第60話 下位冒険者は受付嬢に諭される
「それで、如何すればいいのか、ご教授頂けますでしょうか?」
そう揉み手で謙って訊ねる俺に、リリーヌ嬢は肩を竦めて口を開く。
「そう難しい話ではありませんよ。クロさんは、
「いや〜生憎、俺は
テヘペロっている俺を、全く表情を変えずに一瞥するリリーヌ嬢。
「はぁ………その悪人顔で可愛さを装っても、ゴブリンが微笑んでるようにしか見えませんね」
「ゴフォ」
言葉自体は辛辣だが、いつもの針を何本も突き刺してくるような身も凍るほどの殺気はない。と言うか、もう如何でもいいよってな感じの口調だったんで、ちょいと寂しい………なんて思ってしまった自分が怖い。
「大体、
と思っていたら
いやまぁ確かにそれは、以前リリーヌ嬢に言われた事だったので、お小言としてチクチクと突かれるのもある意味しょうがないっちゃーしょうがない。
ただ
「だって俺の魔力量じゃ、場合によっては多量の魔力を使うことになる
「それは大物を狙って、保持し続けなくてはならなくなった時でしょう。小鳥やリスなどの小動物や小型の
「うぐっ(一理ある………)」
「それに、
「くっ(反論出来ねぇっす)」
「その上、仮に知識を得ていれば、敵に従魔使いが居た場合の対処法などにも活かせるはずです。只でさえ、冒険者としては出遅れていて、更には魔力も少ない底辺からの出発だったクロさんには、知識という武器が絶対的に必要だったはずでしたよね?」
「………シクシクシク………その通りで御座います………もう勘弁して下され………」
「………知識は貴方を救います。これからは、知識に無駄な事は無いと考えを改め研鑽に努めてください」
思いの外、真面目に諭され、俺は暗澹たる気持ちに陥った。リリーヌ嬢が、実は真面目に忠告して来ていたって事に今更ながらに気付いたのだ。
そうか………俺は、冒険者として多少の経験を積んだ事で、いつの間にか気が緩んでいたんだな。楽な方へと流れて先を見通すって事をしなくなると、自分の成長を妨げる事にもなりかねない。
ここは素直にこの忠告を受け入れよう。
「分かったよ。
「そうなさって下さい。今回はやむを得ませんので私が教えましょう」
そう言って、人差し指を立てて話し始めるリリーヌ嬢。
「
そう言いながら、リリーヌ嬢が懐からリング状の物を取り出した。
「これは、術者が魔力を込めると、その術者以外が外そうとした時に壊れてしまう、元々は女性が男性に贈る浮気防止用の魔導具です。これをその
俺がそれを受け取り魔力を込めると、リングは直ぐに赤く染まる。それをショルツの後ろ足に通すと、シュルっとショルツの足に巻き付くように縮まった。
如何でもいいが、まだ恋人もいない筈なのに、既に浮気防止用魔導具なんぞを持ち運んでるリリーヌ嬢は、一体全体誰をこのリングで縛り付けようとしてたんだろ………いや、深く考えるのは止めとこう。
「クロさんの魔力量でも、小動物くらいなら
口角を微かに持ち上げ、そう揶揄するリリーヌ嬢に、俺はいつものように反論しかけるが、
忠告に敬意を評して………と言うわけではない。
「………デスヨネー」
俺はそう曖昧に返すに留める。
「でも………」
しかし、俺の思惑を無視して空気を読まずに破壊する、
「馬鹿、止め………」
「ご主人様は、何故か小動物にだけは好かれているので、触れ合いに困る事は無いのでは?」
「っ!!」
ティルルカの言葉に、珍しく
ティルルカお前なぁ………仮にも俺の奴隷なら、主の意図と空気をキチンと読めよぉ………しかもまた、サラッと主をディスってるし。
「えっ?! あたし、何か悪いこと言いました?!」
焦ったようにキョロキョロと頭を振るティルルカに俺はため息を吐く。
実はリリーヌ嬢は、滲み出る
「クロさん………貴方に気を使われると殺意が湧きますので、今すぐ死んで下さい」
「いいいいいや、んな事でいちいち殺さないで下さいよ御免なさいいいいい!」
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