第41話 師走は多忙。
先月末に新調したバッシュが快適で僕の能力がアップしたと錯覚させる。
昔の暦で言う十二月は師走、十二日の月曜日から始まる定期テスト一週間前の月曜日から朝と放課後の部活停止期間に入る。
二学期制の後期中間テストか、三学期制の二学期末テストなのかと考えるより、
最初に渡された受験用テキストを何度も繰り返し学び、一目見ただけで解答を導き出せる様になった自信もある。
ところが
「はい、裕人君、今回からはこのテキストで学びましょうね」
「これ何です、難し過ぎませんか?」
「有名私立高校の過去入試問題集よ、都会の私立は一流大学への進学率が高いし、学費免除の特待生を決める難問揃いだからね」
僕が受験するのは地元の公立高校だよ、東京のK成高校や、兵庫のN高校、鹿児島のRサール高校の過去問には縁が無いでしょう、きっと僕がそんな顔を
「一度でも経験しておけば、難問に遭遇しても慌ててパニックに成らないでしょ」
難関高校の過去問で僕の経験値を上げると言う
十二月の師走は両親が営むパン屋も忙しく、僕が小学生だった二年前の年末は自分の部屋だけ大掃除していたが、昨年末に母から、
「裕人も中学生に成ったから家に手伝いをしなさい」
二十九日まで営業する槇原製パン店、三十日と三十一日は無事に一年間働いた工房のパンを焼くオーブンとパン生地の醗酵用保温機、パン生地を捏ねるミキサーを専門業者を呼んでメンテナンスの父、十二月が決算の事務処理する母、そんな忙しい両親の代わりに年末の大掃除を僕へ全て任された。
平素から綺麗にしているリビングでもキッチンの換気扇とコンロ周り、スプレータイプのカビ取りスプレーで浴室全部を除菌、一階と二階のトイレの掃除も僕の役目と成った。
十二月の二十九日三十日三十一日の三日間、毎日7時間を掛けて、家の大掃除を終わらせる。
大掃除の労働対価として、元日に父母からお年玉で1万円を頂ける。
小学生の頃は家の為に働かなくてお年玉は一ヶ月の小遣いと同額の三千円、それに比べると時給は五百円と低いが、当時十三歳の僕に取って一万円は大金で有り難く受け取った。
今年も昨年と同じ様な年末を過ごすと想像していた。
四日間の定期テストが終わり、十日ぶりの部活でバッシュを履いた僕へ、
「
男子バスケ部の部長で幼馴染の悪友、
中学生がクリパって、何処で何をするのか、カラオケとかレンタルルームを使用すれば、それなりにお金が必要だし、パーティー用の飲食代は???
「条件を聞かないと僕は参加出来ない」
「悪い悪い、そうだよなマッキー、今から説明するよ」
ハッシーの説明だと、会場は地元で開かれる小学校横に建つ公民館の会議室を『出身小学校のクリスマス同窓会』の名目で借りるが、市会議員の祖父が許可を取ってくれた。
バスケ部のSG
参加する男子は一人当たり五百円のプレゼントを準備して、クリパに招待した女子を持て成す。と計画している。
男子だけのクリパなら付き合いで参加しても良いと思うが、女子が来るならそのクリパは合コンだろ。
「合コンのクリパなら行かないよ」
「イヤ、待て待て、
確かに『槇女』のメンバーは
しかし益々持って理解不明な提案をする橋本へ、
「男子バスケがメインなら、女子マネの
「だから、吉田さんと天野さんには声を掛けないから、な、マッキー、俺の気持ちを分かってくれよ」
交際している彼女に隠れて別の女子と合コンしたいが、橋本の本心なんだろう。
「それなら近藤さんと沖田さんに声を掛けるけど、僕は不参加で善いだろ」
「
小学校入学から八年、腐れ縁の
そこで閃いた僕は、
「ハッシー、女子はクリスマスに何を貰ったら喜ぶかな?」
クリパ参加の女子でなく、いつも僕がお世話に成っている
「そうだな、
いつも明るくてお調子者の
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