第140話
■□■
第二エリアのエリアボスはビッグコンドルという名前の巨大な鳥だった。
【鑑定】した結果はこんな感じ。
名前 (名無し)
種族 ビッグコンドル
性別 ♂
年齢 38歳
LV 62
HP 680/680
MP 370/370
物攻 82
魔攻 24
物防 25
魔防 22
体力 68
敏捷 76
直感 64
精神 37
運命 11
ユニークスキル (無し)
種族スキル 【飛行】
コモンスキル 【啄く】Lv6/【フェザーアタック】Lv3/【体当たり】Lv4/【衝撃波】Lv3
まぁ、特筆するほど強くないんだけど、行動のほとんどが空を飛んでいるので、空にいる敵に攻撃をあてるような技がないプレイヤーは苦戦しそうな感じかな?
リリちゃんの【必中】なんかがあれば、ほぼカモなんじゃないかなとは思うね。
うん、
で、このビッグコンドルも、私が出ることもなく、ツナさんが一瞬で片付けちゃったよ。
銛を投げつけてビッグコンドルに突き刺したかと思ったら、そのまま引きずり下ろしてダウン取って、後はそのままボッコボコ。
良い鳥肉が手に入ったとか言って、ツナさんがほくそ笑んでるのは見逃してないからね?
そんなこんなでエリアボスを瞬殺した後は、
エリアボスと戦った場所は円状の少し大きな広場だったけど、それ以外はほとんど両側が谷の一本道で、のんびりと歩いてたら十五分もしない内に第三エリア都市、チェチェックへと辿り着いたよ。
中央部にそびえ立つ巨大な塔が、多分、進化の塔だよね?
それを模した形で、街中の建物が全て五階建て、六階建てと大きいんだけど、特に建築技術が発展してるわけでもないのか、何か強風に吹かれて時折揺れてるのを見ちゃうと、「この街大丈夫か?」ってなっちゃうぐらいには不安が押し寄せてくる。
そんな建物が建つ平地部分とは違って、周囲は一歩足を踏み外せば真っ逆さまの谷で、谷には雲海なんだか霧なんだかが満ち満ちているので、なかなか神秘的な仕様になっているみたい。
まるで、雲の上に浮いているような錯覚を引き起こす都市として、チェチェックは別名、天空都市とかって呼ばれてるらしいよ。
「それじゃ、ここでお別れね。協力ありがと」
「いえいえ、また何か御縁があったら御一緒しましょう」
そんな事を言いながら、軍服ちゃんとはチェチェックの入口で別れる。あんまり一緒にいると、「分身した利点を捨てる気か!」って
「…………」
「どうかした? ツナさん?」
「何かさっきのプレイヤーとは初めて会った気がしないんだが?」
そう。
長く接触してると、こういう勘の鋭いプレイヤーに勘付かれるからね。接触は短くが基本だと思うよ。
「そう? それよりも、まずは教会に向かおうか?」
「随分、あっさり流すな。まぁいい。行こう」
というわけで、誤魔化すようにしてツナさんをチェチェックの教会へと連れて行く。
本当なら、進化の塔に挑んでからが良いんだろうけど、ツナさんのレベルは既にカンストしてるからね。
それだったら、先に進化してから進化先が気に入らない場合に進化の塔に登ったりするのが良いと思うんだよね。
その方が経験値も溢れないだろうし……。
……貧乏性かな?
いつでも進化できることよりも、どうも私は経験値が溢れ出ちゃうことを気にしちゃうタイプなんだよね。
「ちなみに、ツナさんは進化先とかもう決めてるの?」
ツナさんがフォーザインの教会で祈りを捧げてる姿を見てるから、もう進化先は把握してるとは思うんだけど……。
「あぁ、もう決めてる」
「へぇ、進化先を聞いてもいい?」
「トリトンだ」
トリトン……。
なんとなくだけど、海の王子様みたいなイメージがある。そんなアニメが昔あったような、なかったような……?
というか、ツナさんってオーガ系だよね? 頭に二本の角が生えてるし。
そっち系に進むんじゃないんだ?
でも、良く考えてみたら、ツナさんってデイダラ戦の個人成績三位だったから、神系の素養を持っていてもおかしくないんだよね。
じゃあ、進化の塔には登ることもないのかなーと思っていたら、それが態度に出てたのか……。
「進化先には関係なく、進化の塔には登るぞ。美味いものが俺たちを待ってるからな」
「さり気なく私が巻き込まれてるんだけど?」
「デイダラ戦の借りとかモロモロあるから付き合ってもバチは当たらんだろ」
「まぁ、いいけどさぁ……」
その分、飲み放題の回数は引くからね!
というわけで、ちゃちゃっと教会に向かう。
うん。建物の背が高いのと、逆十字を高々と掲げてるから、場所はすぐにわかったよ。
そして、相変わらず教会に通う人が多いね。ここも地域密着型なのかな?
ツナさんが進化の間を利用している間、暇なので私も広場で祈ってみたんだけど――。
▶神の声が聞こえます……。
いや、プラグスーツ作るって本気?
ザーヴァに乗るって……。
体の線がくっきり出るから嫌なんだけど?
ダメダメ、山羊くんでも乗せとけばいいよ。
あなたは進化できないため、進化先は表示されません。
…………。
今、何か変な声が聞こえたんだけど?
確かに、神の声だったけどさぁ。
もしかして、教会で祈れば、私たちに関しては本体の声が聞こえる仕様?
でも、二言、三言くらいしかやり取りできそうにないから、会話とかをするには不便そうね。
一応、この辺もあとで本体に報告しておこうかな?
というか、ザーヴァに山羊くん乗せるって言ってた?
ロボットなんて操縦できるのかな?
それとも反対を押し切って、
まぁ、私には関係ないか。
ツナさんの進化早く終わらないかなーと教会の片隅で待っていたら、なにやら見知った顔を見つけちゃったよ。
「はろー、ブレくん、ミサキちゃん」
二人の祈りが終わったところで声をかけたら、二人にキョトン顔されちゃったよ。すごいね、認識阻害の眼帯! まぁ、装備が変わってるせいかもしれないけども!
「誰ですか、あなた?」
「ブレの知り合い?」
ブレくんは警戒し、ミサキちゃんは知らん顔だ。
うん、認識阻害が強いと良いこともあるけど、悪いこともあるよって本体には報告しとこっと……。
「私、私」
「詐欺かなんかですか?」
一向にわかってもらえないので、ドリンクボックスを【収納】から取り出してみる。
「ゴッド!」
「わかってもらえて嬉しいよ!」
ミサキちゃんとひしっと抱き合う。
うん。これを見たことないブレくんはポカーンだね。
「え、ヤマさんなんですか? 本当に?」
「嘘ついてどうするのさ」
「え、でも、その……なんというか……雰囲気が……」
「圧迫感とか違和感がまるでない。簡単に言うとすごく弱そう」
ブレくんが窺うように私を見て、ミサキちゃんがぶっちゃけて言う。なるほど。【偽装】で全ステータスを30程度に設定してるとそう見えるんだね。
「弱いかもしれないよ? 試してみる?」
「それは……」
「やめとけ。死ぬぞ」
なんかモニョってたブレくんを後ろから止めたのは、ツナさんだ。
どうやら進化が終わったらしい。
なんか雰囲気が変わった……っていうか、高下駄を履く脚にビッシリと鱗が生えてるね。
「というか、玉を潰される」
「ひぃっ!?」
「要らないこと言わなくていいよ! それよりも、その脚……」
「水中では魚の半身になるらしい。これでまた海中の敵とやりやすくなったな」
この人はどこに向かってるんだろうか?
そんなツナさんに憧れの視線を向けるブレくん。
「いいなぁ。下半身が魚になるとか特殊進化先ですよね? 僕たちもなるべく良い進化先を狙って、進化の塔を登ってはこうして新たな進化先がないか、毎回教会に確認しにきてるんですけど……」
「なかなか良い進化先が出ない」
なるほど。
だから、二人は教会に来てたんだね。
ドリンクボックスを【収納】にしまいながら、うんうんと頷く私。
「ゴッドはゴッドになった?」
「うん」
「言葉に詰まるな、とは言ったが、肯定しろとは言ってないからな? それじゃ、普通に認めてることになるぞ?」
「え? いや、別に知り合い相手なら隠すつもりもないし……」
「えっ、それじゃあ、ヤマさんがあのワールド――ゴフッ!?」
「黙って」
ミサキちゃんのボディブローがイイ感じにブレくんの脇腹に突き刺さったね。ここがリングならマウスピース吐き出してるところだよ。
「そういえば、私、タツさんを探しにこの都市にまできたんだけど、二人はタツさんがどこにいるか知らない? やっぱり冒険者ギルド?」
「タツさんなら宿」
「ゲホ、ゴホッ……た、多分、今日はオフなんで宿のラウンジでゆっくりしてると思いますよ」
「? 二人とも随分とタツさんのことに詳しいね?」
「今、僕ら二人、タツさんと同じパーティー組んでますので」
「魔王リリとイエティも一緒」
「イエティじゃなくて、Takeさんだって。いい加減、名前覚えようよ、ミサキちゃん」
「ふ、ふーん?」
私と関わった人たちが、私にナイショでパーティー組んで冒険して楽しんでるなんて……そ、そんなの、全然羨ましくなんてないんだからね!?
私にだって、ツナさんがいるもん! うっすい絆で繋がってるだけだけどさぁ!
「泣いてるのか?」
「泣いてないやい!」
現状を落ち着こうとして振り返ってたら、味方に脾腹を刺された気分だよ! 誰のせいでちょっと悲しくなってると思ってんのさ!
「そういえば、タツさんは今後のことについて、ヤマさんと話し合いたいとか言ってたかな? 冒険のお誘いとかですかね? ヤマさん、何か聞いてます?」
「…………」
「ヤマさん?」
「尻尾を振るな」
「振ってないよ!?」
ツナさんには一体何が見えてるのさ!?
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