも一歩一歩と最後に
「なぁ
僕は
「そんなの
それでも転校してきて一年の
「それじゃぁ、話は代わるが『秋の夕日はナントカ落とし』と言うが、何とかに入る言葉は何でしょうか?、ハイ、
え、本当の意味を知らないがそれは『ツルベエ』か『ツルベ』だろう、と想像する僕へ、続けて橋本が言う。
「これは大喜利だから、笑える回答だぞ」
面白い事は苦手な僕に大喜利とか言われても、あ~無理・・・
「そうだな
「
「秋は早く日が暮れるから、小銭を落としたら見つけ難い、だよ」
「う~ん、今一だな」
僕の解説に橋本の採点は低い、その後に
「私から、秋の夕日は涙落とし、ってどうかな?」
涙落とし、その意味は何だ・・・
僕が思うと同時に
「
「秋は実りの秋だけど落葉するでしょ,それが物悲しくて、その時に思いを寄せる彼が居ないと寂しくて涙が頬を落ちる、って意味だけど変かな?」
秋の日暮れに寂しさを感じる女心、そこを『涙を落とす』に例える
「その寂しい気持ち、私は分かるわよサヤちゃん」
「うん、寂しいときは何も言わずに隣に居てくれるだけで善いの、私の肩を抱いて『寒くない?』とか言われたら『ううん、大丈夫』って安心するの」
「うん、無口な彼氏って善いね、場を盛り上げようと面白くない事を言い過うのは、極薄ペラペラ男ね」
「え、それって俺の事?
「別に
好い時も悪い時も喋りすぎる
「あ、
吉田さんが言う、青く見える隣に芝生って、僕だと思えば赤面もする、それでも橋本に指摘されると素直に受け取れない僕は、
「
「一番駄目な回答だな、本当はツルベエだよ」
「
「落語家さんの名前だろ」
CMが無いテレビの番組で見た、一般人の家にお邪魔する『ツルベエの家族と乾杯』だと納得して、二人と別れた後に
「裕人君、ツルベエじゃなくて、『
「そうなの、知らなかった、で?釣瓶って何?」
「時代劇で中年女性が井戸端会議するでしょ、その井戸から水を汲み上げる桶に繋がるロープの事よ」
小学校の時に手動式のポンプで水を汲み上げた経験は有るが、時代劇以外で井戸の釣瓶を見た記憶は無かった。
僕達と別れた
季節は九月から十月、夏服から冬服へ衣替えの猶予期間は個人の判断でどちらも着用できる、朝晩の登下校でも涼しい風を感じる。
そして夏時間から冬時間に切り替わり、下校時間も一時間早くなった。
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