第72話 新学期のクラス。

三年生の新学期がスタートして二週間が経つ、クラス替えで僕と男子バスケ部のキャプテン橋本ハッシーは四組に、天野サヤカさんと女子マネの吉田サユリさんは3組に別れた。

僕に取って嬉しかったのは、春の身体測定で半年前より身長が2cm伸びて190,3cm、独学のダンベルを使ったラジオ体操で腕から肩、背筋と腹筋までの筋肉量が増えて体重は82kgになっていた。


NBA選手プレーヤーを目指す僕は高校入学までの一年間で195cm以上に成りたい。

憧れのNBA選手プレーヤーは、身長210cmと体重123kgの大型選手ビックマンながらドリブルや3pシュートも得意とする。


そして中学三年生の春行事は五月下旬の梅雨入り前に二泊三日の修学旅行、六月初旬に二期制前期中間テストが終われば、中学バスケ最後の公式戦では県大会を優勝して地方大会の上位成績を得て、全国から24校が集まる全国中学バスケットボール大会の『全中』を目指したい。


それには未だ課題も多く、バスケの技術向上とメンタルアップの課題を探していた。

週末の練習試合を終えて帰宅する道中に、視覚障害者の男性が白杖はくじょうを手にして一人で歩く姿を目撃した。

足に不安が有る老人が使う杖とことなる視覚障害者の白杖は1mより長く、

多分身体の横幅と同じ30cmで左右にコツコツと路面を打ち、障害物を検知していると思う、素人考えの僕なりに視覚に頼れないから聴覚と白杖の反応で周囲の状況を察知していると思う、それ以外に武道の達人が持つ気配を感じる能力を備えているのか、と想像した。


帰宅した僕は入浴から課題の自宅学習を終えて、目を閉じて気配を感じ取る真似事を試してみたが、普段から視覚に頼りきった生活に気付く。


週明けの月曜の朝に職員室へ出向き、各教科担当の先生に、

「居眠りじゃなくて、集中力を上げる為に目を閉じて授業を受けさせて下さい」

黒板へ書き込むのが好きな社会の先生では無理だが、教科書を読むのがメインの英語と国語でしか使えないと思う。


その日の一時間目、国語担当の小池しおり先生が教科書を読む。


小池しおり先生をニックネームで『コケシちゃん』と呼び、軽く見ている生徒は授業中に友達へメモを回したり、女子の雑談も聞こえてくる。


コケシちゃんの声が小さい事も有るが、目を閉じて集中する僕には届きづらい。

これを注意するべきかと思うが、僕より先に橋本ハッシーが、

「皆、もっと静かにしろよ、先生の声が聞こえないだろう、なあ槇原マッキー


僕へ同意を求める橋本ハッシーの発言にクラス中が笑った。

雑談する女子へ苦言しながら波風立てないように笑いに変える、さすがコミニュティー能力が優れた橋本ハッシーだと感心した。


新しいアイディアを10思いついても一つ上手く行けば上等で、周りの気配を感じとる達人の道は失敗に終わった。


2年生の頃は同じクラスだった天野サヤカさんが何か話題を持って顔を見せる。


「ねぇ、修学旅行が関西方面に決まったってラッキー」

「え、どういう事?」


「私は東京の小学校から一泊二日の修学旅行でネズミーランドと横浜市内に行ったから、同じ場所は嫌だった」


僕達は小学校の修学旅行は京都奈良の一泊二日が定番で、中学は千葉のネズミーランドが通常だったが、荒れた灰原中学時代の生徒がネズミーランドで人気キャラの『ニッキーマウス』の首を絞めた事件から『灰原中は出禁』に成り、神戸見学と大阪の食い倒れを体験できる修学旅行に代わっている、なんて恥かしい都市伝説が今もある。


「そうか、天野さんが旅行した観光地でなくて良かったね」

「うん、裕人君、自由時間は私と一緒に観光しようね」


クラスでの斑行動が決まっているのに隣の女子と観光は出来ないでしょう・・・

「3組で天野サヤカさんの斑と合同なら自由時間に出来るかもね」

天野さんの意見を否定するより同行の可能性を残したのは、親友の橋本ハッシーならこう言うかなと想像して返事した。


生活指導のクラス担任、岩鉄さんが引率する修学旅行を思い浮かべたが、思いがけないトラブルから無事に終わることは無かった。


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