第87話 笑顔の理由。
県北部の
春と秋の
そして人気アニメの『
神山市総合体育館、通称『神山ビック・アリーナ』で開催される中学校バスケットボール県大会は全国中学バスケットボール大会、通称『
僕たちの灰原中学は県の南部に有り、北部の神山市へアクセスはJR特急の『ワイドビュー神山』で二時間弱、日本縦貫高速道路を使えば二時間半で到着できる。
遠方の県大会へ出場経験がないバスケ部は、社会見学で利用する地元のバス会社を予約すると想像したが、当日の朝に男子バスケ部が乗車したのは、白い車体にブルーとレッドのストライプ、英文字の筆記体で『????・リゾート』とペイントされていた。
「先生、立派な観光バスですね、午後からの第二試合に勝てば宿の予約も大丈夫ですか?」
「今回はご父兄のご好意で交通費と宿泊費をご支援頂いた、という事だ」
顧問の説明では分かり
午前九時の開会式から試合開始まで、到着時間と
それでもベンチ入りメンバーの十五人と顧問の男性教師、三年生から一年生の女子マネ五人を含めて、更に二年と一年の応援部員まで五十五人を乗せた観光バス。
その最前列に顧問の先生と女子マネ五人が座席に着き、最後列に僕たち三年生の
最寄のインターチェンジから高速道路で神山市まで二時間半、武者震いと緊張が高まる僕は、周りのチームメンバーが遠足へ行くような笑顔で談笑するのが不思議だった。
「なぁ、
推定身長185㎝、体重90㎏の重量級センターに訊いた僕へ、
「え、そうかな、
「
そう言う
「そうだな、俺たちが楽しみにしているのは
「
僕の疑問へ
「俺たちは高校生に成ったらやりたい事が有るから中学でバスケを卒業するけど、
いつもはシャイな
「
僕の問いに、
「俺は大学に入るまでバイトして海外旅行に行きたい」
「俺もバイトして、大学に合格してから大型二輪の免許を取得して、夏休みにツーリングで北海道を回りたい」
確かに大柄な
「俺は将来パティシエに成りたいから、全国の有名洋菓子店を訪ねてその味を経験したい」
残るのは僕の親友、小学校から今まで八年間付き合う
「俺は神奈川の大学に入って湘南でサーフィンを始めたい」
小さい頃から運動神経抜群で、中学から始めたバスケでもキャプテンに成った
「明確な目標が有るなんて、みんな凄いなぁ」
思わず口から本音が出てしまった。
「凄いのNBAを目指す
真面目で一度も冗談を聞いたことの無い
「金髪美人って、全員にか?」
「そうだ、三年生全員の十三人な」
万が一でも僕がNBAプレーヤーに成れたなら、金髪美女を誘ってOB会を開こう。
「金髪美女と親しくなりたいと思うなら英語をマスターしろよ」
冗談と皮肉を込めた僕へ、
「
キャプテン
「そのOB会に俺も招待して貰えるのかな?」
「勿論ですよ先生、歓迎します」
顧問のボケと僕の
ただ一人、女子マネ・リーダーの
「男ってバカでしょ、男子バスケ部と付き合うならよく考えて選びなさいよ」
これまでの流れから、これは
「やっぱり
その発言に瞬間だけ時が止まった。
後輩から密かに『女将さん』と呼ばれているとは、吉田さん本人は知らない。
「おい、誰が女将さんだ!」
それまで神山市へ向うバスに漂う
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