第48話 年末ダイジェスト。

*皆様、新年あけまして おめでとうございます。

クリパ後に時間を戻し、大晦日までをダイジェストでお伝えしたいと思います*


冬の日没時間は午後五時より少し前、暖房の熱気と微量の飲酒で破目を外し男女。


女子が手を付けなかったチキンやピザは残す事無く、運動部男子の胃袋に納めた。

同じ方向へ帰宅する女子を男子が送り、僕は山村ミウさんに好評だった赤いシクラメンに満足して、母へプレゼントしようとフラワーショップ小関に立ち寄り、三代目の健司さんへ、

「薦めてくれた赤いシクラメンが好評でしたので、白いシクラメンを買いたいです」

安くして欲しい希望は無いが、前回と同じ様に知り合い価格の500円で鉢植えを頂いて帰宅した。


「母さん、これクリスマスプレゼントの花だよ」

僕が差し出す鉢植えのシクラメンを見た母、

「まぁ、素敵なシクラメンね、昔の歌で『真綿色したシクラメンほど~♪~』って有ったけど世話する鉢植えは要らないわ」


切花なら良かったと言う母は白いシクラメンを受け取らなかった。

それなら僕が日当たりの良い窓際に置いて育てると決めた。

翌日の25日が本当のクリスマスで、父と母が営む槇原製パン店は年内最後の定休日と言っても特別にクリスマスの準備をしない。


イチゴが乗ったクリスマス・ケーキを好むのは母だけで父と僕は少しだけ食べてみるが、父がドライフルーツを入れて焼くドイツの焼き菓子『シュトレン』が毎年のクリスマスだった。


年末の買い物へ父母は正月用の食品より、僕がお年玉目的で請け負う29日30日31日の大掃除用品を求めて、ホームセンターと24時間スーパーへ出かけた。


僕が留守番する時間は午前11時と少し、槇原製パンの裏手に住居が有り、そこのインターフォンが鳴り応対した。


「裕人君、メリークリスマス」

約束も無く家を訪問するのは、ダウンコートに身を包んだ天野サヤカさんが苦手な笑顔を見せる。


「え?今日は予定してないよね」

「そうよ、私のサプライズ訪問に裕人ひろと君はドキドキするでしょ、それにボーイフレンドをガールフレンドが訪ねるって普通よ、はいこれケーキ、一緒に食べましょ」

一方的に婚約破棄したが、元に戻りたいモデルの天野さんに『ガールフレンドなら良いよ』と条件を付けた僕へ仕返ししたいのか、


お天気は良いが外気温は7度と寒い、取りあえず天野サヤカさんを玄関から自室に招いて、寒さが好きな僕はいつも使わないエアコンのスイッチを入れた。

「部屋が温かくなるまで裕人君のベッドに入るね」

勝手知ったる僕の部屋に、遠慮も無く僕の寝床に入る現役モデルの中二美少女を見て驚かなくなった僕も自虐する。


ウィ~ン・・・壁の高所に取り付けられたエアコンのルーバーが動き出して、徐々に温風を噴出ふきだし始めると天野サヤカさんは起き上がり、


「一つきたいけど、裕人君、昨日は誰と居たの?」

天野サヤカさんは、何でそんなことを訊くの?」

任意の事情聴取なのか、答えないのも怪しまれるが詳細を告げるまでも無い。


「実は女子マネの吉田サユリさんから電話が有って『橋本ハッシー君が昨日は槇原マッキーと一緒だった』て言うから私から確認して欲しいって」

天野サヤカさんと吉田サユリさんには内緒のクリパを疑われた橋本ハッシーは僕にアリバイを求めたのか、


「そうだよ、午後一時から五時まで橋本ハッシーと一緒だったけど、それが何か?」

「他には誰が居たの?」


内田ウッチーとバスケ部の森と小川も居たよ」

「男子バスケ部で遊ぶのに女子マネの吉田さんが知らないって変じゃないの?」


「彼氏の橋本ハッシーは兎も角、僕はプレイベートまで管理されて無いよ」

「そうね、そのまま吉田サユリさんに伝えて」

天野サヤカさんは携帯スマホを出して、吉田サユリさんをコールして繋がったスマホを僕に手渡した。


「もしもし吉田さん、槇原だけど昨日は橋本ハッシーと昼から夕方まで一緒だったよ」

「そうなんだ、安心したわ、槇原マッキー有難うね」


それで通話を終えれば良かったが、彼氏を疑う彼女の心理を思いやれずに、

橋本ハッシーを信じられないなら今後の交際は無理じゃないの?」


手を繋ぐだけで橋本ハッシーが求めるキスを許さない吉田サユリさんへ、警告の意味を含めて助言アドバイスした。


「そうね、槇原マッキーの言うとおりかも」

「友達の少ない僕が言うのも変だけど橋本は良い奴だよ、好きなら優しくあげて」


「分かったわ、槇原君、ありがとうね」

吉田サユリさんと通話が終わり、天野サヤカさんへ携帯を返す僕は、もしも橋本ハッシーが『僕と一緒に居た』と嘘のアリバイを作ったとしても『そうだよ』と擁護ようごするだろう。

それは橋本ハッシーの罪だが、疑う吉田さんへの罰でも有ると思う。



これで橋本ハッシーのアリバイ確認が済み、ケーキを食べれば天野サヤカさんは帰ってくれると思う僕へ、

「ねえ、裕人君も携帯を持てば直ぐに連絡できて便利でしょう?」

母からも提案された僕が携帯を持ったとしても、こちらから連絡することは無いと思う、僕から用事が有るなら家電いえでんに掛けるか、直接会いに行くよ。


サポート終了でアップデート出来なくなった林檎のタブレットから、奈央ねえさんとはフリーメールで連絡が取れるから、僕にとってラインやツイッターのSNSに使用できる最新の携帯スマホは必要ない。




「ねえ裕人君、これを見てよ」

腰掛けていたベッドから立ち上がる天野さんは、ロングのダウンコートを脱いだ下には赤のミニスカートに、襟元と裾に白い縁取りのミニスカドレスでポーズを取り、紅白の三角帽子を被って


「メリークリスマス裕人君、私のサンタ姿はどうですか?」

写真集の中から出てきた人気の美少女に驚く僕は一瞬だけ言葉を失った。


「あ、あ,凄く似合っているけど、それ買ったの?」

「ううん、他のモデルさんがクリスマス用の撮影で要らなくなった衣装をスタイリストさんから頂いたの?」

業界ではそんな事も有るのかと驚く僕へ、天野サヤカさんは、

「ジャジャーン、次はこれよ」

赤と白のミニスカサンタのドレスを脱ぎ、頭にウサギの耳カチューシャを付けて

胸元の大きく開いた黒いバニーガールに変身した。


「そ、それもグラビア撮影で使用済みの衣装なの?」

「ううん、これは裕人君が喜ぶと想像して通販のナマゾンで買ったの」


バニーガールの天野サヤカさんを見て僕が喜ぶとか、想像されると思うだけで恥かしいし少し悔しいから、

「その姿で写真集を販売したらベストセラーだね、ただし購入した男性にとって『夜の友』だよ」

素直に喜べない僕の気持ちを知らないのか、天野サヤカさんは、

「じゃぁ、裕人君はどんな姿が好きなの?」


「そうだね、AVの様に全裸を見せるより、少しは隠していた方が色っぽく見えるから、浴衣の裾からふくらはぎがチラリや後ろ首のうなじが好きだな」


「中年オジサンが好むエロスね、ムッツリスケベの変態、帰るからXマスケーキは食べてよ」

「ちょっと待って、クリスマス・プレゼントに『白いシクラメン』を君に贈るよ」


母に断られ、自分で育てる積りの鉢植えを指差したら、

「切り花なら貰うけど、世話が必要な鉢植えは要らない」

呆気なく断られた。

それから26日、27日、28日、入院中の顧問不在でバスケ部が年末年始の休止には入り、29日、30日、31日の夕方まで槇原製パンは営業する父母の代わりに、風呂から一階と二階のトイレ、キッチンのコンロ周りと換気扇、僕に家中の大掃除を任された。


トリプル・チャンネル同時録画可能、HDDレコーダーに取った番組を時間の余裕が有る正月に視聴するのは楽しみ。


勿論だけど毎年の事ながら、芸人の受けないギャグやCMは30秒スキップで飛ばして、短時間で視聴から消去する。


令和五年元日、

皆様にとって幸多い年になりますように、心よりお祈り申し上げます。

本年もよろしくお願いします。

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