第67話 バスケ部の三バカ。
新入学生の歓迎会で体育館のステージに立つキャプテンの
「初心者大歓迎、僕達とバスケを楽しみましょう」
他の部長と並んで新入生勧誘の言葉を述べる。
新学期から数日間、新入生は校内の案内から文系体育系の部活動を見学に回る。
そして二週間の体験的な仮入部から意思確認、そして
中学男子の人気部活は昔から野球とサッカーだが、入部する生徒は小学生時代の経験者ばかり、高校バスケを舞台としたアニメ映画の影響か、放課後の体育館に30人以上の男子一年生が集まった。
白い体操服に体育館シューズを履き、僕達と一緒に準備運動からシュート練習を見た後に女子マネの吉田さんから、
「さぁ一年生、シュートが入らなくても楽しければ善い、でもリングに入ると嬉しいし楽しいよ」
吉田さんは歌劇団の男役スターみたいに凛として一見厳しそうに見えるが、今日は優しい笑顔で一年生にバスケの楽しさを教えている。
とは言え、体育館の半分だけ使用する男子バスケ部のコートに30人の体験入部、練習スペースとボールも無い僕達はコートサイドからその光景を見ている。
僕の隣に座る橋本、その隣に新二年生の白川、思春期の男子が三人寄れば話題は性的好奇心しかなく。
「なぁマッキー、新入生30人の前で『ラッキョの皮むき』〈儀式〉をするのか、気が重いなぁ、マッキー俺と変わってくれよ」
早く皮むきした方が『大人になってから感謝する』、一年生には意味不明の先輩から受け継ぐ伝統の儀式を今の僕なら理解できる。
「キャプテンの橋本が嫌なら儀式を止めたら良いんじゃないか?」
僕を親友と呼ぶ橋本に同情した訳ではないが、伝統などいつかは途切れるもので、それが今年だとしても誰にも文句を言われるすじでない。
「ハッシーがやらないなら俺じゃダメすか、マッキー先輩?」
二年の白川は橋本にはタメ口でも僕には微妙な敬語で接する。
「白川は自信が有るのか?」
精神的な意味で訊いた僕には、
「はい、通常は平均的な大きさですが、いざという時はバキバキで膨張率がハンパ無いっす」
美少年系白川の自信は身体の方かよ、バカだけど可愛い後輩だと思う。
「俺はマッキーに変わってくれと言ったが、生意気な白川に譲るつもりは無い」
どこか似ている橋本と白川を見ていると微笑ましい。
「おい白川、『男が膨張率を言い出したらキリが無い』ってリリーさんがラジオで言っていた」
橋本が言うリリーさんとは作家で俳優の『リリークランキー』さんの土曜夕方、FMの『スナック・ラジ男』だろう、僕もラジコのタイムフリーで聞いて若い女性の心理を学んでいる。
「・・・」
ぐうの音も出ない白川に橋本は続けて、
「白川はオナニーのし過ぎで大きくなったかもしれないが、利き手の右手ばかり使うとチ◯コが左に曲がっているだろう、見せられた一年生に『ポール曲がっとるにー』って言われるぞ」
それは思春期の男子に有るあるで珍しくないが、白川には精神的ダメージを与える会心の一撃だった。
「え、それは・・・橋本先輩、どうしたら良いですか?」
いつもはタメ口の白川は橋本に助けを求めた。
「そうさ、いつもから素直に成れば教えてやるが、善いか右手と左手を交代で均等に使えば曲がらない」
二年前の儀式で『オナって鍛えろ』先輩の教えから橋本が考えた左右交互のトレーニングだろう。
「ても利き手じゃない左では、上手く抜けないかも?」
「最初は難しいが慣れてくるとイケるし、右手が正室で左手が側室と思えば更に興奮する」
自慢げな橋本の教えに共感したのか、二年の白川は調子に乗って、
「それじゃ右手と左手で同時にスレば3Pですよね?」
馬鹿話に花を咲かせるが、
「そこは知らんけど」
両手で3Pには流石の橋本も引いていた。
バカ話に熱が入り次第に声が大きくなっていたのだろう、離れた場所に居た女子マネの吉田さんが近寄って来て、
「バスケ部の三バカで下ネタ話して恥ずかしくないの?マッキーも笑ってないで止めないさい」
吉田さんと交際している『鬼嫁キャラ』の女子マネから僕も叱られた理不尽に、
「何も言ってない僕も?」
「そうよ連帯責任、マッキーは『橋本は僕の親友』って言うでしょう?」
確かにそうだけど、そう思う僕へ、
「横を見なさい、一年生も三バカの話を聞いているわよ」
簡単な練習に飽きた新入生の数人が僕たちと吉田さんの会話を聞いて、
「キャプテンと一番大きい先輩を叱る吉田さんは凄い、映画極妻の
一年生の素直な感想に笑う白川に気付いた吉田さんは、
「全然面白くない、笑うな槇原」
だから僕じゃないって・・・
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