第35話 なりたて冒険者は女奴隷とパーティを組む その弐
「まずは、お前さんの装備を整えんとな。前衛だから本当なら金属製の防具を揃えてやりたいとこなんだが………」
「
「いや、いずれは揃えるさ。今は無理だってなだけだ。前衛の仲間が欲しくて今回の話に乗ったのに装備をケチって役に立たないとか本末転倒だ」
「………奴隷はそれこそ肉の盾として存在するんじゃないのでは?」
「早々にお前を失ったら、その後如何する? 簡単に所有してる奴隷を死なせるような新米冒険者に、次の奴隷が充てがわれると思うか? そもそも現実的な話をすれば、冒険者として連れ回せるような奴隷を次々持てるほど、俺は金持ってねぇよ。今回は本当に例外中の例外だ」
「微妙に話が噛み合ってませんが、ご主人様のご意向は理解致しました。防具に関しては、差し当たっては大盾をご用意頂けたらお役に立てると思います。身体の方は、大物を狙う訳でないのであれば、今は厚めのレザーアーマーで宜しいかと」
何が噛み合ってないのか、いまいち理解に苦しむが、ティルルカの要望は理に適ったものだったので受け入れることにした。
「あとは武器なんだが………何が得意だ?」
「剣の類に適正は無かったので、基本は手斧か鎚が良いかと。何なら木の棍棒でも構いません。技術には自信ありませんが、力はそれなりにありますので」
「それなら………」
俺は、荷物の中から小振りの鎚を取り出した。ゴブリンから奪い取ったあの謎金属製の鎚だ。
「これは使えるか?」
「これは………鉄鎚ですか? ………いえ、違いますね。微かに魔力を感じます。
「いや、俺じゃ素材が何なのかは分からなかったんだ。ゴブリンが使ってた鎚を拾ってきた。鉄じゃないのは分かってたけど、正直何で出来てるのかまでは分からん」
「そうですか………あたしも、一度しか見たことがないので自信はないのですが、多分
「もしかしてそこそこの値段で売れちゃったりする?」
「比較的高価ではあるのは確かです。ただ、この鎚に関してはあまり純度が高くありませんので、そこまでではないかと………」
「そうか………高値で売れるならそれを元手に
「それは流石に無理ですね」
「それじゃ、この鎚を使うってことで良いか?」
「そうですね。普通の鉄鎚を使うよりは断然良いかと思います」
「それじゃ鍛冶屋に持ち込んでメンテナンスしてもらおう。ゴブリンが使用したそのままの状態で使うのも嫌だろう?」
「あたしはその辺はあまり気になりませんが、ゴブリンは使い方が荒いのでメンテナンスはした方が良いと思います」
「んじゃ、鍛冶屋行ってメンテナンスして貰うついでに、盾も物色しちまおう。確か鍛冶屋の近くに防具屋があったはずだから、鎚をメンテナンスに出したら待ち時間で見に行こう。ついでに鎧の方もな」
そう相談しながら、ギルドからほど近い場所にある職人街にやってきた。ここは鍛冶屋や薬屋、マジックアイテム等を扱ってる道具屋などが建ち並ぶ、冒険者に必要な物が何でも揃う、冒険者御用達のショッピングエリアだ。
「ティルルカは、この街で冒険者になったのか?」
「いえ、王都の近くです」
「んじゃ、ここは初めて?」
「はい。
「ここは、腕の良い職人も多いし、王都に比べて物価も安い………ってのが売りだったんだけどな………」
「今は違うのですか?」
「色々あって、物価が更に安くなったせいで職人達が作る武器や防具も値崩れ起こして、馬鹿馬鹿しくなった職人達が他の街に流出し始めてるんだ」
「それってかなり不味くないですか?」
「不味いね」
職人達が居なくなれば、質の悪い安い装備が流通し、質の良い装備を求めて冒険者の他のエリアへの流出も考えられる。冒険者が減れば、彼ら相手に商売していた人達も困った事になるだろう。
この街に残るのは、金が無く、粗悪な装備しか買えないような新米冒険者と、やはり金が無いうだつの上がらない中堅冒険者、それと彼等を相手取るあくどい商人たちのみって事になりかねない。
まぁこれは、この状況が進み続けたら、もしかしたらこうなるかも知れないっていう、単なる憶測でしかない訳だけど。
親父達は、そうならない様に色々と手回ししていたんだが、今の
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