第43話 顧問不在とクリパの準備。
皆様、御無沙汰しております、仕事が多忙なだけで至極健康です。
◇ ◇ ◇
十二月の第四週、来週の月曜から市立灰原中学は冬休みに入る。
年末年始の冬休みは他校との練習試合も無く、少し気が抜けるバスケ部の朝練時に、いつもは『低血圧だから朝は苦手』を理由に参加しない女子マネの
「男子バスケの顧問がお休みです、放課後の部活は女子バスケの顧問が指導します」
定期テストも終わり、『有給休暇の消化か』と噂する男子部員達へ、
「先生は虫垂炎で一週間の入院らしいです」
顧問からの伝言を女子マネは男性教師に同情するでもなく、その言葉どうり冷静に伝える。
虫垂炎って盲腸のだよな、一週間の入院中は女子バスケ部の女性教師が担当するらしいが、どう見てもバスケの経験が無さそうな若い小柄な女教師を見て、これは自主練習だなと内心思った。
その日の放課後、女子マネの参加しない体育館に集合した男子バスケ部員へ、
「バスケ経験の無い私じゃ指導は無理です、各自に課題を持って練習してください」
想像通りの言葉に納得する男子達、これを聞いた女子バスケ部のキャプテン、
「男子バスケ部と試合をさせてください」
男女バスケ部の体格差と公式戦での成績も大きく、無茶無理と断りたいが松下と篠田の二人とは過去に一度だけエッチした僕は無言のままで、モデル体型の清水にはエッチの約束をさせられていた後ろめたさも有る。
ゾーンディフェンスが禁止されている中学バスケで、無理なマッチメイクに誰が考えても試合の形に成らないが、男子バスケのキャプテン
「面白そうだよ、男子はジャンプしないとか制限を付けてゲームをしよう」
橋本の彼女、
女子は公式戦のスターター五人、男子は二年の控えベンチメンバー五人でゲーム開始。
三人の審判は一年の男子が担当してホイッスルを吹く、ジャンプボールの無いスタートは女子チームからボールを回して攻撃する。
|中学の女子バスケは非力も有って両手でシュートする、そしてこれが見事にリングへ入ると『あの打ちかたでゴールリングまで届くのか』と感心する。
ものの数分で男子と女子の得点差が開き、ゲームに参加したベンチメンバーも一年生男子に交代から、男子チームはリングに入ると2得点、女子チームは3点、スリーポイントシュートを女子は5点、
小学生時代から友人も多く社交的な
全くゲームに参加しない僕達スターターは、コンビニの肉マン・ゲットを賭けて隣のコートで3ポイント競争に熱中した。
コンビニ肉マン争奪盃は
男子対女子のバスケに見飽きた頃、
元々は地味な槇女から可愛くなったと評判の数人へ声を掛けて六人が参加可能と返事を貰い、男子はバスケ部の五人に橋本と付き合いの長い野球部の田中が混じるらしい。
男子は一人当たり参加費300円、そして500円予算で参加する女子へのクリスマスプレゼントを選び贈る。
午後二時から始めて、借りられる公民館の都合で五時に閉会予定、その三時間にfゲームで盛り上がり、女子参加者へプレゼント抽選会からフリートークを予定していると、
根拠の無い自信に僕は不安しかない・・・
クリパに参加する男子も女子も他言無用の支持する
「
「槇女との懇親会に主催者の
いつから僕がクリパの主催者なんだよ・・・
それから数日、僕は浅い知識でクリパ女子へプレゼントを考えた。
500円で買える中学女子が喜ぶプレゼントは何だろう・・・
冬に重宝する乾燥対策のハンドクリームは使い勝手に好みが有るだろうし、普通のハンカチを貰っても嬉しくないよな、いっその事クリスマスらしいプレゼントで考えようと自宅の有る円城寺商店街より大きなショッピングモールのエーオンを散策した。
クリスマスといえば赤色と緑色の組み合わせのイベント、それをイメージしてプレゼントを購入した。
何かは当日までのお楽しみだが、受け取った女子が喜んでくれると良いな・・・
橋本の指示でクリパに参加する男子六人は午後一時に会場に集合し、公民館の1階には半原小学校自治会の事務室が有り、円城寺商店街の『岩田豆腐店』ご隠居が自治会長を務める。
70歳を過ぎたご隠居は若い頃から好きなAちゃんの容姿を真似て、薄くなった髪でリーゼントを決めている。自分の代で廃業を予定していたが、東京で技術職だった息子がリターンから家業の豆腐店を継いだ、しかし大学で醗酵学と大豆イソフラボンを研究した跡取りの息子さんは大豆で納豆を開発販売、さらに豆乳プリンや廃棄されるオカラでクッキーを販売し始めた。
「なあ、裕人、プリンやクッキーって、どう思う?」
僕を小さい頃を知る岩田さんは若い人の考えを僕に訊くけど、甘いお菓子やプリンを好まない僕は、
「揚げたての厚揚げにおろし生姜と醤油を掛けて食べるのが好きです」
お世辞じゃないが小鉢に生姜醤油を持参して、豆腐屋の店先で食した記憶を忘れてない。
「今日はお世話に成ります」
「おぉ、市会議員の安倍さんから聞いている、あまり騒ぐなよ」
安倍さんと呼ぶのは公民館を借りられる橋本の母方祖父だと思う。
男子六人が公民館の二階の畳敷きの和室に座布団を敷く頃に、
未成年用のノンアルドリンク、チキンとピザ、フライドポテトとローストビーフ、昼食後の午後2時に食べきれない品数を見て、溺愛する孫からの頼みに張り切ったのだろう。
大人の礼儀として、内田屋の会長は自治会事務室に居る御年配の方々へ、
「孫達がお世話に成るほんの気持ちですから」
クリパ開催の午後二時、参加する女子は二人連れ添って計6人が公民館へ集合した。
橋本が企画した槇女とクリパ、『あまり騒ぐなよ』と自治会長から釘を刺されたが、若い男子中学生と女子中学生がクリパで盛り上がれば、どうなる事やら誰も分からない・・・
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