第76話 大阪の夜は。
修学旅行後の男子バスケ部は『校内カーストの上位に成るらしい』と聞いていたが、初日の大浴場で脱皮した状態を目撃され、翌朝食時には話題に成っていた。
バスケ部以外の男子でも、兄や年上の
修学旅行の二日目は大阪へ移動してシネマ・ランド『ウニバ』を見学、どうして観光じゃなくて見学と言うのか、それは学校行事の一環で就学目的の意味が有るから、らしい・・・
普段からテレビを見ない僕でも知っている『魔法使いの少年物語』や『ゲームキャラクター』と『蜘蛛男』のライド・アトラクション、『自動車型タイムマシン』に少しだけ興味が出た。
シネマランド、『ウニバ』の敷地内ではグループ行動が認められて、各斑ごとと言いながらも個人的にショッピングや軽食を楽しむ生徒たち、そして一人でベンチに座り青い空を見上げる僕へ
「おい、
と言う
僕をランドマークに
「僕は
と
親と
その様子は、
「教師と言うなら身分証明証を提示してください」
小柄なコケシちゃんは家出した小学生と疑われているのか、
「証明できる運転免許証も健康保険証も、マイナンバーカードも失くす不安から家に置いてきました」
情けない返事を聞いた僕は呆れたが、その後の展開を期待して物陰に隠れて様子見を続けた。
「それだと保護者を呼び出しますので、
「
「あれ、小池先生、迷子センターで何やっているの、そうか迷子に成った生徒を探しに来たの?」
「あなたは誰ですか?」
ウニバのスタッフも中学の制服を着た190cmの僕を見てそう反応するだろう、
「そこに居る小池先生の生徒です」
「成人を証明できる物を所持してないので、こちらで保護してました」
スタッフが言う保護って、『コケシちゃん』は完全に迷子扱いだろ、腹筋が割れそうに可笑しい。
「僕でも生徒手帳を持っているのに、先生は証明証を持ってないの?」
「旅先で失くすと不安で」
「じゃぁ、先生は何を持ってきたの?」
「旅行の着替えと、もしもの時に現金とキャッシュカードを」
「あれ、キャシュカードって成人しか持てないし、海外旅行だと身分証明証に成るんじゃないの?」
僕の思いつきに、コケシちゃんと迷子センターのスタッフが同時に『あ!そうだ』と気付き、コケシちゃんは迷子センターから解放された。
「槇原君のお陰で救われました、あの、この事は内緒にしてください」
勿論、僕は他言無用と思い、
「口が裂けても誰にも言いませんよ」
僕の言葉に安心するコケシちゃんの顔を見た、その時に遠くから
「
橋本の問いに本当の事を言えない小池先生は沈黙する、仕方無いから僕は、
「お土産ショップのキャラクター縫ぐるみに挟まって動けないコケシちゃんを見つたんだよ」
コケシちゃんを懸命に探した橋本達の不安を笑いに変えようと、僕なりに渾身のボケをかます。
「幾らコケシちゃんが小さいって、小学生じゃ有るまいし、ねえ先生?」
僕と橋本の会話を聞いた小池先生は顔を真っ赤にして
それと同時に
おいおいコケシちゃんを確保だろ、迷子の猫みたいに捕獲じゃないだろ・・・
「凄く不安だから槇原君、私と手を繋いでほしい」
引率の小池先生は
「190cmの
それから数時間後、今日の宿にチェックインから、大浴場で入浴と団体用レストランで夕食をいただく流れ、
前日の宿みたいな豪華料理のバイキングじゃないが、今日の宿は地方から訪れる中学生の為に大阪名物の『たこ焼き』『ネギ焼』『くし焼き』『バッテラ寿司』と『キツネうどん』から高級なイメージの『てっちり鍋』まで、そしてあの『豚マン』とデザートにはクリームたっぷりの『堂本ロール』まで、聖地巡礼できなかった僕達に粉もんグルメを揃えてくれた。
外観はビジネス風ホテルのウエルカム精神に感謝しながら、大阪グルメを堪能し満足した。
こうして修学旅行の二日目が終わろうとしたが、ハプニングは続いた。
前日の大浴場では、僕と橋本以外の男子バスケ部員も脱皮済みを目撃されて、その話題は男子生徒から女子生徒にも伝わっていたらしい。
ビジネスホテルタイプの部屋割りは僕と橋本が相部屋のツインルーム、
「
修学旅行で有る有るワンチャンを期待する
『ウニバ』で迷子に成った『コケシちゃん』探しと、その後の不安を訴える『コケシちゃん』と手を繋いでの見学で疲れ果てた僕は、
「遠慮するよ、でも誰に部屋に誘われたの?」
「一緒に行かない
「生徒指導の岩鉄さんが居なくても、他の先生が巡回するから見つかるなよ」
早朝三時から働くパン職人の父は午後九時に寝て、午後十時に母が寝る家で僕も早く寝る習慣から午後十時を過ぎると眠くて起きていられない。
橋本には小学生時代から『
それは他の男子が興奮する旅先でも同じで、ルームキーを持った橋本を見送り、ツインベッドルームの片方に入り目を閉じた。
それから十分か三十分くらい寝たのだろう、部屋のドアを開錠する音に気付き、
「橋本、静かにしてくれよ」
帰ってきた足音へ声を掛けて僕は再び
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