第161話
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「さて、クランメンバー全員オールマイティ化計画やけど、こっちは無理やな」
私としてはガシガシとレベルを上げていけば、SPもだだ漏れになるし、それをステータスに振っていけばいいんじゃない? と思ってたんだけど、そうは問屋が卸さないらしい。
例えば、現状二週間ぐらい進化の塔に入り浸ると、レベルが100前後上がる。
だから、レベルが100上昇すると仮定して考えると、ステータスとしてはランダムで200上昇することになるわけだ。
そして、レベルアップで得られたSPは全部で200。
これを全部ステータスに突っ込んだとしても、更に400しかステータスがアップしないんだよね。
そうなるとステータス的には600の上昇しか見込めず、これを9パラメータに平均的に割り振った場合、全パラメータが66程度にしかならない。
基礎値を10ぐらいと考えると全パラメータが76とかいう貧弱なステータスになってしまう……というのが、タツさんの見解。
というわけで、オールマイティ化計画は無理だという話なんだけど……。
「結局、みんなが今伸ばしとる方向性で強くなるんが一番とちゃうか?」
「うーん……」
「なんか納得いっとらんみたいやな?」
「私が言ってたオールマイティって、攻撃、防御、回復を一人で自己完結する感じの育て方を言ってたんだよねー」
「せやから、それはステータス的に無理やって話やろ?」
「いや、自己完結型なら色々と圧縮すればできると思うよ」
「自己完結? 圧縮……?」
ちんぷんかんぷんなタツさんにもわかるように説明してみよう……。
私にも上手く説明できるかどうかはわからないけど……。
「例えば、直感と敏捷のステータスを伸ばすじゃない? すると回避に優位になるのと同時に、攻撃の手数も増えることになるわけだから、攻撃にも防御にも両方に影響を及ぼすってわけでしょ?」
「一挙両得みたいなこと言い出しよったぞ……」
だって、私が言う圧縮っていうのは、そういうことだもん。
構わず続けるよ。
「で、武器にはダメージを与えた分、自分のHPを回復する効果を付けたりすれば、攻撃と回復が両立したりするでしょ? そういうのをわんさと詰め込んでいけば、攻撃も防御も回復も一人で完結する
「それ、
「うん。私の考えだと、物理職は基本的には直感、敏捷、体力の三つだけを伸ばせばいいんじゃないかなと考えてるよ」
「それだけで自己完結型が作れるんか……? いや、待て待て。その三要素を育てるのにもSPが全然足らんわ」
「最悪、敏捷と直感だけでもいいよ。それを二つとも400くらい育てられれば、わりと何とでも戦えるようになるでしょ」
「レベル的に400まで上げれば、SP振ってそこまで上げられるかもしれへんけど……いや、何で400なん?」
「敏捷と直感は1.5倍にまでするアクセサリがあるから、それを装備すれば大体600になるでしょ? 敏捷と直感が600あれば、魔王軍四天王ともやりあえるからね」
「何と戦うことを想定してるん……?」
イコさんが確か全ステ500くらいだったと思ったんだよね。
だから、直感と敏捷がそれぐらいあれば、現役魔王軍四天王に絡まれたとしても何とかなるかなーって思ったんだけど……。
タツさんは魔王軍と揉め事を起こすことは想定してないみたい。
魔王軍四天王クラスとも戦える戦力とかなれば、運営も簡単には手出しができないかなーと思ったんだけど……。
「はっ! もしかして、運営はもっと強くなってるはずだから、目標ステータスをもっと上に設定しろと!?」
「言っとらん! 言っとらん! ……ちゅうか、レベル400自体がなかなかしんどいで?」
「現状、二週間で100ぐらい上がるんだから、八週間もあれば400になるんじゃない?」
「そんな簡単なもんやないやろ! レベルが上がれば上がるほど必要経験値は多なるし、進化の塔のモンスターも厄介なんが増えてくる! 討伐時間もかかるようになるやろし……400までいくとなったら、どんだけの時間がかかるか分からへん!」
「うーん。となると、自己完結型プランも無理ってことかー……」
「ただいま戻りましたー」
「戻った。何話してる?」
私とタツさんがお手上げーって感じで、ソファに倒れ込んだところで、ブレくんとミサキちゃんが帰ってきた。
二人には冒険者ギルドで、クランランキングの確認をしに行ってもらってたんだよね。
え? なんで、私たちが行かないのかって?
そんなのミサキちゃんに気を使ったからに決まってるでしょ。
ランキング確認にかこつけてデートのお膳立てですよ。ふっふっふ。
「おかー。一応、自己完結型のビルドをタツさんとちょっと話し合ってたトコ」
「興味ある」
「ミサキちゃん?」
「ゴッド教としては見逃せない」
やめて! 【少しだけ衆中一括】が発動しちゃう!
「まぁ、そっちは後でね」
「約束」
何故か指切りげんまんをやらされる。
まぁ、それはともかくとして。
「クランランキングはどうだった?」
「全体二位にまで上がってましたね」
「あれだけやっても二位なんか……」
「一位のメサイアがバケモノ」
ミサキちゃんたちの話を聞くと、メサイアは人族プレイヤーの中でも一番規模が大きいクランらしく、クランメンバーの数がウチとは違い過ぎるんだとか。
まぁ、それだけの人数が集まってるだけあって、絶対に負けたくないって感じで団結してるらしく、クランミッションを沢山こなす形で一位を突っ走ってるらしい。
一方の
どっちが良いかとかはわからないけど、効率良いのはウチの方かなーとは思うよ?
とはいえ、このままのペースだとなかなか追いつけそうにないのかな?
あと、追い抜かされた三位のクランとかも本気になるだろうし……浮上するのがちょっと早かったかもしれない。
「このままじゃ、メサイアに追いつくのは難しい」
「というわけで、僕ら調べてきましたよ! おいしいクランポイントの稼ぎ方!」
ブレくんが言うには、今月ラストの一週間は、ある特定のダンジョンでクランミッションをこなすとポイントが2倍になるキャンペーンがあるんだとか。
そこで、ダンジョンの深い部分にまで潜って、強いモンスターなんかを狩ることができれば、もしかしたら逆転することが可能かもしれないとのこと。
「でも、それはメサイアも同じことをするんじゃないの?」
「向こうのリーダークラスなら同じことをするかもしれないですけど、一般のクランメンバーは雑魚モンスターを狩るので精一杯だと思います。それに、こっちの殲滅速度ならポイントの取得レースになった際に、メサイアに追いつくことも可能じゃないかなと思ったんです」
「えぇんやないか? まともにやっても追いつけへんのやったら、そういう小細工せんとあかんやろ」
「じゃあ、やるという方針で進めようか。ちなみに、そのダンジョンっていうのはどのダンジョンなの?」
「いくつか候補はあるんですけど、ここから一番近いのはテンジンダンジョンですね」
進化の塔じゃないんだ。
どこにあるのか聞いてみたら、チェチェックの街のすぐ外――切り立った崖の中腹に入口があり、そこから入っていくらしい。
フィールドには出ずにチェチェックの街中から行けるみたいなんで、本当に近いみたいだね。
「毎年、チェチェックにある学園の生徒さんが期末試験とかに使うダンジョンらしいんですよ。だから、表層階のモンスターはそんなでもないんですけど、深層階は攻略も進んでなく、結構凶悪なモンスターがウロウロしてるんだってギルドの受付の人が言ってました。その深層階にキャンプを張ってモンスターを狩りまくれば、あるいは……と思っています」
「ダンジョンキャンプかー」
ファーランド王国の時の逃避行時代を思い出すね。
あの時は楽しかったのと、辛かったのと半々だったかなー?
「私の馬車が火を噴く」
ナイトメアになったミサキちゃんもやる気満々だ。
まぁ、馬車召喚をすれば、ダンジョン内にセーフティエリアを作れるから、一種の見せ場といえば見せ場なのかもしれない。
というわけで、来週一週間はテンジンダンジョンに潜るよーという通達をクランメンバーに送り、今日、明日でダンジョン攻略に必要なものを取り揃えておくようにと指示を出す。
まぁ、クランメンバーは結構自由人が多いからね。
どれだけ指示を聞いてくれるかわかんないけど。
「さぁ、ゴッド。ゴッドが考えた最強の育成方法を教えて」
「そんな話だったかなぁ……?」
ほら、ここにも自由人がいるでしょ?
まぁ、いいけどね。
隣でブレくんが首をひねる中、私は考えていた自己完結型ビルドをミサキちゃんに……そして、なんだかちょっとだけ興味がありそうだったブレくんにも教えてあげるのであった。
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