第111話
王都サーズの北方、巨大な湖の中にポツンと存在する島。その島にそびえ立つ白亜の巨城――それこそが、ファーランド城だ。
そのファーランド城に続くまでの湖の上には長く続く石橋が架けられていて、両脇に綺麗な湖が見渡せるという、なかなかの映えスポットなのだが……。
「折角の綺麗な景色なのに、そこかしこに血溜まりがあるっていうのはどうなのさ?」
第二王子に斬り倒されたのか、白い鎧を着た兵士が血溜まりの中に沈んでいる姿が時々見える。
ポリゴンになってないってことは、まだ生きてるんだろうけど、その傷を治しちゃうことで「不審者めー!」とか言って襲いかかられても困るので、とりあえず放置してるけど……。
折角の景色が、こんな感じだとちょっとガッカリではある。
「まぁ、逆に追跡しやすいって考えれば、これはこれでアリかも?」
現場証拠を残しまくってる犯人と、それを追う刑事ってね。
血溜まりをひょいひょいと躱しながら、私はそういえばとばかりに思い出して、視界の片隅に現れたメッセージに意識を集中する。
「そういえば、これどうしよう……」
▶まねっこ動物が発動しました。
【わりと雷帝】を習得しました。
他のまねっこ動物スキルと入れ替えますか?
▶はい/いいえ
▶まねっこ動物が発動しました。
【灰棺】を習得しました。
他のまねっこ動物スキルと入れ替えますか?
▶はい/いいえ
▶まねっこ動物が発動しました。
【半殺技】を習得しました。
他のまねっこ動物スキルと入れ替えますか?
▶はい/いいえ
遠くから戦闘を覗いてたら、いきなり三回もまねっこ動物が発動しちゃったから、とりあえず選択せずに保留してたんだけど……。
いきなり三つも技の入れ替えを選べとか言われても困るよね?
まぁ、いずれもユニークスキルっぽくて強そうなのは確かなんだけど……。
ちなみに、各々のスキル効果は次の通り。
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【わりと雷帝】
体の半身までを雷化させて操ることができる。半身までなので、雷化した体の部位によっては発動しないスキルもある。
※雷化……【物理攻撃無効】、【縮地】、【雷魔法】を同時に発動する。
※雷化の際は物理攻撃不可、属性は雷限定。
※雷ヒット時は魔攻を参照してダメージを与える。
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【灰棺】
異界より六つの灰色の棺を呼び出し、六体の屍小姫と呼ばれる異界のモンスターを召喚できる。また、棺は半分くらいの攻撃を吸い込む盾と化す。
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【半殺技】
半殺技に相応しいモーションと半殺技に相応しい声量で半殺技名を言うことで、半殺技を放つことが可能。半殺技に当たったものは、問答無用で最大HPの半分のダメージを受ける。
ただし、HPが複数バーあるレイドボスなどに関しては、バーの0.5本分のダメージしかあたらないものとする。
※クールタイム0.5h
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飛び抜けて【わりと雷帝】が強い気がする。
なにこれ。
スキル三つも同時発動して、その内二つは見たこともないスキルときた。
これ、絶対強い奴だよ。
あと、【灰棺】も手数とか労働力が欲しい時に便利そう? 防御に関しては半分くらいしか防げないというのが一抹の不安だけど、召喚系のスキルはあっても悪くないんじゃないかな?
そして、【半殺技】。
使うのにすごくテクニックが要るタイプのスキルだと思う。それと【魔力浸透激圧掌】にスキル効果が似てる部分もある。
ただ【魔力浸透激圧掌】は相手に接触して意識を集中したりして大変なんだけど、こちらはカス当たりでも50%ダメージというのは魅力だ。
一方、現在、私が覚えてるまねっこ動物のスキル一覧はこちら。
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【まねっこ動物】
見た感じのなんとなくで技を再現する。
だが、技の根本を理解していないため、覚えた技は本来の力の半分程度しか出せない。
①【魔力浸透激圧掌(カッコだけwww)】
②【見た感じ魔道王】
③【半狂神降臨】
④【魔剣融合っぽいもの】
⑤【菩薩返掌かな?】
⑥【小神降臨に違いない】
⑦【空歩ですよ?】
⑧【え、審判の目?】
⑨【引き寄せず】
⑩【少しだけ衆中一括】
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現状、年齢とか種族の関係で使えないのが、【小神降臨に違いない】と【引き寄せず】の二つ。
こちらは完全に死にスキルなので、交換スキル要員筆頭。
【引き寄せず】はワンチャン、私が進化してハーメルンになれば使えるだろうけど……そしたら、種族スキルで普通に生えるから、やっぱり要らないよねとなる。
【小神降臨に違いない】は、『肉体が戦闘適齢期を過ぎていないと使用不可』っていう条件がねー。
私、生まれたばかりの妖精ってことなのか、〇歳児なんで、なかなか使う機会がないかなーと。
全ステータス2.5倍は魅力なんだけどね。
まぁ、その辺の強力なバフ系は【半狂神降臨】で補えるからいいかな?
問題は、この二つのスキル以外に、何を入れ替えするかってことなんだけど……。
私の中の候補としては、三つある。
まず、一つ目は【菩薩返掌かな?】。
これは無手のスキルで、上手くタイミングを合わせて使用すれば相手からのダメージの50%を跳ね返すってスキル説明に書いてあるんだけど……。
ビビリの私が相手の攻撃を喰らいながら返すというイメージがまず湧かないというね……。
そもそも、私の物防でダメージ受けるのかって話もあるし……。
いや、フィーアは無しでね?
あんな反則紛いなのを基準に持ってきちゃダメだよ?
で、二つ目が【空歩ですよ?】。
これも、空中に瞬間的に足場を作って、5歩までエアウォークできるらしいんだけど、【風魔法】で空を飛べる現状では要らないんじゃないかなーって。
これ、多分、【風魔法】が使えない近接職用の救済措置の技なんじゃないかな? 【風魔法】と二つは要らないかなーといった感じだ。
そして、三つ目は【え、審判の目?】ね。
アイルちゃんには悪いけど、50%で当たったり、外れたりで相手の嘘が見抜けるって、例えば、今の言葉は嘘って思っても、それが嘘って可能性もあるって考えたら、ちょっとねぇ……。
そんなややこしいスキルに頼ってたら、普通に疑心暗鬼になって何もできなくなっちゃうと思うんだ。
なので、これも入れ替え候補という感じ。
じゃあ、どれを入れ替えようかなーとなった時に……まぁ、特に順番でいいかな? となったので、こんな感じになりました。
====================
【まねっこ動物】
見た感じのなんとなくで技を再現する。
だが、技の根本を理解していないため、覚えた技は本来の力の半分程度しか出せない。
①【魔力浸透激圧掌(カッコだけwww)】
②【見た感じ魔道王】
③【半狂神降臨】
④【魔剣融合っぽいもの】
⑤【わりと雷帝】←New!
⑥【灰棺】←New!
⑦【空歩ですよ?】
⑧【え、審判の目?】
⑨【半殺技】←New!
⑩【少しだけ衆中一括】
====================
うん。なかなかいい感じじゃない?
【菩薩返掌かな?】さん、お世話になりましたー。一回も使ってないけどねー。
私がスキルの整理を終えて、自己満足に浸っていたところで、ようやく王城に到着。
王都の城門もそうだったけど、ここの城門もぐちゃぐちゃに破壊されている。
あの巨人のような攻撃のせいかな?
だとしたら、あの攻撃が私に向けられることもあるのかな……?
いやいや、勘弁して欲しいんですけど……。
ぶるりと背が震えるよ。
できるなら、もっとスローなライフがしたいのに、なんでこう危険な目にばっかり合うのかなー。何となく世の不条理を感じるよ。
相変わらず第二王子が暴れた後であろう惨事の現場を辿っていって、城内に潜入したところでツナさんからメッセージがきた。
えーと、なになに……。
『王都が見えてきた。王都のどこにいる?』
と来たんで、シンプルに『王城。』と返しておく。
メッセージの向こうでツナさんが黙り込む姿が見えるようだ。
それにしても、ツナさん早いねぇ。
ツナさんというよりラプーが早いのかな?
ダテにペンギンしてないね!
ちょっと自分でも何言ってるか分かんないけども!
点々と続く惨殺現場を追いつつも、私は城内の威容に心奪われていた。
外から見た時には、無駄にデカイ城! と思っていたのだが、やはりそれは日本の狭い家屋に慣れたが故の感覚だったらしい。
中に入ったら、巨人の住処かってぐらいに天井が高く、柱とか、塔かってレベルで太く高く伸びており、それが二十車線分くらいの間隔を空けて、ずらっと並んでるんだから、もう何か建物の規模としての次元が違うって感じだよ。
巨大ショッピングモールとかがミニマムサイズに感じられるスケールの大きさに、私はただただ唖然とするしかない。
というか、城内に普通に小川が流れてるし、小さな生垣が普通に城内にあるし……。
ちなみに、総大理石なのかな?
似てるけど違う? もしかしたら、ファンタジーな建材なのかも。
ちょっと大興奮で城内をウロウロ。
足元の絨毯とかも、絶対に高い奴だよ、コレ! とか思いつつも、そこに血の染みがついちゃってることに、ちょっとだけスンッとしちゃう。
第二王子は戦争バカって聞いてたけど、そういうの以前に風情がないんじゃなかろうか?
いや、戦争に風情とかないかー。
で、ウロウロとしていたら、血の痕跡が二階へと続いていたので、クソ広階段をテコテコと上っていく。
そしたら、また長い通路が直線的に伸びており、そして、更に階段が用意されているのを発見してしまった。
なんで、そんな立体的にするんだろーと思いつつも、その階段の上に巨大な扉がついており、そこが観音開きに開かれてるので、恐らく終点かなーと思いつつ、小走りに近寄ってみる。
すると……。
おぉ、やっとる、やっとる。
部屋の中央で対峙する金色の鎧を着た金髪の偉丈夫と、腕を押さえて片膝をついてうずくまる虹色の鎧を着た癖のない金髪長髪のイケメン。
多分、ゴリマッチョな金鎧が次男かなー。
で、ナヨっとしたイケメンが長男。
私はそんな二人の様子を確認しながら、テコテコと部屋の中に入ると、部屋の端っこを歩きつつ、目的の場所にまで進むのであった。
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