第19話 ある見習い冒険者の魔力操作
俺が見習い冒険者となって300日が経過した。つまりは、俺がリリーヌ嬢から笑顔で冒険者失格の烙印を押されてから300日が経過したと言う事だ。
あとふた月もすれば、『見習い』としても冒険者失格の烙印を押されてしまう。それまでに、何としてでもギルド側から提示された条件をクリアしなければならない。
ひとつ、
ふたつ、ギルド特製モンスターの骨製立ち木の切断。
みっつ、指定の薬草の採集と納品。
この内、立ち木の切断と薬草の納品は問題無い。薬草は欠かさず納品してるし、立ち木の切断に関しては、実際にこっそり試してみたらなんとか切断出来た事を確認している。
問題は、ひとつ目の
魔力操作の訓練に入ってからしばらく経つ。順調に魔力量は増えていたが、ひとつ問題が発生していた。それは、俺の冒険者としてのスタイルに関わることだった。
俺は、魔力を体内で循環させ、常に身体強化を掛けながら、更には知覚系の能力も底上げし冒険者にのぞむスタイルだ。魔力を放出して戦えるほどの魔力量は確保が難しいのが現状だ。
何故なら、俺の身体は、魔力を溜め込む器としては、残念ながら最低ランクの部類に入る。まだ成長する余地はあるのだが、期間までと期限を区切られてしまうと、どんなに溜め込んでも十発分を確保するのは難しいとの結論に達した。
ただ、この事で俺はで自分を卑下する事はなく、寧ろ将来的な可能性を見出していた。
実際に魔力を操作し、溢れ出る………という表現は明らかに不適当か………まぁ、蒸発していくとも表記出来るフワフワ消えていく魔力をその場にとどめ、心臓を器として、流れる血液を通して体内で循環させる事をイメージしてそれに成功した俺は、寝てる間も無意識に魔力を循環出来る様になるまで訓練した。
その甲斐あって、徐々に魔力が身体の中で増えていき、遂には満杯まで溜め込んだ。あとはジワリジワリと器を広げていけば良いのだが、これはある程度時間が解決してくれる事だ。今回の再試験には間に合わない事は残念だけど。
その循環の過程でひとつ気付いた事がある。それは、魔力そのものにも練度が存在するという事だ。要するに、筋トレして筋肉を鍛えればより強い筋肉になるのと同じように、魔力も使えば使うほど練度が高まり、同じ身体強化をしても強化具合や効率が全く違うものになり、これが俺が自分を卑下せずに済んでいる理由でもある。
その効果は魔物達との戦闘においても如実に現れた。単純に一撃一撃の威力が上がった事で、一体の魔物を仕留めるまでの手数が減り、楽に戦闘を終わらせられる様になったし、身体的な能力も知覚的な能力も向上するので、連戦にも耐えられる様になってきた。それは多くの戦闘経験を積む事に繋がり、更に魔力操作の練度を上げる事に繋がったのだった。
今、俺の体内で循環している魔力は循環させ始めてから、こうやってずっと鍛え続けてきた魔力という訳で、かなり練度が高いのだ。ところが、俺が
故に、今体内で循環させている魔力を
循環させている魔力を消費せずに放てる
「なんとか合格を勝ち取る方法は無い物かねー………」
俺はそう呟いてぬぬーんと思考を巡らした。
「………そもそも、
俺は手を翳し、
『我が力 一条の光となって敵を撃て
体内から循環しているものとは別の魔力が引き出され、目の前に光の矢が生み出され、そして撃ち放たれた。軽い疲労感が身体を襲い、少しだけ頭がクラっと重くなる。
「
魔力を引き出すにも魔力を使い、矢の生成にも魔力が消費される………更には作り上げた
一般的な魔力量があれば、ひとつひとつは気にも止めない魔力の消費量だ。寧ろ、
「だけど、俺にこの
俺はそこで、ふと思い立つ。
「
俺は今度は手を翳すのではなく、人差し指を伸ばして突き付け、その人差し指に自らの意思で魔力を流す。すると頭の中に自然と浮かび上がる
次の瞬間、その
『光弾よ 敵を撃て
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