第44話 静かにクリパ・スタート。
前話の記憶が薄れないうちに続エピソードを更新します。
中学生から見たら高校生や大学生の大人が催すクリパを真似て計画したが・・・
僕達が卒業した灰原小学校に隣接する灰原公民館、二階の和室は老人会で俳句や将棋、カラオケのカルチャー教室で利用できる二十人程が入れる畳敷きの部屋。
同じ二階の隣には成人式で使用されるホールは一度に150人が収容できる。
クリパの和室にカラオケの機械は有るが、僕達が騒がない為に使用は禁止されていた。
午前中は部活から一度帰宅して風呂で汗を流して昼食を取り、午後一時にクリパの準備に公民館へ向った。
午後二時から始めるクリパの準備に一時間も必要なのかと思うが、
今日クリパに参加する女子の顔ぶれを知らない僕と
「
と進行を一任した。
いつもは同じ制服を着ていても、プライベートの今日はパッチリしたアイメイク、赤いリップと甘い香りの香水、校則で禁止されたアイドル風に化粧した可愛い私服の女子は大人びて見えた。
それに比べて運動部男子の僕達はジーンズにフリース、ダウンの普段着にお洒落の欠片も無い。
名前だけでもクリパに参加するなら、失礼がない様に女子達を見習うべきかと反省をする。
「槇原君、こんにちは」
中学では似た団子三姉妹と思う僕を『マッキー』と呼ぶ女子の近藤さん、土方さんと沖田さんは、この場では『槇原君』と丁寧に挨拶してくれるから、僕も緊張する。
その
今回の六人を橋本が選んだ理由は知らないが、最初に計画を持ちかけた近藤さんと沖田さんの推薦から、
「さあ、好きな場所に座って」
畳みに敷かれた座布団を指して、お洒落した女子へ
初めてのクリパに多少は警戒する女子は、暖房が効く温かい場所に固まって座り、残りの場所に男子が座る。
「さあ、2022年、灰原中学有志によるクリスマスパーティーの開催を宣言します」
本物のクリパがそんな感じで始まるのか、
「温かいうちに食べてね」
内田は言うが文科系女子、しかも休日の土曜日に朝からクリパに着ていく私服とメイクに昼食を取ってからなら、それほど食欲も無いだろう。
甘味好きの女子はケーキを完食したがチキンとピザには手を出さない。
その分は食べる事が大好きな僕達男子で消費できる。
クリパ開始の乾杯が終わり、次は何かと
「え~っと、トランプの婆抜きをしよう」
クリパで婆抜き?親戚が集まる爺ちゃん
「軽い冗談だよ、ボケで受けて、場も和んだろう」
確かに緊張の場は和んだが、ただ
これは『瓢箪から駒』、
冗談はさて置き、次は本当に何を言うのか、期待を込めて新たな緊張が走る、あれ?『緊張が走る』って正しい日本語なのか。
「次は女子へのプレゼント抽選です」
クリパのメインはプレゼント、中学生男子が用意した五百円以内のプレゼントは予め正面ステージの裏に隠して、それを女子がナンバーくじで引き、選んだ理由を男子が説明するらしい、これは困ったな・・・
誰から順にクジを引くかを決められない女子へ
「あいうえお順で引いてよ」
中学の出席番号方式で順番を決めた。
「私、安藤だから一番かな?」
全員の注目が集まる中、一番に慣れている安藤さんが名乗り出てクジを引き、
「3番です」
司会の
「このプレゼントを準備したのは僕です、中は防寒のモコモコ靴下です」
これを説明する森は後藤に代わって急成長からスターターに入った。
開封した安藤さんは、
「わぁ、猫ちゃん柄のソックスね、とても暖かそう、有難う」
この時点で僕はクリスマスだけに気を取られてプレゼントを選び、冷え性の女子が喜ぶ防寒性や可愛さが無いと焦った。
「次は私かな?」
あいうえお順の自己申告で、僕の無断使用から槇女結成の切欠を作った沖田さんが座布団から立ち上がり、クジを引いて、
「5番です」
「それ俺です」
これも最近スターターに昇格した小川が立ち上がり、
「僕も防寒に気遣い、モコモコスリッパです」
開封した沖田さんは小川が選んだプレゼントを手にして、
「これは白黒でパンダのルームシューズね、小川君、ありがとう」
三番目は槇女の初代メンバー近藤さんがクジを引く、
「ええっと1番みたい」
「俺のだね」
クリパの言いだしっぺ、
「それは生理痛に悩む女子のお腹が冷えないようにピンクの腹巻、俺って女心が分かるよね?」
女子でない僕でも女子の生理に触れた
腹巻を貰った近藤さんも苦笑いで、
「橋本君、有難う、私のお母さんが冷え性だから喜ぶと思う」
中々の返しにクリパの一同は笑った。
「多分、次は島野だから私かな?」
4番を引く島野さんへ、
「それは僕のプレゼントだよ、十五分のチャージで八時間暖かい電気あんかだよ」
誰もが認めるJアイドル系イケメンの
男子から同じ様な声が出ると内田は、
「ネットのクリスマスバーゲンで取り寄せたから予算内だよ」
中学男子で一番のイケメンから豪華なプレゼントに島野さんは嬉しさを隠せない。
残るはハッシーの元チームメイト野球部の田中と僕、槇原の二人だけ。
土方さんが2番のクジを引き、それを野球部の山田が、
「それ、俺です、防寒用品じゃないけど、ホットミルクで温まって欲しいとマグカップです」
クリスマスツリーとサンタクロースにトナカイがプリントされた大き目のマグカップなら寒い夜でもホットミルクも冷めにくいよな・・・
何だ感だど言っても男子の皆はセンスが良いな、あ、
「自動的に6番です、山村さん」
「ええっと、言い訳に成るかもしれませんが・・・」
クリパまでの一週間、女子へのプレゼントならお花と想像した僕は円城寺商店街の『フラワーショップ小関』を訪ねた。
今は3代目の健司さんは子供の頃から僕を知る、二回大会オリンピック金メダルスケート選手に似た30歳のイケメン男性へ相談した。
クリスマスなら赤と緑の花が有名で、それを想像から店先で見て、
「これってクリスマスに似合いますよね?」
「あぁ、クリスマスに人気のポインセチアね、裕人はこれを買うの?」
僕はポインセチアを買う気満々で凝視したが???
「え、これ緑以外の赤い部分も葉なの?」
「そうだよ」
健司さんの説明で、ポインセチアの赤と緑は葉だと初めて気付いた僕は『なんか違うな』と呟いた。
「これはどうかな?裕人には半額の500円で良いよ」
緑の葉に赤い花を咲かせる鉢植えを薦められた。
その鉢植えは5号サイズの真っ赤なシクラメン、『日当たりの良い場所に水やりを忘れないでね』と健司さんのアドバイスで購入を決めた。
他の男子がクリスマス包装の中、違和感満点の白いレジ袋でシクラメンを持参した。
「山村さん、重くてごめん」
「ううん綺麗なシクラメンね、男子からお花を貰うなんて初めてで凄く嬉しい、春まで大事に育てるわ」
僕に気遣って言う山村さんへ、
「私のプレゼントと
贈った男子の前で交換を要求したが、
「絶対に嫌です」
即回答で断る山村さんに僕はセンスの無さを救われたと思う。
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