第80話 時間がない僕は焦る。

僕の目標はアメリカのプロバスケット、NBA選手プレイヤーに成ること。

今のNBAで日本人選手は二人、その一人は中学時代に全国大会で活躍して、日本の高校で全国優勝の後にアメリカの大学へ留学からNBAのドラフトに一巡指名されて、ビックチームにトレードで活躍している。


それがNBAへ僕の理想、しかし七月末に最後の公式戦に挑む僕には全国大会の出場経験が未だ無い。

自己流の筋トレで腕と肩周りは少しだけ大きくなったが、課題のより高くジャンプできるの跳躍力ちょうやくりょくと、早くダッシュする瞬発力しゅんぱつりょくが足りない。


正式なトレーニングコーチに習う時間とお金の無い僕は、型落ちのタブレットから専門家の動画で学んだ。


お尻から太腿のきんトレと、その裏側に有る数種類の筋肉をハムストリングと聞いた事は有るし、脹脛ふくらはぎ下腿三頭筋かたいさんとうきんとは、聞いた事が無い『腓腹筋ひふくきん』と聞いた事が有る『ヒラメ筋』という2つの筋肉が重要らしい。


難しい専門用語をスルーして、かかとを上げて静止したり下半身へ負荷を掛けるスクラット・トレーニングを真似てみた。

下半身を鍛えると跳躍力と瞬発力以外にも、相手のパワープレイに対抗できるフィジカルの強化に成るらしい。


それを必要だと分かっているが、身体に負荷をかける筋トレや、基本的な

練習に飽きているのが本音で、派手なプレイに『自分と相手の選手も怪我をさせる』と注意する顧問が来る前に、僕と橋本はプロバスケのプレイを真似てみた。


3Pシュートが得意な橋本は、相手のディフェンスから離れるように後ろへ飛びながら打つフェイダウェイ・シュートを練習する。


「俺は槇原マッキーのダンク・シュートが見たいな」

と簡単に言うが、バレーボールの様に助走してジャンプ出来ないバスケでは、真上に手を伸ばした垂直跳びで僕は高さ305センチのゴールリングにギリギリで指先が触れる程度、派手なダンクシュートには10センチ、いや20センチはジャンプが足りない。


そして夏の中体連まで時間が少ない僕は正直焦っていた。

そんな僕の気持ちを親友の橋本は感づいていた。


槇原マッキー、何が不安なんだ?」

橋本ハッシー、今の僕には練習時間が足りない」


そして現状の灰原中学バスケ部では全国大会出場は力不足と思う、そこまで全てを吐露とろした。


「そうだな、槇原マッキーだけ意識が高いと思う、他のメンバーに同じ事を望むのは無理だが、俺に一つ案が有るから少し待ってくれ」

わらにもすがる気持ちとは、今の僕だろう。


翌日の部活で橋本ハッシーから、

「俺と女子マネの吉田さんと相談して考えた『男子バスケ部ファンクラブ』を作るってのは、どうだろう?」


ファンクラブって直接のスキルアップに繋がらないだろう、そう思う僕の表情を読んだ橋本は、

「会費無料、放課後の見学優先、制服着用で公式戦の応援許可、そして選手個人の応援禁止でチーム全員を箱推はこおし、これで男子バスケ部員のモチベーションがアップするはず」


フィジカルアップよりメンタルアップの効果を期待する、さすが友達が多くコミュ力の高い橋本ハッシーと、女子力の高い吉田サユリさんの提案に僕は感心した。


その数日後、橋本ハッシーは自宅のパソコンで、ファンクラブ会員証を印刷とラップして入会希望の女子生徒へ無料配布した。


放課後の体育館にクラブ活動して居ない女子が集まり、イケメンの内田と橋本を中心に女子から視線を集める、と同時に他の男子部員のやる気スイッチが入ったのは誰にも明確だった。


ただ一つの誤算は会員の女子から『練習後にツーショットを撮らせて』と要望されて、それを受け入れる女子マネの吉田サユリさんは苦い顔を見せていた。


女子ファンの視線にモテたい一年生と二年生の思春期男子も練習に熱が入り、スターター〈野球やサッカーのスタメン〉とサブ、それ以外のベンチに入れない部員も、普段の練習態度と練習試合の結果からベンチメンバーの入替も有り、そこからバスケ部全体のパフォーマンスが上がった。


更に橋本ハッシーのフェイダウェイ・シュートは精度も上がり完成形に近づくが、ダンクシュートに挑戦する僕にはまだ遠い道のりだと感じる。


槇原マッキー、ボールを持って飛ぶダンクが出来ないなら、俺がリング近くにパスするアリウープを試さないか?」

確かに橋本ハッシーの言う、両手がフリーならその反動を使い高く飛べるかと試したが、橋本ハッシーとパスのタイミングが合わないのと僕のジャンプが足りない。


例えば橋本のフェイダウェイがリングから外れた時のリバウンドなら有りかも、


ドラマや漫画なら超人的なパフォーマンスで問題を解決するのに。



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