第13話 女子のリクエスト①。
近隣三中学バスケ部との練習試合は、ベンチの控えメンバーと下級生で3連勝した。
午後三時で試合を終えた三中学の送迎車を見送り、気温に近い温水シャワーを浴びて、灰原中学のバスケ部員で体育館の床掃除と戸締りで解散に成った。
相思相愛と言うのか、キャプテンの
◇
「マッキー、3試合とも活躍して、お疲れ様ね」
驚いて後を振り返るそこには、女子バスケ部のキャプテン松下エミさんと篠田ユミさん、清水アキさんの三人が揃っている。
「練習試合を見てたの、県大会出場は駄目だったけど、女子はどうだった?」
興味は無いが社交辞令的に女子チームの成績を訊くが
「一回戦は勝利したけど二回戦で敗退、私たちは課題満載よ、ねぇマッキーは私達に天野さんの無事を頼んだよね、世の中ギブアンドテイク、お礼をリクエストさせてよ」
男女とも人気の三人から『元モデルの
リクエストされて少し不安を感じるが、些細な事でも借りを残すのは宜しくない。
「僕が何をすれば良いの?」
女子三人で一番背の高い清水アキさんへリーダーの松下エミさんは、
「
高身長な清水さんの背中を押した。
花に例えるなら『黄色いヒマワリ』みたいな、推定身長170cm越えの清水さんは、元モデルのサヤカが望むような小顔で手足が長く、スリムなモデル体型でも気が小さいのか、モジモジ
「マッキー、私は高身長がコンプレックスで色々な恋愛モードに憧れるけど・・・」
「だから、何がしたいの?」
少し意地悪な訊き方をしたが、それを見ている松下さんと篠田さんはなにも言わない。
「凄く恥かしいけど、背が高いマッキーで私に『壁ドン』『顎クイ』を写真に撮って」
壁ドンと顎クイを聞いても、それを見たことも無いが、
「どうするのか説明してくれれば善いけど、写真をネットに上げないって約束して」
「有難うマッキー、こうしてそうして、
清水さんは松下さんへ自分の携帯を渡して、壁に背中を当てたポーズから、僕へ視線で始まりのサインを送る。
「こんなのか?」
清水さんの顔の横に『ドン』と手を突いて静止すると、携帯から連射音が聞こえて、
「次のポーズは顎クイよ」
説明とおり清水さんの顎を僕は指先で摘み、クイっと持ち上げた。
「マッキー、アキに顔を近づけて今にもキスしそうな距離で」
素人カメラマンの松下さんからの指示で、清水の顔をアップで見た、と同時に女の子らしい石鹸の匂いにドキドキした。
「マッキー、顔を赤くして本当の恋人みたいね、はい、次がメインよ」
壁ドンと顎クイだけじゃないのか、松下さんが言うメインって何だよ。
「もう、アキ、自分で言えないのね、マッキー、アキを『お姫様抱っこ』しなさい」
お姫様抱っこってなに?少女マンガや恋愛ドラマを見ない僕に取って『謎のワード』ですと叫びたい。
体が固まり何も出来ない僕へ、松下さんは両手で赤ちゃんを抱えるジェスチャーを見せて、
「結婚式で新郎が新婦を両手で抱っこする記念写真が『お姫様抱っこ』よ」
なるほど、それなら分かりやすいと清水さんの顔を見る僕へ、
「マッキー、私、重かったらゴメンね」
重いとは体重の事か、パン職人の父を手伝い25kgの小麦粉を三袋を一度に持ち運んだ記憶から、
「小麦粉の75Kgなら持てたから、きっと大丈夫だよ」
「幾ら何でも、私、そんなに重くないって」
ちょっと怒ったように清水さんが言う、きっと僕は失礼を言ってしまったのだろう。
「ゴメン、手が滑って落としたら危ないから、僕の首に両手を回して」
僕の右手で清水さんの左腋から右腋へ、左手で膝下を持ち上げる、清水さんは両手で僕の首に手を回して『お姫様抱っこ』のポーズを決める。
木綿の布団はズッシリ重いが、羽毛布団はフンワリ見た目より軽い、それに近いと、
「清水さんは思ったより軽いよ、背が高くても筋肉が少ないのかな?」
僕の何気ない一言でも、清水さんの気に触ったのか、
「マッキー、何度も失礼よ、エイ、キスしっちゃったウフフ」
両手で抱っこした僕の首に手を回した清水さんは顔を近づけ、僕の右頬に唇でキスして報復したらしいが、唇と唇の接吻しかキスと思わない僕は平気に、
「ほっぺにキスって子供っぽいな、それ位で僕は気にしないけど」
壁ドンからお姫様抱っこのスマホ撮影で、清水さんのリクエストは終了した。
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