第150話

 ■□■


冒険担当クラブ・ヤマモト視点】


 ようやくクランハウスを購入できましたー!


 わー! パチパチパチ!


 クランハウスを購入するのに50万褒賞石もかかりましたー!


 …………。


 高っ!


 ちなみに、私はお金が結構あるんで「全部出そうか?」って提案したんだけど、「それだとみんなで作ったクランって感じがしない」ってリリちゃんに言われちゃって、結局全員でかき集めたんだよねー。


 まぁ、生産職である私の稼ぐスピードが早すぎて、半分ぐらい私が出すことになっちゃったんだけど……。


 もう半分はタツさんたちが頑張って、依頼クエストをこなして貯めたお金で無事買える運びとなったんで、OKでしょう!


 それにしても、お金を貯めるのはやっぱり生産職が早いよねー。


 ワールドマーケットにちょっと良い武器を流したら、あっという間に25万褒賞石が貯まっちゃったぐらいだし。


 これは、経験値的にも本体はウハウハなんじゃないかな?


 なんか帝王学仕込まれてるとか、この間の定例会で言ってたから、それどころの話じゃないのかもしれないけど……。


「じゃあ、クランの登録に行こっか」

「せやな」


 クラン発足に必要なのはクランハウスだけじゃない。


 一応、冒険者ギルド側にクラン発足の届け出を出す必要があるらしい。


 他のクランメンバーには、買ったばかりのクランハウスの部屋割りや飾り付けなんかを頼んでおいて、今回は私とタツさんがクランリーダーとサブクランリーダーという立場で冒険者ギルドに赴く。


 冒険者ギルドは街の中央……進化の塔からほど近い場所にあった。


 この建物も妙に縦に長く、ヒョロっとしていて頼りない感じがするね。押したら倒れるんじゃないかな?


「この街の建物って全部こんな感じだよね? すぐポッキリいっちゃわない?」

「思っとっても言わん方がえぇこともあるで。特にヤマちゃんが言うと怖いわ」


 それって、私が建物を押しそうってこと?


 クランマスターにまで就任したのに信用ないね!


 なお、他のクランメンバーに私がクランを束ねることを告げた時も文句は出なかったけど、懐疑的な目は向けられたよ……。


 むしろ、信用がないという信用を得てる?


 なにそれ? ナゾナゾかな?


 とりあえず、タツさんと一緒に冒険者ギルドに入る。中はお酒の香りと暴力と喧騒が渦巻く……ようなことはなかった。


 むしろ、みんなのんびりとコーヒーを楽しんでる。


 チェチェックの特産品ということもあって、この街ではコーヒーがとにかく安いらしく、そこかしこにカフェがあるのが特徴だ。


 で、その特徴は冒険者ギルドにも当てはまるらしい。


「ス○バか」

「ワイはタ○ーズの方が好きやなぁ」


 有名コーヒー店を引き合いに出しつつ、冒険者ギルドの奥に進む。


 受付は空いていた。


 というか、ここのギルドは少々特殊で、住民からの依頼というものはあまりなく、常設依頼としてモンスターの素材の納入依頼が多いらしい。


 要するに、進化の塔に登ってモンスターを倒してね、という運営の親心なんだろう。


 で、当然、依頼を行う冒険者は朝から進化の塔に潜って、夜中になってギルドにやってくるといった生活スタイルになる。


 なので、昼にも近い時間帯の冒険者ギルドはコーヒー好きが寛いでるくらいで、案外と空いているのだ。


 そんな受付のひとつに私は顔を出す。


「すみませーん。クラン登録したいんですけどー」

「はい、クランの登録ですね。では、まずはクランメンバーの名前と、クラン名をこちらの紙に記入して下さい」


 対応してくれた受付嬢さんの言葉に従って、サラサラサラ〜とクランメンバーの名前を書いていく。


 リーダーは私。


 サブリーダーがタツさん。


 で、ツナさん、ブレくん、ミサキちゃん、リリちゃんにTakeくんっと。


 1パーティーの最適人数って五人らしいから、これだと2パーティー分の登録ってことになるのかな?


 ちなみに、クランに最初に登録できる人数は8パーティーまで。つまり、四十人も登録できることになる。


 ウチのクランとしては、スッカスカな登録事情となるだろうけど、人数が多ければ多いほどクランハウスの改築も必要になってくるし、やることは沢山増えてくるんで、その辺はあまり気にしていない。


 むしろ、少数精鋭を目指したい所存!


「で、問題のクラン名やけど……やるんか?」

「やるよ! クラン名はこれだよ!」


 『クラン・せんぷく』


 私がゴリ押しして決めたクラン名です!


 実に素晴らしい!


 クラン名だけ聞いたら、なにが潜んでるかわからないところが素敵だよね!


 実際にとんでもないものが潜んでるけどね!


 邪神とか! 海神だとか! 龍だとか!


「なんかPKギルドみたいな名前で嫌やねんけど……」

「二十五万褒賞石を出してますんでー。命名権は私にありますんでー」

「くっ、金出してもろうとる以上、これ以上強う言えん!」


 勝った! 第四章・完!


 なんてやってたら、ギルドの方の処理は終わったみたい。


 こうして、私たちのクラン『クラン・せんぷく』が発足したわけだけど……。


「ところで、クランって何やるの?」

「そこからかい!」

「あ、よろしければ、ご説明致しましょうか?」

「お願いしまーす」


 というわけで、受付嬢さんに説明してもらったところによると……。


 基本的には何か特別なことをやるわけではないらしいよ?


 ただし、月間クランミッションというのが設けられていて、モンスターを○○体討伐する! C級生産物を○○個生産する! 褒賞石を○○個稼ぐ! といった目標をクリアできると、クランポイントというのが、クラン全体でたまっていくらしい。


 このクランポイントというのは、ついでにクリアしたメンバーにも個別で配布されるみたい。


 ポイントを得たメンバーは、そのポイントを使って珍しいアイテムやちょっと特殊な武器なんかをゲットできるらしいんだけど……。


 私の場合はなんでも作れちゃうからなぁ。


 それとは別に、月間のクランポイント数の合計で争うクランランキングというのもあって、これの順位が高いと、また特別なアイテムがクランメンバー全員にもらえたりするみたいだ。


 うーん。


 クランメンバーでまだ進化先が決まってないメンバーのためのお役立ちアイテムとか配ってくれないかな?


 そうすれば、少し頑張るんだけどなー。


 ちなみに、現在の我がクランで進化していないのは、三名のみ。


 ブレくん、ミサキちゃん、そしてTakeくんの三名だ。


 タツさんは姿形が変わったことから分かると思うけど、蛟竜こうりゅうという種族に進化したらしい。


 どうも、大武祭の優勝賞品に進化の素養があったようで、迷うことなく「特殊進化先一択!」といった感じで決めたらしい。


 同じように、リリちゃんにも特殊進化先の素養が配布されてたらしいのだが……その特殊な進化先を拒否。


 今は……なんというか……八咫烏やたがらすという三本足のカラスになっている。


 ちなみに、進化先の一覧には、グレムリン、サキュバス、そして大武祭優勝賞品の特殊進化先であるリリスが発生してたらしい。


 けど、なんかリリスは空が飛べないらしく、それがネックだったみたい。


 まぁ、【必中】と空中機動の黄金コンボは魔王リリ時代に経験して強いって知ってるからね。リリちゃんがあえて、空中を飛べる種族を選ぶのは分かる気もするよ。


 コグシリーズも、そんなリリちゃんの超高速機動に合わせて作らないといけないだろうしね。どういう仕様にするか、今からわくわくするよ!


 で、一方の進化先が決まらない人たちは、やはりイベントとかで好成績を残してないからなのか、なかなか気に入る進化先が現れていないみたい。


 ゾンビのブレくんは、マミー、スケルトン、グールあたりが進化先として出てるらしいけど、いまいちピンとこないらしい。


 バンシーのミサキちゃんは、セイレーン、マンドラゴラ、フェアリーナイトあたりが出てて、更にはディラハンもあるらしいんだけど、現在悩み中とのことだ。


 多分、ブレくんが焦らないように足並みを合わせてるんじゃないかな……?


 まぁ、本気でレアな進化先を狙ってるのかもしれないけど。


 Takeくんはイエティから、雪男(妖怪なのでイエティとは別らしい)とフロストベアという二種の進化先が出てるらしいんだけど、現在魔術職として伸ばしてる最中だから、もしかしたら、魔術系の進化先が現れるかもとレベルアップに励んでる最中となる。


 というわけで、この三人の進化先に新たな選択肢を生じるかもしれないクランランキングの報酬がちょっと欲しいんだけど……。


 いや、本当に進化先に影響を与えるアイテムがもらえるかどうかは知らないけどね?


 ほら、クランを作った以上、何かこう目標みたいなのは欲しいでしょ?


 というわけで、近々の目標として丁度いいかなーと思って、クランランキングの上位入りを狙ってみようと思うよ!


「クランランキングって、今確認することはできますか?」

「はい、少々お待ち下さい」


 もう3ヶ月目の一週目は終わってるから、決算まではあと三週間。


 それまでにクランポイントを集めまくれば、ワンチャンあるかも?


 まぁ、上位に食い込んだところで、進化の素養がもらえるとは限らないけど……。


 それでも、最強クランにする予定なんだから、クランランキングの上位ぐらいには名前を連ねときたい。むしろ、トップを取りたい!


 受付嬢さんが持ってきたのは、水晶でできた板みたいなものだ。


 それにすっと指を沿わすと、パッとクラン名の一覧が出てくる。


 ……液晶端末みたいなものかな?


「こちらがランキングになります」

「どれどれ……」


 現在、1位はメサイアという名前のクラン。


 これがぶっちぎりでトップを走ってる。


 そして、2位がヘパイストスという名前のクランだけど……。


 名前からして、生産特化のクランなのかな?


 それが、大分ポイント的に離されて2位につけてる。


 3位以降は団子だけど……あ、5位にSUCCEEDがあるね!


 ちょっと知った名前を見つけて嬉しい。


 で、ずーっとスクロールして、94位。


 つまり、ビリに私たちのクラン『クラン・せんぷく』がある。


 というか、あれ?


 500位ぐらいを予想してたから、思ってたより悪くない順位だ。


 というより、まだ全体のクラン数が少ないのかな?


 大武祭の時のアクティブの数って一万二千人くらいだと思ったから、それをクラン最低人数の五人で割れば、最大で2400はクランがあると考えてたからね。


 94位って順位は、私が考えてたよりもみんな大きなクランに所属したりして纏まってたりするってことなのかな?


 でも、この順位なら今から頑張れば、それなりに上位に追いつけると思いたい。


 うん、頑張るよー!

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