第73話 あの儀式とウケ狙い。

新入生へ部活動説明会でバスケ部長の橋本ハッシーが言った『未経験者歓迎』と『バスケ入部で背が伸びる』の都市伝説的な噂を期待して仮入部の体験参加していた一年生の三十人以上へ、女子マネの吉田さんから蜂蜜レモン風キャンディとスポーツドリンクで持て成しされた本入部を前に『一週間で何日なんにちくらい部活ですか?』と橋本ハッシーが質問された。


「え、週末の土日は午前か午後の半日、他校と練習試合の日は朝から夕方まで、平日は朝練と授業後の下校時間までだけど、それがナニ?」

部長の説明をいた一年生たちは顔色を変えた。


テスト期間と社会見学や体育祭などの学校行事以外に休日が無い中学の運動系部活動に不安を感じ、正式入部したのは小学校時代のミニバスケ経験者も含めて十五人まで減った。


そんな四月の下旬、橋本と僕はいつもの様に雑談から、

ゴールデンウィークが明けた灰原中学の男子バスケ部での伝統行事、新入生を対象とした『 辣韮らっきょうの皮むき』の儀式が行われる、しかし『俺がやらなきゃダメなのかな』と部長の橋本ハッシー今一いまいち気が乗らないらしい。


橋本ハッシーが部長の権限で中止を決めたなら良いんじゃないか?」

「そうだよな槇原マッキー、皆の意見も聞いた方が良いかな?」


その流れで橋本ハッシーから内田ウッチー後藤ゴッチ林田リンダ広瀬ジュンなど三年生に同意されて、放課後の部活終わりに中止を発表した。


これに反発したのは女子マネの吉田サユリさんで、

「先輩達から続く伝統行事よ、思春期男子の成長に必要な皮むきと清潔にする行為を恥かしいとか有りえない」

自分にも他人にも厳しい吉田サユリさんは、いつもより言葉が激しく烈火の如く、交際している部長の橋本ハッシーを責める。


「そんなに怒らないでよ、俺一人の判断じゃなくて、槇原やメンバーも同意してくれたんだ」

橋本の説明と言うか、苦しい言い訳に、

「じゃぁ、今年中止したら次期キャプテンの白川くんが来年はどうするの?きっと困ると思うよ、橋本ハッシーのヘタレで今年だけ中止なんて末代までの恥よ」


吉田さんの気迫に圧された橋本は、

「じゃあ、儀式を止めるのを止めるよ」

「最初からそれで良いのよ、橋本が恥かしいなら、予定を前倒して儀式をやりなさい」

彼女の熱弁に決心をひるがえしたが、

槇原マッキー、心細いから一緒に居てくれよ、一生のお願いだから頼むよ」


前年までは五月の連休明けに行われた伝統の儀式を一日でも早く終わらせたい橋本ハッシーの部長権限から、前倒しで四月の最終週に行われる事に成った。

それから約一週間が経ち、四月最終の週末金曜日、いつもより練習を早くて終えて、顧問の先生が居なくなり、体育館の床掃除を済ました男子バスケ部員へ、

「一年だけ残って解散、一同コートに礼!」

伝統の儀式を始める橋本の号令を聞いて、三年と二年の男子は帰り支度して体育館から去る。


「三年の女子マネ以外も帰りなさい」

吉田さんも後輩の女子マネージャー達を帰るように指示をする。

その流れにじょうじて、

「じゃあ、僕も帰るよ」


「ちょっと待てよ槇原マッキー、俺を一人にしないでくれよ」

橋本ハッシーが引きとめようと僕に叫ぶ。


「あ、そうか、そうだったな、悪い悪い忘れていたよ」

本当は憶えていたが、心細そうな橋本ハッシーの顔を見たら少し虐めたくなった。


部長の橋本に残るように言われた一年の十五人は、男子用の更衣室に集められて、

「全員揃ったな、これから神聖な儀式を執り行う、これは君達の将来役に立つから、セクハラやパワハラじゃないと思ってほしい、では本題に入る」


『ハーフパンツとトランクスも脱いで』と橋本から指示されて半裸を躊躇たんめらう男子一年生を見て、吉田さんと他二名の女子マネがニヤニヤ薄笑いを見せながら『恥じらいも可愛くて初々しいね』と言う、吉田さん以外の女子マネが誰と交際しているのか僕は知らないし興味も無い。


「俺も脱ぐから君達も脱がないと儀式は始まらない、ほら、これでどうだ?」

十五人の前に橋本は下半身をさらして、大人の形態したジュニアを、

「日本人男性の四人に一人は『包茎かわかむり』らしい、思春期が来たら早く脱皮する方が大きく育つ、パートナーの為にもチ〇カスは溜めない、これが男の礼儀だな」


真面目な顔で一年生に説明する橋本ハッシーを見て、僕達が一年生だった頃に先輩から言われた台詞と同じだと思う。


「あのう、そう言う部長は彼女が居ますか?」

一年生の質問へ橋本ハッシーの代わりに答えるのは三年女子マネの吉田サユリさんから、

「私が橋本部長と交際している吉田サユリです、君達も早く彼女が欲しいなら一皮むけなさい」

そう言って橋本ハッシーの唇へ、舌を絡める濃厚なキスを一年生に見せつけた。


「僕も脱ぎます、橋本部長、剥き方を教えてください」

こぞってハーフパンツとトランクスを脱ぐ男子一年生、ビジュアル的にりんとした吉田サユリさんに憧れていた新入生も居たらしく、女子マネへの幼い恋心は泡と消えたが、『皮むき』の儀式で少年から青年へ第一歩を歩み始めた。


いつもの年ならここで儀式は終了だが、今年はその中に皮付きながらビックサイズを持つ一年生が居た。


「げ、あれはエグイ、橋本ハッシーのより大きいんじゃない?」

吉田サユリさんのつぶやきを聞いた僕は必死に笑いをこらえた。


「お、男の価値は大きさじゃない、よな槇原マッキー?」

橋本ハッシー、その台詞は吉田サユリさんに言えよ、そう思うが親友の顔を立てて、


「そうだ、男の価値は優しさ、次に固さと持続時間に続く」

僕から冗談半分のボケに耳を傾ける一年生の一人が<下半身を出したままの姿に笑える>


「槇原先輩は彼女さんが居ますか?」

正直な質問にもっともだと思う僕より先に橋本マッキーに彼女は居ないが、数多くのガールフレンドが居て『槇女』と言うハーレムを継続している『灰原中学のエロ魔王』とは槇原マッキーの別名だ」


新入生から笑いを取る為に有る事無い事をネタにする橋本ハッシー、これは冗談で済ませないぞ・・・





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