第71話 下位冒険者は三文芝居に巻き込まれる その壱
『……きたる権能 能わざるは白亜の絶壁
ティルルカが続けざま唱えた二つの魔法は瞬時に発動し、魔法の障壁と不可視の風の層を生み出した。
取り敢えず発動自体は成功だが、問題はこれで
「ヘイヘイヘイ! 来たまえ腐れ
良くわからん挑発に、脳味噌が退化している
振り上げられた
「にぎぃぃぃ!! タイミング難ぅぅぅ!!」
発動した
取り敢えず、
「おい、ルカ……」
「まだです、ご主人様! まだ終わってません!」
俺の問い掛けに被せてそう反論するティルルカ。確かに
『ブキォォォ!!』
「こなくそぉぉぉ!!」
ティルルカの大盾を中心に張り巡らされた障壁が、その棍棒を受け止め弾き返す。
その攻防が二度三度と繰り返され、俺は如何したものかと思案する。
ふと下を見るとショルツがじぃーっとその様子を見ていて……いや、見守っており、それを見て俺ももう少し様子を見る事に決めた。
ショルツがこの様子なら危険は無いのだろう。
見たところ、
何しろ
これは、タイミングを掴むのに、時間がかかるかも知れないな。だが、ティルルカの成長には欠かせない戦闘だろう。
俺は心を鬼にして、その戦闘を見守る事にしたのだった。
「鬼……ご主人様の鬼畜……」
「いや、確かに俺は心を鬼にして、見守る事に徹したが、それはお前を思えばこそで……」
手を出さずに様子を見て続けていた俺の対応が不満だったようで、ティルルカは恨めしげな視線をこちらに向けてきた。それに対して俺は、ほんの少しの罪悪感から申し訳無さげにそう言いかけたのだが……
「ですよねですよね! やっぱりご主人様はあたしの事は心の底では愛していて下さってるから……」
どうやらそれがご褒美になったようだ。それは何より。
「アーウン。ソウダネ。アイシテルー」
「ここまで来たら、そんな雑に扱わないで責任持ってちゃんと最後までお相手して下さいよご主人様ぁぁぁ!」
「えぇい、すがりつくな鬱陶しい!」
結局、最後まで魔法の併用は完全には上手く行かず、二つ同時に魔法を使ったって以上の効果は発揮できなかった。要修行だな。
因みにショルツは
そんなこんなでギルドにたどり着いた俺達は、入り口の戸を開け中へと入り込んだ。
すると、いつも通りザワザワと騒がしいギルド内。しかし、何となく少し何時もとは違う雰囲気が漂っている気がする。
「……ご主人様?」
「……」
その雰囲気を感じたのだろう、ティルルカも不安げに問い掛けてきた。それに対して俺は無言で返し、ギルドの中に視線を走らせる。
すると、受付で喚き散らしているとあるパーティが目に入る。それ自体はギルドではよくある光景で、珍しい事でも不思議な事でも何でもない。
問題はその喚き散らしているパーティのメンバーそのものにある。出来れば顔を合わせたくない、合わせればどう考えても面倒事しか起きないメンバーだったのだ。
回れ右してギルドから出て行こうと考えたその瞬間、そいつ等の一人が俺達に気付いたのか、こちらを振り向き俺と目があった。
「あいつ等だ! あいつ等が
そう、ついさっき森で遭遇した、上から目線で俺達に助けを求めたあのクズパーティのメンバーだった。
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