狂ったもの 都時彰編24

さあ。そうして手に入れた水色のモコモコ手袋なのだが問題があった。

 俺の手には小さすぎて入らないことである。

「まあでも大丈夫ですよ」

「嗅ぐな!!押入れの埃の匂いしかしないわよ!」

 ちくしょい。楓さんの使用済みじゃないのか。

 じゃあこの手袋は要らないじゃないか。

「仕方ない。じゃあ」

「コラ!わたしに抱きつくな!匂いを嗅ぐな!脇はやめーーー!!」

 だって手袋が役目を果たさなかったんですもん。

 これくらいしなきゃなんの為に手袋を待ったと思ってるんですかこの人は分かってませんね。

「まったく。せめてお風呂入ってからにしてくれる?」

 ほほう。つまり風呂上がりの楓さんならOKだと?

「せめてだからね!こっちの準備もあるんだから!」

 一体何の準備が要るというのか。

 そこは楓さん本人さえ居ればオールOKだというのに。

 あとはあっちをクンカクンカ。こっちをクンカクンカするだけであら不思議、俺は堪能できること請け合いなのです。

 汗で火照った身体の楓さん。

 うん、良い。

 これだけでご飯3杯はイケる。

 と言うことを楓さんに言ったら今度こそドン引きだろうから俺の心の中だけに留めるけども。

「········彰くん?人の服の中に頭を埋めて匂い嗅がないでくれる?わたしのお腹の匂いがそんなに良い?」

 しまった!!言っていないが行動に滲み出てしまった!!

 しかし。ここまで匂いを求めても楓さんがキャーキャー言わないのは意外だなあ。

「とりあえず。わたしの匂いなら機嫌が良ければOKにするけど····。他の女の子にやったらただじゃおかないわよ。」

 ひどいなぁ。人を浮気者扱いなんて。

「へーーーえ?浮気してないと?はっきりそう言えるとおっしゃるんですねえ!文乃に土居さんに後は········居ないわよね?」

 まだ忘れた訳じゃなかったよこの人!

 ここは土下座をせねばなるまい。

「立場がわかってるようでよろしい」

 胸の前で腕を組む楓さん。もちろんそこに阻害するものはない。

「じゃあ楓さん肩をお揉みしましょうか」

「なんかその流れでお尻揉んできそうだから却下」

 厳しい。は~。

 なんでここまで厳しい人になってしまったんだろう。

「楓さん?どうしたらお尻揉ませてくれるんですか?」

 ここぞとばかりに真剣な表情で質問するも

「何をしようが駄目です」

「しょうがない。入浴中に忍び込むか」

「あきらめて!!なんでそこに解決策を見出すの!?」

「だって楓さん風呂上がりなら匂いを嗅いでも良いって言ったじゃん?ならお風呂の時、一緒に入っても許されますよね?」

「その理屈はおかしい!そこまでOKにしたらわたし痴女じゃない!」

「おー。すごい楓さんに新しい属性に目覚めようと」

「要らない!!絶対要りませんそんな属性!!」

 どういうわけか楓さんは気に入らないようだ。

「そういえば楓さん。前に充との食事が終わったらハグしても良いって言いましたよね?」

「確かに言ったわね。よくもまあ覚えてるわね。それ以上の事をしてる感が否めないけども」

 俺は楓さんの返事も待たず思いっきり抱きしめた。

「コラ!まだOK出てないでしょ!離せー!離しなさい!コラ!」

 もう無理です。楓さんの匂いゲージがマックスになりましたので理性が効かなくなってます。

 楓さんは俺の腕の中で藻掻くが少し身じろぎできる程度で回避まではできない。

 うん。こういう時バストが無いからしっかり密着できるのも魅力だよね。

 貧乳女子万歳。

「ねえ?離してくれる?絶対今のわたし、埃っぽいしさ。臭くない?大丈夫?」

 「大丈夫です。なので後1時間くらいはこのまま」

「待って!彰くんの·····がわたしのお腹に当たってるんだけど···」

 もちろん中学生男子なら起こりうる事なので問題無しと位置づけ、さらに俺のを押し付けるように楓さんの服と俺のズボンを間に挟んだ状態でグリグリと腰を動かす。

「ねえ?ちょっとわたしの話聞いてる?」

 俺は息を荒げながら

「楓さん。もうここまで来たら入れても良いですよね?」

「彰くん!目を覚まして!わたしの為にも彰くんの為にも!」

 楓さんは両手を必死に動かして俺の顔と胸に手をついて離そうとするが男の俺に敵わず、しばらくするとまた密着してしまう。

 が、楓さんも貞操の危機を感じているので何ふり構わず暴れ続ける。

 この時俺は性的興奮に溺れていて、楓さんの言葉も耳に入ってなかった。

 だから楓さんのジーンズのショートパンツ越しにお尻を力の限り鷲掴みにした。

「痛い!!彰くん!それ痛いからやめて!」

 痛みに耐性がない楓さんはそれだけで涙目になっていた。

 そこで退けば良いものを悲鳴もお尻の感触も心地よく感じ、ズボンを無理矢理ずりおろそうと手を動かした時に少しホールドが緩んだところを楓さんに俺の大きくしたところの下にある玉を握られた。

「うぎゃあああ!!!」

 もちろんそんなことをすれば男は悲鳴を上げる程の痛みを伴うわけで、それは俺も例外ではないので。そこで我に返った俺は楓さんに止めるよう懇願するが。今更どうしてそれを聞くことができようか。

 楓さんの侮蔑の視線と魂まで響く痛みは1時間は続いた。



 そしてお互い正座して向かい合い反省会という名の一方的なお説教タイムである。

「彰くん?わたしにはあなたが女心が分かってない。そう思うわけなのよ」

「はい。すみません」

「謝ったら済む問題じゃないのよ。襲われた方からすれば一生記憶に残るトラウマになることだってあるんたから。すごい怖いのよ。だからまずレディーファーストっていうように女子の意見を通してから自分の意見を通しなさい。それができなきゃお付き合いはできません」

「それじゃあキスは!?」

「お互い25過ぎてからね」

 この人のガードが更に固くなった!

 でも今回やってしまった事が事なので、こちらサイドは強く出れない。

「○ックスは······」

「現時点では永久に無理」

 酷い!あんまりだ!

 そんな事が顔に出ていたのが分かったのか楓さんはキレ気味なのをなんとか抑えた表情で

「今されたらわたしが傷つくだけなのが分からない?ねえ?わたしはあなたの性的な玩具じゃないの」

 駄目だ。こうなったら意地でも変わらないや。

 俺は欲求不満なのを必死に飲み込んで学校で何があったのか。最近何かハマってるものは無いか。勉強はやっているのかを聞いたり話したり聞かれたりした。

 べ、別に楓さんの為にやってるんじゃないからね!

 と、男がやっても寒いだけなんだろうなと思い心の中にしまいこんでこの日は家に帰った。

 



そうして新屋敷先輩もそう簡単には良くならず、外村先輩も吐き気は治まったが頭痛が酷く、まだ歩くのは困難であると鷹峰先輩、楓さんのご両人から聞いた。

「あ~~~~~~。暇だ」

 椎堂が大変な目に遭って家にいる時は毛布に包まって隅に居ることが大半な中、言うのは失礼だが。課題も終えた土日というのは中々に暇なものだ。

 誰か誘って遊びに行きたいところだが、椎堂の事があるから自分だけ行くのは気が引ける。

 と、なにやらノックの音がする。

 両親ならまだ昼時なら仕事だしな。そう思いながら鍵を開けると、色黒な顔がぬっと出てきて、こちらが驚いてる間に「おー椎堂」と言う声がしてからやっと

「岡庭先輩」

 その人の名前が口から出た。

 早々に靴を脱ぎ、中へ入り引きニートみたいになってる椎堂の前に立ち

「トレーニングだ」

 俺はコケそうになった。

 黒のインナーの上に緑のジャンバー。下には白の縦3本線の入った黒のジャージ姿で言ったのがこれである。

 そんな格好で岡庭先輩がやってきたから、てっきりランニングついでにここまで来たのかと思ったが現実はその上を行っていた。

「今はそんな気分じゃないです」

「練習も来てないと聞いたぞ」

 まだ心の傷が癒えてないのだろう。

 グラウンドで練習していれば野球部やサッカー部のボールが飛んできたりする。

 そこで万が一背中やお尻に当たればまたトラウマに狩られるだろう。

「1度来た時に槍投げの先端見ただけで叫んじゃって······迷惑ですよね。私····」

 違う。椎堂なりに努力したのだ。

 努力したけど·····駄目だったのだ。

 あの時のトラウマがどれほど体や脳内に残っていることだろう。

 保健室とはいえ、学校に来れているだけでも本人としては奇跡なのかもしれない。

 と、岡庭先輩は椎堂をしっかりと抱きしめていた。

 そのことにビクッと体が動く椎堂。

「大丈夫。椎堂は悪くない。だから、ゆっくりでいいからさ。私が作った練習メニュー、鞄に入れとくから気が向いたらやって欲しい。必ずお前の為になるから」

 そう言って立ち上がりがてら俺の首根っこを掴んで歩き出した岡庭先輩。

「待って下さい!俺はなんで運ばれてるんですか!!」

「黙れ巨悪の根源。貴様には私の家でトレーニングが待っている」

 いや、訳わからんぞこの元部長。

「俺、陸上部でもなんでもないんですけど!」

「ふんっ!その腑抜けた性根を叩き直してやるから覚悟しておけ」

「椎堂助けてーーー!」

 情けない話だがここは椎堂に助けて貰わないとどうにもならない。

 なんだこのゴリラ女は。

「都時。岡庭先輩は1度こうと決めたら変えない人だから諦めた方がいい」

 陸上部の付き合いで得た教訓がそれか。

 そしてその言葉を最後に俺は岡庭先輩の家まで連れてかれた。

 まったく、なにをどうしたら男が女子にお姫さま抱っこされて運ばれなきゃいけないんだ。

 俺だって女子を抱いてみたい。

 と、足掻いてる内に胸をぐにぐに触ってしまう。

「キャッ!お前は何をするんだ!」

 当然、そんなことされるとは知らずお姫さま抱っこから解放もとい、落下する。いたいいたい。

 そして逃げようとするが首根っこを掴まれアウト。

「ふむ。椎堂ほどの大きさではないけど形とハリは椎堂より上とは見事。さすが元部長」

「お前は何を言ってるんだ!?なんで椎堂の胸の形ハリを知ってるんだ!?」

「そりゃあ椎堂の胸に顔を埋めたり、生乳を拝んだりしたら」

「脅したのか?ええ?脅したんだろ?椎堂がそんな変態な訳がない」

 野生の岡庭先輩の首をしめつける攻撃

 なんとか揉んだり脱がしたりしてしめつけるから解放させてから両者合意の旨を伝えた

「椎堂!お前都時に何を弱み握られてるんだ!?」

 そしたら椎堂の電話してるや。俺の言うことが信じられないのか。

 そこで椎堂からの証言がとれると意気消沈した俺の誘拐犯。

「わかっていただけましたでしょうか」

「うう。なんとも言い返せない。」

 それはよきこと。俺は、そこから立ち去る······ところでゴムチューブで括られた。

 なぜゴムチューブがある!?

「まあ、いい。こうなりゃトレーニングのタイヤ代わりになってくれ」

 あれですか?俺は陸上部の練習器具扱いですか。

 酷くないですかこの扱い。ええ。こんな事される謂れはないと言い切ってやる。

 そんな事知るかとでも言いたげに本当にそのまま人の目も気にせず自分の腰にゴムチューブを巻き付けて走り出した。

 おい。こちとら着の身着のまま縛られてるんだ。

ズボンがずり剝けるだろ。いてえいてえ。

 尾骶骨並びに背中にかかる路面との摩擦。

 その痛みに耐えきれず、そばにあった街灯の支柱に足を挟んでの停止に成功した。

 と、その勢いで後転した岡庭先輩は俺の上に······どころか、柱に頭をぶつけてしまっていた。

 岡庭先輩は声も出せないくらい痛がっている。

 流石にこれは心配になってくるので声をかけるところでちょうど雨が降り出した。

 こちらが大丈夫かと聞く前にまた立ち上がり、俺を担ぎ上げて歩こうとする。

 この人はそこまでしてまで俺を椎堂から遠ざけたいのだろう?

 が、さすがに重いのだろう。ぷるぷる体が震えてるのがお腹に刺さった右肩から伝わってくる。

 その足取りは遅く、歩幅も極端に狭い。

 雨の中、中学生男子を中学生女子が担ごうと····すること事態無謀だと思うのだがパワープレイにも程がある。

 脳筋という言葉があるが、この人は本当にそうかもしれない。

 だが数メートル歩いたところで躓いて転んでしまう。

 そこから立ち上がって再度挑戦しても結果は分かりきっていることから、俺は岡庭先輩をお姫さま抱っこして家まで引き返そうとした。

 このまま岡庭先輩の家まで行くより俺の家で雨宿りした方が良さそうだからだ。

 が、それもグギッという音が聞こえるくらいに腰をやっでしまった為頓挫した。

 両者無言で地面に倒れ伏してしまい数分。

先に立ち直った(ここ重要)のは岡庭先輩で黙々とおんぶして連れ去られてしまった。

 


 さてさて。色々とあったが岡庭先輩の勝利を示すがごとくやってきてしまった1階建て6部屋はある一般家屋。

 雨で濡れた俺と岡庭先輩は中にいた高校生のお兄さんからタオルをもらいあらかた拭いた後、悲しいか嬉しいのか。一緒に浴室に入り片方シャワーを浴びてる間浴槽に浸かることに慣れてしまっている自分がいた。

 そして渡されたトレーニングウェア。

 何やら準備がいい事でと思ったらオールサイズのウェアが取り揃えられているだけだった。

 ここはジムかなんかですか。

「じゃあまず柔軟からだ。そこに座れ」

 そしてこちらの事情も構わず長座体前屈をさせようとしてくる。

 これ、トレハラじゃないですか。違うんですか。

 そして案の定、後ろから岡庭先輩が押してくるがまだ15㌢もいってないところでタンマをかけざるを得なかった。

「仕方ないやつだな」

 こちとら文芸部なんだ。運動不足は否めないんでね。

 わかりやすいくらいに溜息をついた岡庭先輩が持ってきたのはクッションだった。

 それを俺のお尻に敷くと、また同じように背中を押していく。

 さっきよりは前へいくがそれでも数センチもしたら痛みかでてきた。

「痛い痛い痛い痛い!!!ストップ!!」

「はいそのままいーち······にー·····」

 勘弁してくれ。背中と膝裏が悲鳴をあげてるぞ。

 いくら文句を言ってもやめない先輩との時間は20時の夕食まで続いた。

「姉ちゃんご飯できたよー」

 そう言ってとたとたと歩いて岡庭先輩の元へスポーツ刈りの背丈160はあるかないかくらいの男の子だ。

 小学生かな?いやしかし。世の中には見た目は子供、頭脳は不明。その名は病弱ヤンキー土岐愛美という前例があるからな。

「えーと。君、歳はいくつ?」

「何を言ってるんだお前。直(なお)は小4だぞ。そんな畏まらなくていいだろうに」

 これだから見た目と年齢がそぐわない者を見たことがない人は。

 あの人を一回見たら色々と驚きだぞ。

 あの性格でピンク色のパンツ穿くんだとか知った時は驚きだったな。

 椎堂のブラジャーが新調されてた時くらいの驚きである。

 いやいや。俺は変態ではありませんよ?ただ同居している際の不可抗力なのであって。ええ。違いますとも。

 とはいえ、ふむふむ。今日の夕飯はキャベツ入り炒飯ですか。

「おい。お前のはないぞ」

 先ほどの小学生がとんでもないことを宣った。

 なにを。お主の姉上からドナドナされたんだぞ。

 ならば食事くらい用意してくれたっていいじゃないか。

 見るからに食事はテーブルに10皿置かれている。

 今ここには姉弟2人いるから両親入れたとしてもあと6人いることになる。

 まさかここは8人姉弟だとでもいうのか。

「食事の数を見てるとこ悪いがうちは9人姉弟だぞ。父一人、子供9人で」

 マジか!?

 お父さんどんだけ性欲有り余ってんだよ!?

「ま、母親が浮気した結果離婚されたら世話ねえよな」

「いや、まったくだ」

 誰か!この姉弟にツッコミを!

 こんなの姉弟の会話じゃない!

「基本岡庭家はオープンだぞ」

 オープン過ぎるとだろ。

 と、ここでツッコミ役·····じゃなくて他の兄弟もやってきた。

 それもぞろぞろと7人の野郎共

 「岡庭先輩?···ここに女子は?」

「?······私1人だが?」

 俺は崩れ落ちた。

 9人もいるんだから綺麗どころのかわいいお姉さん妹さんを期待してたのに見事に男とは·····。

 褐色の男勝りな゙陸上系女子1人なんて·······。

 中学生男子の性欲はどこへ向ければいいんだ!

 俺のオカズ(椎堂)を返せ!

 と、半分冗談はさておき。ぞろぞろと椅子に座る野郎共。

 その中には父親らしき筋肉ムキムキのガタイのいい壮年の男性の姿もある。

 俺は岡庭先輩が米をモグモグ。キャベツをハムハムしているのを凝視してみる。

 この時、どうするラブフルのボーズをするのも忘れない。

 こうすることで相手は気が散って食事どころではなくなりさすればこちらにお恵みが。

 と、思ったら首根っこ掴まれた猫みたいな扱いで自室へボイされた。

 おい!そこはご飯をあーんする流れじゃないか!

 どうなってるんだこの家は!

 椎堂家でもそんな事なく、楓さんにもしてもらってないことも棚にあげた願望であるが、チャンスはあったはずだと思い込む。

「ジャンジャカジャ~ン♪」

 ともすれば。なにやら外から聞こえる声が。

 窓をそっと開けてみる。

「えへへへ♡」

 俺は握られたおにぎりだけ奪ってまた窓を閉めた。

「ちょっと!命の恩人にそれはないんじゃない!?」

 確かに食糧の調達には感謝したい。

 それが土居先輩(ひとでなし)でなければだが。


 「おかえりくださーい」

 この人との距離感はこのくらいでちょうど良いだろう。

 その当人はというと····。

 なんと岡庭先輩が中へ入れている状況であり、したがって俺の眼の前までやってきた。

「ふっふふ〜ん。お姉さんとい·い·こ·と。しよ?」

 またですか。

 今度はどんな企みがあることやら。

 というより、この人の考えてることがよくわからない。

「はぁ~」

 と、思ってたら後輩の目の前でため息をつくではありませんか。

 そんなことをするのは楓さんだけかと思ったが、この人もか。

「一応話は聞きますよ」

「ありがとう」

「本当に聞くだけだけど」

「おい」

 ジト目を向けられて喜ぶのは楓さんだけですからお止め下さい。

「とはいえね。女子の問題だから、君に話す事は何もないのが現実なんだけどね」

「それは良かった。そこ話されても困るだけなのですぐにお帰り下さい」

「待て。あたしの悩みが解決してないんだけど」

「他をあたって下さい」

 役に立たない後輩だなと愚痴を垂れながらグダグダと去っていく土居先輩が居なくなるとまたしばらくは独り身になる。

 暇になった為、部屋の中を物色することにした。

 ランニングマシンに20㌔のダンベル2個。後はトレーニング関連の書物が4段の本棚にびっしり。

 さっきの柔軟で身体じゅう痛みのある俺にそれらは興味がなく。机の上のノートパソコンを起動することは必然だった。

 と、するとデスクトップに『お気に入り』と書かれたフォルダがあったのでクリックして中を見る事にした。


 そこにはムッキムキな男の人の裸の写真がびっしりと。中には写真同様の男の人が2人してくんずほぐれずヤッてる模樣がおさめられた動画も次々と出てきた。

 

 俺は思考停止に陥った。側にイヤホンかあったがそこまで使いたくなかった。

 ここは何もなかったことにした方がいい。

 そう思い電源を落とそうと······したところで扉を開けた岡庭先輩と目が合った。

 見えてないだろう。だってこのタイミングで扉を開けたのだからバレてない。そう思いたかった。

 だが岡庭先輩の表情から察するに扉の隙間から覗いてしまったのだろう。そして入るタイミングが遅れたのだろうことが予測できた。

 なので俺はラ○ンを起動した。

「平間さんに偶然俺のスマホで撮った男の特大シンボルの写真を送ったらどうなるかな?」

「私の部長イメージが崩れるから止めて!!なんでも聞くから本当にやめて!!」

 この陸上部元部長は性欲が強かったようだ。

 先輩女子の弱みを握れて楽しんでいる俺である。



 それからというもの、俺は岡庭先輩の部屋にいながら食事を分けてもらったり(あーんも忘れずに)、肩を揉んでもらったり、そのお返しに胸を揉んであげたりして楽しんだ。

 なんとも部長の悔しそうな顔が目に浮かぶ。いや、目に焼き付けている。

「なあ?そんなにいいか?私の胸が」

「何言ってるんですか?さすがは陸上部部長と言えるその筋肉質な引き締まった身体に形もハリも良いときたら揉みごたえ抜群ですよ」

「大声で言うなよ。弟達が聞いたら何て言うか···」

「え?兄弟から近親相姦の輪姦されてないの?」

「されてるかぁ馬鹿!!」

 おかしいな?エロ漫画ならよくある展開なのに···

「やってたら問題だろ····」

「お姉ちゃんは性欲剥き出しなのにね」

「お前覚えてろよ···」

 おお怖い怖い。蛇のように睨んてくる。

 俺は適当につけたテレビを見るでもなく見ながらスマホをチェックしてみる。

 ラ○ンを起動すると楓さんからが1件、椎堂から2件。平間さんから1件きていた。

 楽しみは最後にとっときたいのでまずは平間さんの内容を確認する。時刻は20:40とある。

『ういっす。明日、数学の宿題を写させてくれー』

 これはまた珍しい。こういうのは姉岳さんや皆河さんとかに見せてもらってた光景が浮かぶのだが。

『メグミもネコもいい加減自分でやれってみせてくれなんだ(シクシク泣いてる柴犬スタンプ)』

 自業自得のような気もするが仕方ない。

 数学はそんなに得意ではないが平間さんよりはできる自信だけはあるので見せることに······待てよ。

 俺は自分の通学鞄を探り出す。

 そこにある件の数学問答集には課題に指定された部分が白紙になっていた。

 いかん!これでは平間さんを笑えない。いやいやいや!そこじゃない!俺も怒られてしまう。

「岡庭先輩···」

「悪いが私も駄目だぞ」

 頭が筋肉だからですか。

「お前は頭が猿だがな」

 なにをー。猿よりは賢く先輩を脅してるぞ。

「女を見る目が猿なんだよ。まったく、私にパンツも穿くなと命令するのはお前くらいだぞ」

 それはそれは。男に恵まれてないようで。

 その岡庭先輩の格好は、ジャージの上と下にTシャツのみ。一生懸命裾を伸ばしてなんとか下が見えないようにしているからギリ見えてない。

 でも大丈夫。ちゃんと穿いてないことをこの目で確認したのでその下は大事な部分が見えるようになっている。

「もうおよめにいけない」

 そんなことも言ってたような気がするが気にしないことにした。

「あ、そうだ」

「今度は何!?」

 よほどノーパンが嫌だったのか表情が恐怖に彩られている。

「------ちなみに岡庭先輩、異性にアソコを見られた事は····」

「ないよ!兄弟に間違って風呂入ってきた時以外はないよ!」

 それは無いの判定でいいのだろうかと思うが、まあ、本人が無いと言ってるのだから無いのだろう。

 と、違う違う。今ここで聞きたいのはそんなことじゃなかった。

「おっぱい見せて下さい」

「お前は頭がわいてるのか」 

 そうすれば勉強する気になるっていうのに

「女の大事なところ見といてまだ言うか」

 お、そんな態度に出るのか。なら仕方ない。

「平間さんにこの裸の男達がわいてる動画をポチッと」

「わかったから!いくらでも見せてやるからさっさと勉強しろ!」

 やったー!さすがは部長心が広い♪

  

 そうしてやり遂げた数学の問題集は20分でやり遂げ、安心して眠りにつくことに。

「おい。誰が一緒のベッドに寝るなんて」

「もしもし平間さん?」

 俺が電話したことで態度が180°くるりんぱ

「数学の問題集できてるから明日持ってくね」

 ぽこんという通話を切った音を残し、岡庭先輩がこちらに背を向けて寝てしまった。

 まあ俺は楓さん一筋なのでこのくらいのサービスで良しとしよう。



 そうして朝を迎えた結果······。

 どうやら岡庭先輩のほうが早起きのようだ。

 朝の6:30に目を覚ましたらもうすでにセーラー服に着替え終えている岡庭先輩がいた。

「······てっきりジャージで登校するかと思いました。」

「陸上部現役の頃はそうしてたが、今は受験生なんでな。そこはしっかりしないとな。まあ、朝練の癖で5:30にはもう起きてしまうがな」

 ハハハと笑いながらそんな事を言ってるのだが、その後にランニングをしていたのだろう事はわかる。

「なるほど、それはつまりもうすこし早起きすれば岡庭先輩の下着姿も見れるしシャワーシーンも見れるよ的な催促ですね」

「よし分かった。これ以上私の家にいると私の身の危険を感じるからお前は帰ったら別の家に行け」

 椎堂がどうのこうの言ってた割にはなんて人だ。

 俺を野放しにしたところで帰る家は椎堂の家になるじゃないか。


 

 とりあえず登校はすることに

「なあ?お前に親戚は居ないのか?」

「居はしますけど、椎堂の親が離れるのは寂しいだろうと気を遣った結果、こうなったんです。」

「うーん。確かに友人と離れるのは悲しくはなるが·······いやしかし。椎堂の事があるから離すべきだろ今は」

 なんとも現状にコミットした結果な事。俺は反論できやしない。

「それによって私の性癖暴露の効果も薄くなるし」

 それはどうだろうと思うがこのまま勘違いさせたほうが俺にとっては良いのでそのまま話だけ聞かせてもらう事にする。


 


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