第9話 緊張の新人戦。
***バスケットボールに興味の無い方、ルールの知らない方を退屈させない様に簡略して試合を進めますので、中学高校で競技バスケを経験した方には物足りないと思いますが、最低限のルールは説明します。***
土曜の朝、昨夜はサヤカの匂い付きハンカチをオカズに3回抜き、不安な深夜の成長痛も無く熟睡した僕は心身ともに絶好調の朝を迎えた。
試合日の朝食はパン職人の父が焼くバタール<短いフランスパン>一本のフレンチトーストとコーンスープ、タラコスパゲッティを完食して家を出る。
サブバッグの一番底にサヤカの毛を挟んだガーゼハンカチを忍ばせた。
公式戦当日は一度学校の体育館前に集合して、新人戦会場の西部体育館へ送迎して貰う父母へ、キャプテン
Aブロックの30校が西部体育館へ15校、南部体育館へ15校に分かれて、朝九時から一回戦を開始して、初戦敗退校は帰り勝利した中学は、シード校が登場する午後の二回戦まで昼食を摂りながら時間まで待機する。
バスケコート二面の体育館で、第一試合の2Qと3Qの
心神とも絶好調の僕は体が軽く高揚するのは武者震いか、緊張から脳内物質のドーパミン、エンドルフィンでテンションが上がっているのか、いつもより手汗が多い。
野球のプレイボール、サッカーでキックオフの様に、バスケットボールはそれぞれのチームから一人が出て、センターサークルでジャンプボールから試合が開始する。
相手のスタメン高身長が一人を見たコーチは僕をフォワードで、僕と同じ身長の
ただし
主審が真っ直ぐに上げるボールが最高点から落下しはじめてボールへジャンプ、タップして味方の選手へ落とす。
いつもより体が軽く感じる僕はジャンプボールを勝ち取り、
ボールキープが得意なハッシーとウッチーで攻め上がり先制点のゴールを決めた。
その後は一進一退の得点で試合は進むが、地に足がついてない僕は味方のパスからシュートするが相手に止められる。
それでも相手のディフェンスファールで、フリースローチャンスを二本とも外した。
その後もフリースローを4本連続で外す僕へコーチは、1Q2Qのインターバルで、
「
「調子善いですが、緊張から気持ちが空回りしているみたいで」
「2Qはベンチで頭を冷やせ」
控えの
1
「
コーチから『行けるか』と訊かれたら反射的に『行けます』と答え、
僅かの時間で頭を冷やした僕は、ゴール下のリバウンドから
今日の試合で6本のフリースローを落としている僕に、対戦チームから『あいつのフリースローは絶対入らない』の視線を受ける。
フリースローが入ると思わない僕へ
「
応援に、いつもなら『任せてくれ』と思えるが、手汗でボールが落ち着かない。
審判からボールを渡されてからフリースローで時計を止めていた試合が開始する、その瞬間に、父母が応援する体育館の二階観客席から、
「裕人君、頑張って~、裕人君、頑張って~」
僕の知らない美しい女性が連呼する、同時に選手の父母について来たの姉妹から、
「あれはサヤカちゃん、モデルの天野サヤカちゃんだよ、休業中に何で居るの」
お洒落な女子小学生には休業中の天野サヤカは、今もカリスマ的存在でサインを求める子供がサヤカを取り囲んでいく。
あれがメイクしたサヤカなのか、不思議な思いが僕の緊張を解いた。
「ワンスロー」
審判の声に応えて、この日初めてフリースローを決めた僕へ、女子マネの吉田さんは一つ頷いたアイコンタクトで『天野さんは私に任せて』を受け取った。
マネ助手の小松さんも続いてベンチを離れた。
主審のホイッスルが鳴り2Q の終了からハーフタイムに入り、吉田さんに灰原中学のジャージを着せられて、マスクとキャップで変装したサヤカは、
「裕人君、静かに隠れて応援する積りが、ピンチの連続で声が出ちゃった」
チームメイトと顧問のコーチに申し訳ない僕は頭を下げて、
「試合ともども御迷惑を掛けて申し訳ないです」
僕の謝罪にサヤカも続いて、
「先生、私は悪気の無い子です、ゴメンなさい」
ペコリ頭を下げてニコリと微笑む。
「まあ善いだろう、
コーチは目尻を下げてサヤカの騒動を不問として、キャプテンに同意を求めた。
「天野さんの応援でこの試合が勝てたら、勝利の女神です、なぁ
ユニフォームを着てないバスケ部員も笑って、後半の3Q、4Qに挑んむ。
「マッキー、私に貸しが一つね」
二階席で女子ファンに取り囲まれた、元人気モデルのサヤカを確保した女子マネの吉田さんが一方的に意味深で僕へ言う。
その後の3Qで相手チームに全力の僕達は15点差を付けて、サブメンバーへ五人ともフル交代から20点差に広げて、一年生を含む控えメンバー全員が公式新人戦を経験して一回戦勝利で飾った。
「マッキー、本当に天野さんは勝利の女神だな」
「橋本君、恥かしいわ」
満更でも無い顔を見せるが、なぜか悔しい僕は、
「そちらの綺麗なメイクの女性は、どちら様ですか?」
地雷を踏むと思うが、サヤカを知らない人と言った。
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