第15話 女子のリクエスト②プラス。

焼肉バイキングで食事した僕は篠田ゆみさんに誘われて『恋人の聖地』と噂されるデートスポットの中島なかしま公園に来た。


昼間の元気なセミは鳴き止む夕暮れの中島公園は秋の虫達が合唱を聞かせる。

犬の離し飼い禁止の芝生広場を囲む環状歩道の日暮れまでは趣味ランナーも多い、とばりが下りる頃のベンチでは恋人達が愛を囁くラブシート。


水銀灯に照らされる明るいベンチより、少し暗い場所を好んでカップルが座る。

僕と篠田さんが到着した時に人気のベンチは先客が居て、空いている明るいベンチに座った。

篠田しのださん、本当にこの公園で良いの?」

お金が無い高校生カップルが多いエッチな噂を聞くラブスポットを確認した。


「うん、お話だけの積りだから心配しないで、大丈夫よマッキー」

食事の後に会話するだけなら明るい所の方が良いよな、でも篠田さんが言う大丈夫とは何だろう。

その篠田さんは手にハンカチを握って手汗を拭くのか、一度だけ大きく息を吸って、

「最初にマッキーへ謝ることが有るの、嘘吐うそついてゴメンね」

「え、篠田さんは僕に何を謝るの?」

フ~と篠田さんは息は吐いてから、


「私が焼肉バイキングに行きたいのが嘘なの、マッキーの爆食が見たいと言うか、う~ん、言いたい事がたくさん有って、話の順番が少し違うけど、マッキーは学年の女子からどんな風に思われているのか知っている?」


女子からの見た僕のイメージなら自覚している、

「僕は身体からだが大きくて、見た目が怖い男子でしょ」

「そうだけど、それは女子の八割で残りの女子二割は『大きなマッキーは強くて、悪い人から私を守ってくれそう』って、特に非力な小柄女子に人気が有るよ」


それって僕が二割の女子にモテていると言うのか、一度も告白された経験が無い。

「そんなの聞いたこと無いし、誰からも告白されてないよ」

「だから、地味系小柄女子は自分から告白できるほど、容姿に自信が無いのよ」

1学年6クラス240人の半数が女子で、120人の2割なら24人の女子が僕に好意を持つと言うのか、


「信じられない、もう騙されないよ」

「最初に謝ってから私に嘘は無い、だって私はマッキーが好きなの」

僕に好意を持つ小柄女子って、篠田さん自身も含まれるのか、でもなんで?

きっとそれが顔に出ていたのだろう、僕の意を汲み取った篠田さんは、


天野さやかさんの事を宜しくて頼んだよね、私は美術や音楽の文化系クラブに友人が多く、清水あきちゃんは陸上とテニス、野球部とサッカー部に顔が効いて、松下えみちゃんは元気系の帰宅部の男女へ伝えた後に、私たちは天野さやかさんから槇原マッキーは『バスケに集中したい』と級友を気遣い、二人は交際してない事にするって聞いた」


そうか、女子グループの繋がりから、僕とサヤカの情報交換されていると知るが、

「じゃぁ、あのバイキングで食事の意味は?」

「あれは、大食いの彼氏を応援しながら食事デートしたい、私の妄想を実現したいから、それに男女で焼肉って特別の関係って言うでしょ」


篠田さんが言う特別な関係って大人の男女なのか、そこまで奥が深い女性心理に『色気より食い気』の僕は恥かしく思う。


「色々気付かなくてゴメン」

「ううん、マッキーに私の気持ちを知られない様にしてたけど、今日、清水アキちゃんを見て私の気が変わったの、ねえ同じ様に今直ぐにハグして」


清水アキさんに『壁ドン』と『顎クイ』『お姫様抱っこ』をしたがハグはしてないと思う。

公園のベンチで横に座る小柄な篠田ユミさんを見て、僕がハグするには身長が低いと思う。


「私の背は144cm、180cm越えのマッキーと立ってハグは無理だから膝の上に座らせて」

え、僕の膝に座るって?僕の返事より先に小柄女子が座り、両手を僕の身体に回す。

「夜風が寒いけどマッキーの身体が暖かい、耳を当てると心臓の音が聞こえる」

秋分の日も過ぎて数日、朝夕の涼しさは僕には心地良いが、女子の篠田さんは寒く感じるらしい。


僕の膝に座っても小柄な篠田さんと視線が合わない代わりに、その髪から甘い香りが僕の嗅覚をくすぐる。


「ねえ、私と清水アキちゃんは違うかな?」

「うん、清水さんは石鹸の匂いがして、篠田さんは好い匂いだけど分からない」


「違うって、マッキーの膝に座った私が重くないかなって、心配しているの」

「そうか、篠田さんは重くないよ、僕は女子の体重を知りたいと思わないし、それより匂いの方が気になるかな」


「マッキーに重いと思われたら嫌だなって心配したけど安心したわ、たくさん食べて匂いが気に成るって、マッキーは大型犬みたい」

犬みたいと言われても、猫より犬が好きな僕に不満は無いが、公園の茂みから『リンリンリン』と聞こえる虫の音から、女性の『アンアンアン』に変わっていると気付いた。


「あの声は何だろう?」

「気にしなくて善いよ、それよりお姫様抱っこした清水アキちゃんとキスしたでしょ、私もして」


「イヤイヤ、アレは頬にチューだからキスじゃない」

「じゃぁ私がマッキーの頬にキスするから動かないで」

僕の膝と言うより太股の上に座られて、逃げられないポジションから両手で顔を押さえられた僕の唇に篠田さんは唇を重ねた。


人生初、女性のキスは想像以上に柔らかく、反発するより吸い付く様なしっとり湿潤を感じた。


「え・・・唇に接吻って」

「マッキーに私のファーストキスを捧げて、私の心臓がドキドキしている、触ってみて」

僕を手を取り、篠田さんは自分の左胸に当てる。

服の上から小さいけど柔らかいバストに、僕の心臓もドキドキする。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る