第21話 その顔どうしたの②.
先を急ぐ為に展開を進めます
◇
二時間目から授業を受けた休み時間の僕を見て、よりも顔に張られた傷バンを二度見するクラスメイト。
土日の二日間、顔を合わせてない
「裕人君、その顔どうしたの?」
母と主治医にも同じ事を言われた。
「転んで怪我した」
定型分の様に答える。
「見ているだけで痛そうね」
痛いと言っても痛みが治まるはずが無い、それが痩せ我慢でも痛いとは言わない。
「そうでも無いよ、そうだ、僕の傷が治るまでサヤカの家に行くのは遠慮するよ」
「え~なんで?ママも寂しいと思うよ」
サヤカとエミリさんに後ろめたくないとは言わないが、自由な時間が欲しかった。
「昨日、裕人君の家にお邪魔したわ」
「うん、お店を手伝ってくれたって、
「初めての接客が楽しかったわ、ねえ、裕人君のお母さんって、北条政子の女優に似ているね?お父さんは
確かに丸顔の母は170cm近い身長で、接客でワハハと笑う陽気な女性、無口な父は190cmの筋肉系強面のパン職人、それでも二人が大河ドラマの俳優に似ていると僕は思わなかった。
「サヤカが思うなら、そうかもね」
「裕人君、顔が痛くて笑えないの?」
サヤカの言うとおり、かもしれない、兎に角ほっといて欲しい僕は、
「そうだな、出来るだけ安静にしているよ」
次の休み時間に隣のクラスから
「
「転んで怪我した」
何回目かの同じ質問に答えるが完全に飽きていた。
「鼻と頬の傷バンでグレードアップして、
「
整形外科受診で朝練を休んだ理由を顧問に報告が必要かと思い訊いた。
「一応、
昼休みの職員室で顧問は、
「槇原、その顔どうした?」
繰り返す同じ質問に僕は別の答えを考えて、
「見てのとおり打撲で診察を受けて、朝練を休みました」
僕の報告を聞いた顧問は、
「昨日の試合は無理させたからな、いつもみたいに診断書と領収書を出して」
僕の怪我はバスケじゃないと言う前に、顧問は後日に治療費が支給される校内行事の負傷届けで処理した。
午後の授業が終わり、顔と左肩の痛い僕は部活に行くか休むか迷っていた所に、女子マネ手伝いの小松リンこと、小柄なコリンが来て、
「マッキー、その顔どうしたの?」
「転んで怪我した」
これで同じ質問が何度目だよと思いながら、同じ言葉を返した。
「痛そうね、それより、これを見てよ」
コリンはスマホから僕へ見せる再生動画で、
「この不審者に体当たりしているのって、マッキーじゃないの?」
昨晩の
「僕じゃない、きっと善く似た別人だよ」
「え~マッキーだと思ったのに、もし私が変態に襲われたら守ってよね」
話が面倒な事に成る前に、
「分かった、コリンのピンチを見たら守るけど、他の人へ絶対に言わないでよ」
「やったぁ~」
適当な返事に満足したコリンは放課後の帰宅か、部活で教室から出て行った。
その一部始終を見ていた女子バスケ部の
「その顔どうしたの」
何度も同じ質問は僕への嫌がらせに感じる。
「転んで怪我しました、本当だよ」
「
え、僕と
「エ、本当に僕だったの?」
「一緒に居た女性は分からなかったけど、身体の大きさとバスケのジャージでマッキーだと分かった」
相手が
「今日はバスケ部の練習を休むから、二人で話そうか?」
土曜の公園デートみたいに説得しようとした僕の考えは甘かった。
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