第42話 冬支度の防寒。
12月の12日から15日までの定期テストも終わり、翌週の月曜日にテスト結果を知らされて部活動禁止の30点以下も無く、年内は公式行事が無い日々、制服の衣替えみたいなこの日からと決められてない冬の防寒着を使用できる。
マフラーはOKでも手袋は禁止、女子にストッキングはOKなのに防寒タイツは禁止、女子がスカートの下にジャージ着用は黙認されている。
近年は性の多様化とかで女子生徒が男子の制服ズボンを履く事も珍しくないが、上半身はセーラー服に下はズボン、その姿は海軍の水兵さんみたいで男子の僕が見ても羨ましい。
昭和から続く謎の校則に令和の今は違和感しかないが、それに逆らって違反する気も無いが、ポケットに手を入れて歩く姿は猫背で見た目も悪いし、もし転んだ時には素手を傷つけるだろう。
冷え性の女子は先生の許可を得て使い捨てカイロを愛用するなか、校則に記載されてない盲点を突いた男子生徒は揮発燃料に着火するタイプの古風なカイロで暖を取る。
食欲旺盛な僕の平熱は36,8℃前後と人より高く、学生服の中にジャージを重ね着など防寒対策を必要としない。
そんな冬の朝、午前七時から八時過ぎの登校時間帯は未だ気温も低く、登校して教室に入る生徒はストーブの前で暖を取る。
「裕人君、おはよう、あ~寒い寒い、手を貸してよ」
体温が高いと知る
「僕は
「言いたい人には言わせて置けば善いのよ、あ~裕人君の手は暖かいわ~」
一応だけど僕と
「
「そんなの当たり前でしょ、他の女子に裕人君の手を奪われたら。嫉妬する私の怒りで炎上するわよ」
それは随分と温かそうだな、逆に僕も暖めて貰いたいものだ・・・なんて口が裂けても言えない。
◇
朝から雪が舞う寒い日、槇原製パンの開店準備で家を出る母から、
「裕人、今日は雪が降るみたいだから、このインナータイツを着ていきなさい」
きっとテレビCMで知ったのだろう、母が用意した吸湿発熱性のタイツは、繊維が水分を吸収することで発熱する機能だと理解しているが、平熱の高い僕は一度も欲しいと思わなかった。
「要らないよ」
「息子を思う母の気持ちを否定するの?」
半強制的に渡された吸湿発熱タイツを履き、その上に制服ズボンを履いて登校したが、バスケ部の朝練で着替える時に脱ぎ、始業前に再度タイツを着用した。
一時間目の前は
汗の湿りで機能性タイツが発熱を開始すると、僕の上半身にも汗が出てきて、自分で分かるほど額から耳まで顔全体が火照ってきた。
我慢と苦痛の45分を耐えて、授業終了のチャイムと同時に廊下へ飛び出し、一番近いトイレ前の洗面台で顔を洗い、人目も
その一部始終を目撃した
「槇原君、顔が真っ赤だよ、それに水道水は冷たいでしょ?」
「うん、寒い暑いは個人差だから気にしないで」
雪が降る寒い日に暑いと言って冷水を飲む僕は変人に見えるだろう・・・
そして槇女内での情報共有から拡散しても否定出来ない。
教室の窓から見える校庭は真っ白の雪景色、休み時間の女子達は『白くて綺麗だけど寒いよね、雪の日は嫌だな』と言うが僕は雪景色が嫌いじゃない。
犬は喜び庭駆け回り♪~猫はコタツで丸くなる♪~を思い出して、僕は猫タイプより犬タイプだなと自虐する、え、自虐なのか?そこは自負するだろ。
師走だけに顧問の先生も忙しい年末は他校と練習試合も無く、週末の土曜に予定された『クリパ』が近づく、
平静を装う僕へ、
「裕人君、ショッピングモールのクリスマス・イルミネーションを見に行かない?」
毎朝のルーティンで僕の手で暖を取る
「うん、まだ予定は無いけど、直ぐには返事出来ないよ」
「そう、残念ね、裕人君、私の何か隠してない?」
「なにも隠してないよ」
「怪しいなぁ~なにか匂うよ」
「え、それって嗅覚の匂い?」
五感の嗅覚なら人に負けない自信の有る僕だが、
「匂いって言っても、これは女の勘よ」
脳の構造からか、男性より女性の方が疑い深いと思う。
週末の『クリパ』ではその場の雰囲気に流されず、用心すると決めた・・・
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