第367話
うーん、とりあえず、状況がゴチャついてるので整理しよう。
現在の状況としては、
・ロキ・レプリカを封じてるものの、脱出されると厄介
・ファニル、阿行、吽形の自称正義のPKKパーティーが暴走してる
・風魔くんがPK狩りでファニルと戦闘中
・シン・サイコパス美がムツにゃんをPKしようとしてる
の四本立てかな?
中でも、一番優先して対処してかないといけないのは……。
ロキ・レプリカかな?
というか、多分、それは私にしかできないことだろうし……。
後は、心情的にはムツにゃんの助けに入りたいけど……。
なんか会話を聞く限りだと、ムツにゃんとシン・サイコパス美の間には、なにやら因縁がある様子。
なので、割り込み辛いというかなんというか……。
けど、実際、あそこは放っておいたら、色々と被害が出そうな気がするんだよね。
他は、ファニルと風魔くんの勝負の行方も気になるところだけど……。
風魔くんの立ち位置がわからないのが、ちょっと不安材料かな?
というか、風魔くんも、私のことを運営を殺したPKだと考えてるのなら、ファニルを倒した後で襲ってくるかもしれない。
うーん、なかなか状況が混沌としてる。
とりあえず、まずはできることからコツコツと始めよう。
というわけで、折角捕まえたロキ・レプリカを徐々に【吸収】していく。
【吸収】することで、【トリックオアトリート(偽)】(?)が取得できたらいいかなーと思って始めてみたんだけど……。
これ、なかなか時間がかかるんだよねー。
なので、その間に周囲の様子も観察しておこう。
「うわー、おねーちゃーんー」
…………。
まぁ、ダイコンな愛花ちゃんは置いといて、と……。
そうだねぇ。やっぱり気になるのは――。
■□■
【如月ムツミ視点】
「あなたが私の仲間を……! 絶対に許さない……!」
初動も見せない、私にできる最速の一撃。
膝立ちから、抜刀術のように剣を振るう。
だけど――、
「絶許の攻撃がその程度なんですかぁ……? そんなのじゃ、再起不能になったお友達も泣いちゃいますよぉ……? ゴホホホ……!」
私の剣は余裕で躱される。
この女、口だけじゃなく、強い……!
「クソ、【予見】でこうなるのは見えてたってのによぉ……。どうにもならねぇのは歯痒いもんだぜ……! 同僚、【ポーション】があるなら使っとけ。俺が時間を稼ぐ……!」
「ありがとう、カリカリ。けど、【ポーション】は四日目の総力戦で使い切っちゃって、もう無いんだ。……だから、痛くても我慢してやるしかない」
肩口から背中にかけてバッサリと斬られた。
剣を振った時に、引き攣るような痛みが走ったから、それのせいで彼女に攻撃を躱された……ということにしておきたい。
でも、痛みにはもう【適応】した。
次は、さっきよりも速く振れる――。
「なんなら、【黒姫】に回復してもらうか? 入団試験メンバー全員でパーティーを組んでるから、この場の全員が回復しちまうかもしれないが……」
「大丈夫。カリカリの助力は嬉しいけど、彼女だけは――」
立ち上がる。
痛みはあるけど、動けないほどじゃない。
まだやれる。
私は彼女を睨みつける。
「――私がやる」
「…………。わかった。だが、無理はするなよ、同僚」
同僚じゃなくて、元同僚なんだけどね。
そう思ったんだけど、カリカリの目が光ってる――。
その目は、未来を【予見】したってことなの?
それとも、そういう未来を【予見】した
…………。
どっちにしろ、不器用なことだと心の中で笑う。
「うへへ、やっぱりムツにゃんはカッコイイですねぇ……。カッコよくて可愛いくて……。そして、何よりも心が強い……! だからこそ、わからせたくなる……! 曇らせたくなる……! 屈服させたくなっちゃうんですよねぇ……! ゴホッ、ゴホッ……!」
「――ッ!」
辛うじて見えたのは初動だけ。
次の瞬間には、重い衝撃と共に脇腹が吹き飛ばされるような感覚。
それと同時に、私の脳裏に胴を斬り裂かれ、苦悶の表情を浮かべた卯月弥生の顔が思い浮かんだ。
「どこ見てるんですかぁ……! こっちですよぉ……! ウフフ……!」
相手を見失った私を嘲るようにして、背後から左の太腿を斬られる。
その衝撃に膝をつくと同時に、「どうして、私たちがこんな目に合わなきゃいけないの……!」と涙ぐむ水無月さつきの顔が思い浮かぶ。
「わかりますぅ……!? わかりますかぁ……!? 私、今、ムツにゃん以外の年中夢中のメンバーを襲った時の再現をしてるんですよぉ……! あの時の弥生ちゃんの顔、さっちゃんの顔と言ったら芸術的でしたよねぇ……! そして、そんな状況を完璧に再現してみせる私……! ゴホゲホッ! 年中夢中に対する愛に溢れてますよねぇ……!?」
片膝をついた私の左肩を異物が貫く感覚。
それと同時に剣を取り落とした霜月神奈の絶望的な表情が思い浮かぶ。
「くっ……」
視界の端に映るHPバーの表示は瞬く間に減少し、それと、同時に周囲の雑音が薄れていく。
死が近い――、
そう思うのと同時に、視界が驚くほどクリアになっていく光景に、
――集中してる、とも感じる。
「だから、ムツにゃんももっと痴態を曝け出して下さいよぉ……! 私の愛に……! 壊れて、おかしくなって、もっと見たことのないムツにゃんを私に見せて下さいよぉ……!」
……多分、左耳。
動かれてからじゃ間に合わない。
だから、彼女が動く前に頭を振る。
左耳の近くを暴風のような衝撃が駆け抜けてくのがわかった。
「へぇ……? 勘ですか……? 運ですか……? 流石、私のムツにゃん……! だったら、これはどうです……!?」
矢継ぎ早に繰り出される突きを転がるようにして避ける――けど、その途中で私の胴を衝撃が捉える。
「どこ行くんですかぁ……? まだ遊びましょうよぉ……?」
蹴られた。
体が衝撃に浮く。
浮遊感を感じてたのは一瞬。
その刹那で色んなことを思い出す――。
……年中夢中の始まりは、事務所の若手プロデューサーに新人アイドル四人が集められたことから始まった。
プロデューサーが言うには、歌って、踊れて、楽器も弾けて、なんでもできるようなアイドルユニットを作りたいという話だった……と思う。
その時の私たちは、いきなり無人島開拓をやらされるんじゃないかと戦々恐々としてたけど……実際にはそんなことはなかった。
レッスンは極普通だったし、元々楽器が弾ける前提で集められたメンバーだったから、演奏を練習するのもそこまで苦じゃなかった。
それこそ、「どちらかというとコレってガールズバンドだよね?」とメンバーで笑い合ってた程に余裕はあった。
――雪原を転がり、雪の冷たさで意識がはっきりとして、その場で跳ね起きる。
しっかりしろ、私……!
彼女は確かに強い。
だけど、それはフェンリルの時だって状況は同じだったはずだ。
タツの言葉を信じるなら、フェンリルのステータスは平均して400ぐらい。
それに対して、私は100前後のステータスしかない。
普通に考えるなら、その差は絶望的だ。
だけど、私は対応できていた。
動きすら見えない相手の攻撃を、気配を頼りに躱し、相手の初動の空気を感じ取って、相手よりも早く動く――。
理屈は上手く説明できないけど、私のユニークスキル【適応】は、多分そういうスキルなのだろう。
だから、相手とのステータスがいくらあろうとも、それは些細な問題でしかない。
相手を圧倒する力や、派手な見た目を得るような力じゃないのはわかってる。
それでも、何にでも抗し得る力……それが、私のユニークスキル【適応】ということなんだろう。
時間はかかるが、逆にいえば時間さえ稼げれば……必ず【適応】できる。
「これだけやられてるのに、まだ目が死んでないですねぇ……! やっぱりムツにゃんは最高です……! じゃあ、次はその目を――」
初動が見えた。
狙いは、私の右目。
だったら、こう動けば……。
「刳り貫いてあげま……え?」
ギンッ!
相手の一撃を頭を振って躱しながら、交差するようにしてカウンターの一撃を加える。
攻撃力が足りなかったからか、変な音が響いたけど、だけど私は相手の攻撃を受けずに自分の攻撃だけを相手にあてることができた。
「この……! 御行儀が悪いですよ……! ムツにゃん……! ゲホゲホゲホ……!」
鋭く繰り出される攻撃を、初動の予兆を見切ってなんとか躱す。
ギリギリだ。
ギリギリだけど、それでも躱したという事実に変わりはない。
「くっ……、なんで……! なんで当たらないんですかぁ……!?」
彼女の攻撃は確かに早いし、重い。
けど、それだけだ。
フェイントもなければ、攻撃も直線的。
彼女は自分自身のことをPKと言いながらも、多分対人戦のスキルを磨いてこなかったと思われる。
それは、格上の相手や同格の相手と大して戦ってこなかったせいだろう。
自分よりも弱い相手をステータスの暴力で簡単に制圧する――そんなPKを繰り返してきた結果、技巧を磨く必要性を感じなかったのではないだろうか?
そんな拙さが、だけど、私には追い風になる。
一方的に攻められてた展開から、攻撃を捌く展開へ――。
私は徐々に状況に【適応】していきながら、その脳裏に年中夢中のメンバーの姿を思い浮かべていた。
それは、去年の大晦日の国民的歌番組の控室での出来事だったか……。
『まさか、結成三年で紅白に出れるなんてね……』
『まさか、まさかだよね! 最初は三百人規模のライブハウスから始まったのにね! というか、私ら一応アイドルなんだけど、やってることがバンド活動なんですけど!?』
『ここまで順調にきたのは、プロデューサーの手腕が大きいんじゃない? 事務所も大々的にプッシュしてくれてたしさ?』
『…………』
『んー? ムツキ、どうかしたー?』
『今日、この大ホールで演奏できたのは気持ち良かったけど……。もう一度、あの三百人規模のライブハウスでやりたいな……』
『お、なになに? 初心忘れるべからず的な〜?』
『今なら、三年前の私たちよりも、もっと上手く演奏も演出もできそうな気がするからさ……』
『いいんじゃない? プロデューサーに掛け合ってみようよ』
『ライブハウス側は嬉しい悲鳴だろうけど、イベンターは死ぬでしょ、多分』
『年中夢中の名前を出さずにチケット売ったらいいんじゃない?』
『それは流石に爆死するんじゃないかな?』
その後、プロデューサーに相談したら、すぐに
私たちは二週間後に、凱旋ライブをする予定だったんだ。
このデスゲームに巻き込まれてさえいなければ、それは叶う夢だったんだ――。
ギン! ガン! ギギンッ!
「あたったところで、私の物防を抜けないようなら意味ないんですよぉ……! コホッ……!」
攻撃を捌くのが精一杯だったのが、ようやく安定して攻撃があてられるようになってきた。
物凄い速度で【適応】してる。
それだけ、彼女には負けたくないって気持ちが強いんだと思う。
いや、負けたくない、じゃない。
許せない――だ。
『デスゲームっていうの? それに巻き込まれちゃったみたいだけどさ、なんとか頑張ってクリアしようよ! お客さんだって、プロデューサーだって、みんな現実世界で待っててくれてるんだしさ!』
明るく、楽観的で、みんなのムードメーカーだった弥生は、この女に襲われたせいで、人を信じられなくなってしまった。
私たちにさえ、心を開いてくれなくなり、今もずっとファースの街に閉じ籠もってる状態だ。
そんな元凶を前にして、心穏やかでいられるはずがない!
「く……、おっ……? なんですか……? 攻撃が徐々に鋭くなってますかぁ……? ウフフ、いいですねぇ……! それでこそ、ムツにゃんですよぉ……! コホコホ……!」
コイツの……。
コイツのせいで……!
『ムツキ、神奈、ゴメン……。私も街の外に出られない……。体が……、街の外に出ようとすると、体が震えて……、動かないの……。全部……。全部……、二人に背負わせるような形になって、本当に……、本当にゴメン……。本当に……! う、うぅ……、うぅぅ……』
責任感の強かったしっかり者のさつきは、ファースから旅立つ私たちに、涙ながらにそう語った。
デスゲームに巻き込まれた後も、さつきは……ともすれば心が挫けそうになるのを、何度も励ましてくれた。
私たちがなんとかしよう! と、ずっと言ってくれてたのを覚えてる。
だけど、そんな彼女もPKの悪意に晒されてから笑顔が消えた――。
ガッ! ゴッ! ザシュ!
「ちょ、ちょっと……! そっちばっかり攻撃して……! ズルいじゃないですかぁ……! 私にも斬らせて下さいよぉ……! ゴホッ! そして、ムツにゃんの泣き顔を見せて下さいよぉ……!」
PKに襲われた時――神奈は
本当なら、弥生よりも、さつきよりも、神奈が一番、人が怖くなっていたはずだ。
だけど、年中夢中のみんなをデスゲームに誘う形になって……、強く責任を感じてた私を一人にはしておけなくて……、付いてきてくれて……。
かなり無理をしてくれてたと思う。
神奈は、ある日、私をおいて消えてしまった――。
だけど、そんな神奈を責めることはできない。
多分、神奈の目線からは、私が自分自身を追い込み過ぎて、自殺でもするんじゃないかと映ってただろうから……。
二人で旅をして……、限界まで付き合ってくれて……、そして、神奈はずっと言ってくれていた。
『また、現実世界に戻れたらさ。もう一度、みんなで――』
ザシュ! ザシュ! ザシュ! ザシュ! ザシュ!
「おかしいでしょう……!? 私のほうがステータス的に優れてるのに……!? なんで一方的に私だけが斬られなきゃ……!? ゴホゲホッ! オェ……ッ!」
気づいたら、私は彼女を一方的に斬りつけていた。
多分、それでも致命的なダメージはないだろう。
でも、最低保証のダメージが痛みとなって彼女に伝わる。
それを上手く使えば――、
「あ……」
剣を握る指先を狙って刃を叩きつけた結果、貞◯の手から剣が飛ぶ。
彼女が握る剣の柄と、私が振るう剣の刃に指が押し潰されれば、痛みを感じて剣を手放すと思った。
同じように、人間には痛みを感じれば、決して致命傷にはならずとも悶絶するような箇所がある。
そこを狙えば、私でも彼女を追い込むことができる。
「…………」
「ひぃっ!」
彼女が怯えたように後退りする。
なんでそんなに怯えてるんだろう?
彼女が私たちを嬲った時は、あんなにも活き活きとしてたくせに……。
立場が逆転したら、まるで被害者になったかのような表情を見せないでよ……!
「人を、嬲って、甚振って、悦んできた人間が……! 普通のプレイヤーのように、真っ当に振る舞わないで……!」
「ヒィィィ……!?」
コイツの……。
コイツたちのせいで年中夢中は……。
みんなはグチャグチャになってしまった……!
私だって……!
私だって……ずっと辛かった……。
皆をLIAに誘ったばっかりに、こんなことになって……!
ずっと苦しかった……、シンドかった……!
それでも頑張ってどうにかしようって、みんなで力を合わせてやってきたのに……。
それを彼女たちが……!
彼女たちが……!
許せない……。
絶対に許せない……!
私は彼女に剣を向ける。
ダメージは大して入らないかもしれないけど、剣で斬りつけていれば最低保証のダメージは入る。
その痛みで彼女を追い込む。
自分が犯してきた罪の重さを知るまで、延々と斬りつけてやる……!
「殺してやる……」
「ヒッ……!?」
「殺してやる……!」
本気で人を殺そうと思ったのは初めてだ。
頭の中をマグマのようなドロドロが埋め尽くして、視界が黒く濁っていく。
私の中を悪意が満たし、その意識に身を任せるようにして剣を振り上げる――。
その時、声が聞こえた気がした。
『
『出た! 弥生のノーテンキ!』
『でも、私も諦めてないから。運営の好き勝手のせいででさ? 私たちのライブが邪魔されてたまるかって話じゃん?』
『そう、みんな諦めてない。だから、ムツキ……泣かないで。みんなで一緒に現実世界に戻ってさ……もう一度、一緒にライブをやろ? あの、最初のライブハウスでさ。やり直していこ?』
…………。
――体が動かない。
こんなに憎くて、こんなに許せなくて、同情する要素なんて欠片も持ってない相手なのに……。
――殺せない。
殺したら、私はもう二度とみんなと同じステージに立てなくなる。
私はもう一度、みんなと同じステージに立って、ライブをしたいんだ……。
現実世界に戻って、迷惑をかけた人みんなに謝って、やり直したい……。
だから――、
だから、彼女を殺せない……。
「…………」
「…………。あ、アハハ……。やっぱり、ムツにゃんは優しいですねぇ……。優し過ぎますねぇ……。というか、まだ現実世界のことなんて気にしてるんですかぁ……? 私たちにこのデスゲームをクリアすることなんてできませんよ……! だから、もっと自分の欲望を、思いをさらけ出したらいいのに……! 私たちはこのデスゲームに囚われたまま、死んでいくんですから……! ゴホゲホ……!」
彼女が【収納】から、剣を取り出すのが見えた。
それに対して、私は動けない。
驚いたわけではない。
このまま彼女を傷つけても、結局、トドメが刺せないことには、どうすることもできないということに気がついたからだ。
永遠に答えの出ない問いに、どう答えたらいいのか……それが私の動きを阻害する。
「現実世界で歌えないなら……! せめて、私のために苦痛の叫びを今ここで聞かせて下さいよぉ……!」
「や、それはやめて?」
――ビタッ!
彼女が振るおうとした剣が、まるで空中で縫い留められたかのように動きを止める。
私に向けられていた凶刃は、いつの間にか私たちの間に割り込むようにして存在していたサイコパス美……いや、ヤマモトか……が造作もなく掴んでいた。
貞◯がその剣を動かそうと、力を込めるが剣は一ミリたりとも、その場から動かない。
なんていう力……。
あの貞◯の力がまるで通じてない……。
「というか、デスゲームは終わらせるよ? だから、現実世界に帰れないって、勝手に絶望して、勝手に暴走して、勝手に人様に迷惑かけるのやめてくれるかな? アレだよ。…………。えーと、多分なんとかハラスメントだよ! 良くないよ、そういうの!」
「そんなハラスメントはないですからぁ……! ケホゴホゲホ……ッ!?」
「まぁ、ちょっとシン・サイコパス美の行動は目に余るから、少し大人しくしとこうか? 【古代魔法】――【隷属の心輪】」
「サイコパス美は、あなたでしょうが!? ――うっ!?」
私の知らない、謎の魔法をヤマモトが使った瞬間に、貞◯が人目も憚らずに、その場で胸を押さえて転げ回る。
これは一体……。
「痛い!? 痛い!? 痛い!? 心臓が……! 胸が……! なんなんですか、これはぁ……!?」
「あー、神様に言う事を聞かせるための拷問用の魔法……?」
「なんてものをプレイヤーに使うんですかぁ……!?」
「いや、PKに人権なんてないかなって……」
「こ、このドグサレ外道ぉ……! どうせ、家に引き篭もってゲームばかりやって、体重二百キロを超えるデブのくせにぃ……! あぁっ!? 痛い、痛い、痛い!?」
「女の子に体重のことは言っちゃいけないぞ♪ ……あと、その拷問用魔法は私の気分次第で魔力を流して痛くできるから、なるべく私の機嫌は取っておかないとダメだからね?」
「ふ、ふざないでくださいよぉ……! 痛ぁぁぁ……っ!?」
「…………」
とりあえず、決着がついた……?
周りを見回してみたら、他の場所で展開していた戦闘も全て終わってる……。
なんだかよくわからないけど終わった……?
「本当は、女の子って歳でもないんだけどね」
私の傍までやってきた【黒姫】がそんなことを言うのを聞いてから、私はどこか安堵したように息を吐く。
それは、助かったということよりも、私以外にもちゃんと、デスゲームを終わらせると考えていた人がいたことに安堵したため息であった――。
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