第104話 夏休みが開けて。
中学で小学校の三学期制から二学期制に変わり、夏休み前の終業式と夏休み明けの始業式が無くなった。
九月の中旬に期末テストが有り、その数日後に前期終業と翌日の休日、その翌日が後期の始業式に通常の授業を受ける。
前期と後期でどこが変わると言うなら、生徒会や委員会の役員が三年生から二年生へ引き継がれる。
そんな事はバスケ部を引退した僕達には関係ないが・・・
高校受験を控える三年生は進学塾の夏期講習で忙しい、そんな理由でPTAの役員が校長へ『夏の宿題を減らしなさい』と意見した。
それは世に言うモンスターペアレントのクレームかもしれないが生徒達には好評で、自由研究や読書感想文も無く小冊子の『夏の暮らし』だけが夏休みの宿題に成った。
夏休み中の生活では、元々色白の僕は紫外線を浴びても日焼しづらく、肌が黒くなるより赤くなり元の肌に戻る、手足の体毛も薄いからプールや海で水着に成るもの恥かしい。
毎年、夏休み明けは肌が白いままの僕は引け目を感じていたが、来年三月に高校受験を控えた同級生で夏休みに日焼してる
九月に変わる数日前、夏休み明けの初登校日、
「よぉ
人付き合いの苦手な僕でも唯一の親友、
「
「そうだよ、爺さんの別荘が伊豆に有って、そこで名産の海鮮を食べ過ぎてこの有様だ」
橋本の爺さんと言うのは、母方の祖父で市会議員を務める安倍さん、そしてリゾート地の別荘で夏を過ごす
大半の受験生は進学塾の夏期講習参加で日に焼けず白い顔をしているはずなのに・・・
なんて
「
十五歳、思春期の女子が夏休みに変わったとしても不思議じゃないが、髪色を戻さないとその日の内に生活指導室から呼び出されると
「
「
自宅で受験勉強と天野さんの家で合宿勉強会の名目でお留守番、その数日後に名邦高校で選抜試験を受けたが、口の軽い
「自宅で勉強していた位だけど」
余計な詮索を防ぐ為に必要以上の事は話さない。
「あれぇ、
そうか、あの夜は
「よく憶えてないけど、確かにそんな事も有ったな」
「
まさか、花火見物で足を痛めた
「ちょっと前の夜に『オッサン、汚い手で僕のサヤカに触るな』って
酔っ払いが
「
「俺は彼女の
あぁ、天野さんは自ら『僕のサヤカに触るな』を告知したと言うのか、
そんな小さな話題だけで九月の中学生活が始まった。
早々、最後の公式戦を終えた野球部の男子は丸刈りから髪を伸ばして、中途半端な短髪でイメージチェンジのお洒落したが、もちろん生活指導から呼ばれる事はなかった。
『盗んだバイクで夜の街を走り』『校舎の窓ガラス壊して周った』の武勇伝も無く、真面目な灰原中学の生徒達。
今までと違うのは、新聞社と進学塾が協賛で年四回の公立高校用模擬試験が九月から始まると覚悟した。
夏休み前の中学と違うのは、バスケ部を引退した僕と同じクラスの橋本は放課後の雑談で他クラスから来る元バスケ部を待った。
元バスケ部の内田と林田、後藤が集まり、その後に他クラスから女子生徒数名が合流して家路に向う。
中学から同じ方向の自宅へ歩く僕ら、
「ここで俺は離脱する」
と一人の男子が言えば、
「私も」
と一人の女子が言い、グループから離れた男女は手を繋いで歩いた。
それを見た
「あの二人も付き合っているんだな」
誰もが同じ感想に、
「
彼女の
「バカぁ、人前で手を繋ぐなんてなんて恥かしい」
いつもの吉田さんは凛とした
一組一組と男女が帰宅グループから離脱して、同じ小学校出身の僕と橋本も別れた。
みんなと別れた僕と二人きりに成った
「ねぇ、裕人君、私達も手を繋ごうよ」
「え、知らない人が見ているよ」
「別に気にしないから平気よ」
「
それは僕の照れ隠しで有り、学業優先でCMモデル休業中の
「じゃぁ、他人の目が無い私の家に寄ってよ」
最初から
「うん、そうするよ」
賛成した理由が他にも有った。
リビングのソファに座り、出された冷たい麦茶を飲みながら、
「あのさ、今日先生から選抜試験の内定を貰った」
顧問の教師から受け取った合格内定の通知プリント用紙を見せて、
「え、名邦高校に合格したのね、私の嫉妬が理由で落ちなくて良かった」
「うん、まだ内定だけど、
「それで裕人君はどうするの?」
「最初に言ったとおり名邦高校には行かないよ」
「どうして?合格したのに勿体無い」
特待生じゃないと授業料寮費と三万円を超える私立の受験料も負担に成る。
「お金の問題より、高評価された特待生とバスケ部で競争は当たり前だけど、名邦高校が下した僕の評価はそのレベルだった、それが行かない理由だよ」
「裕人君が決めたなら私が意見しないけど、やっぱり惜しいよ」
「そうだ、天野さん
勉強合宿でリビングの隅にノートpcとプリンター、シュレッダーを見ていた僕の提案に、
「本当に要らないの?」
「うん、来年の三月に成って僕の気持ちが変わるなんて、
シュレッダーのメインスイッチを入れて紙を投入口に入れると、自動的に始動してギザギザのクロスカットでバリバリと音を立てて、内定書は燃えるゴミに成った。
「もしかして私の為に破棄したの?」
「それは
「駄目だと分かっていても嫉妬深くてゴメンなさい、名邦高校の試験を聞いた時も裕人君に『アソコを見せて』なんて無茶振りから自慰で体液の匂いと味を知りたくて」
それは僕に取っても驚きの行為だったが、『裕人君の全てを知りたい』と言う
「
「じゃあ、私と裕人君だけ、二人きりの場所なら許容してくれるの?」
ちょっとだけ口が滑ったと後悔するが、
「そうだね、僕とサヤカさんの自宅でも、両親が居る時は勘弁かな?」
この何気ない一言が今後の展開に大きく影響を与えた。
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