狂ったもの 都時彰編22
このままでは平間さんの謹慎だけでは済まなそうだったので職員室に行き、クラス担任の三吉先生に報告する。
すぐに現場に駆けつける先生だが普段が強く発言するのが苦手なタイプの先生らしく。生徒達に舐められてるようでそれ以上椎堂に攻撃はしないものの誰も知りません何もしてません。平間さんと木場さん梶姫さんがやりました。私見ました。俺もと事実とは違う方向へと先生に報告していく。
それを違うと言いたいのだが、一生徒の発言が事実だと言うのは難しく、椎堂さんを保健室へ連れて行くので自習してて下さいと言うのがやっとだった。
俺のクラスの坂本先生のような我関せずといったタイプもなんだが、優しすぎて発言力の弱いタイプの三吉先生も困ったものだった。
が、今の御時世生徒を叱るのも難しいというのもあるだろう。親によってはパワハラだと訴えるケースもあるのだとか。
この先生でなくとも難しいのかもしれないが。今は椎堂の事が優先だった。
先生の後に続こうとする木場さん梶姫さんだが背後にいた氷見先生に首根っこを捕まれ生徒指導室という名の空き教室へ連れて行かれる。
もちろん、平間さんも有無を言わせない気迫で自分の足で向かうことになった。
俺は教室へ戻るように三吉先生、氷見先生の双方から言われ戻らざるを得なかった。
椎堂には謝っても謝りきれない事をしたと後悔がのしかかっていく。
中学生は大人というには精神的に未熟で。
大人に頼る部分が多くて。
でも、小学校から上がった事で何か自由になったんじゃないかと錯覚してしまう部分もあり。
でも、大人の対応というには程遠いものがあるのも事実で。
俺が戻る頃には給食も終わる頃だったが、姉岳さんが袋にパンと牛乳を入れて近くまで持ってきてくれたのでそれだけ食べ終え、1階にある回収する場所まで持っていく事までしてくれた。
後日には平間さんが自宅にて一ヶ月の謹慎処分とクラス担任から聞かされ、今年から陸上部の大会出場停止を言い渡される事まで決まったということが土居先輩からラ○ンで知らされた。
で、こうなると何が起こるかと言いますと
「これはどういうことかな?」
放課後、土居先輩の家まで連れてかれて事態の説明及び契約破棄になった事への苦情を受ける事になった。
「それにつきましては俺からはどうすることも····」
「そう。ま、あたしもいじめにつながる事しちゃったしね。まさかあそこまで怖がる事になるなんてね」
考えれば分かるだろと言いたいが俺も人の事が言える立場ではない為言い返せない。
「まあ、これであたしの陸上部での輝かしい未来も無くなった訳だ」
「本当に陸上部は活動できないんですか?」
「無理だね。陸上部内での暴行事件って事になってるから」
「今回って学校内の話だからセーフじゃないの?」
だが土居先輩は嫌な顔をして首を振る。
「それがね····。」
「平間さんに薬物所持の疑いが大会主催レベルにまで知れたんだよ」
その話を聞いただけで事実はどうであるかわかってしまう。この人のせいだろと、そう。
「土居先輩?あなたがやった事ですよね?」
「いやー。本人の大会出場禁止くらいで済むとおもったんたけどね。でも、偶然って怖いよね?だって昨日、中の鳥中学との合同練習があったからその際にちょっと平間さんのロッカーに薬物仕込んでおいたらさ。暴行騒動の事もあるから相乗効果で犯人に仕立て上げることができるし、あの中学って大会の常連さん。あ、それはうちも同じか。だから、平間さんの事はマークしてるからこれが事実なら間違いなくそうなるなって思ったのにまさか中学全体なのは酷くない?あたし、ここまでしたのにさあ」
俺はこの卑怯者の腹を思いっきり殴ってやった。
まだ脅しが効いてるから攻撃されることはないと思っていたのだろうが、それよりもこの人の事が許せなかった。
ただ、それは向こうも腹パンされてふっ飛ばされたことで機嫌は最悪を通りこしているだろう。
なにやらスマホを起動させているが、予想はできる。
「今、芹沢さんにあたしとあなたの騎乗位の動画送ったから」
何も考えず感情に任せて殴った結果がこれである。
俺自身、ヤってしまったあの日からどこかでバレないかとヒヤヒヤしてたのは事実であるので、どこか冷めた目で見ていた。
「でもあれだよねえ?これ、あたし。感謝されるべきだと思わない?」
この人はどれだけ人を怒らせれば気が済むのだろう。
俺は無言で土居先輩の胸ぐらを掴んで睨んだ。
だが、相手にビビる様子はない。むしろ、笑っているだけだ。
「だってそうじゃん?考えてもみてよ。芹沢さんって顔はかわいいでしょ。スタイルも良いし。胸は別にしても」
確かにそこには同意である。
「で、そんな彼女に彼氏ができました。その相手があなた。そう、顔に火傷のある男って不釣り合いだと思わない。」
俺は自分で気づかないフリをしていた。
そんな事はとっくに分かっていたのだ。
俺は楓さんに相応しくないんじゃないかと。
周りの視線なんて気にせずにやってきて······。
「彼女、すごいよねえ。教室の前で会った時に他クラスの生徒から『男の趣味が悪い』って聞こえるように陰口叩かれてもそのまま素通りするんだから。言われ慣れてるのかもしれないけど強いよね」
俺は自分が知らないところで楓さんが耐えてるのと思うとショックだった。
そうだよな。こんな顔の男と一緒に登校したりすれば他の生徒はそんな風に思うよな。
だったら楓さんの為にもその方が良いのかな。
「じゃ。あたし、この後出かける用事あるから帰って良いよ」
その言葉を聞いたわけじゃないが、よろよろと立ち上がり自分でもはっきりと覚えがないまま家へと向かった。
家への扉を開けた瞬間に待ち受けていたのは楓さんからのビンタだった。
「最低」
こちらの言い分も聞きたくないようで空も暗くなるのにそのまま帰っていく。
今回の事で楓さんも味方になってくれないだろう。
椎堂も俺についてくれないようで布団を被ったまま顔も見せてくれなくなった。
この家に居ても居心地が悪いだけなので自転車で街をぶらつく事にした。
ポケットに母さんと父さんからの小遣いそれぞれ5000円ずつを入れて。それが俺の全財産だった。
とにかく誰にも会いたくなかったのでコンビニでおにぎり10個とペットボトルのスポーツ飲料を500ミリリットル一本買ったら、街を抜けて更にその先へ。
ついた先は山だった。
そこまで来る途中から雨も振りだしてずぶ濡れになるが構わず自転車を置いて木々の中を歩いていく。
コートの一つでも羽織ればよかったかと考えが過ったがもう今更だと片付け。途中、木に手をつきながら山の上の方へと登っていく。
と、そこの山頂に家があった。
珍しくこんな所に建てる物好きもいるんだなと思ったらそこの扉から誰か出てきた。
雨で視界がぼやけて誰だか分からない。
分かるのは青色の傘をさした黒のジャージ上下だということくらいなものか。
そして目の前までくると誰だか分かった。
その人物は俺の手を取って家の中へと入れてくる。
家の扉を閉めたあと、そこで脱ぐように言われ靴を脱いだ。
「はい、この中に服を入れて。今、お風呂入れてるから」
········どうやらこの先輩的には全部脱げの意味合いだそうだ。
「······本上先輩?羞恥心とかないんですか」
どうやらここは本上先輩の家のようだ。
洗濯かごらしきものを持ってきた本上先輩はおれのリュックも濡れていたので中身を確認しつつ全部濡れてるそれもかごに投入してしまう。
「廊下が濡れるよりはマシだから。さあ脱いで、あ。張り付いて脱げないなら、はいばんざーい」
俺は子供か。
だが、雨にうたれて服が体にまとわりついて気持ち悪いのは本当なので仕方なく本上先輩には幼稚園の先生になってもらおう。
ズボンは自分で脱いで、上へ上がらせてもらう。
「待って。それも脱いで」
俺が死守したかったトランクスタイプのパンツを本上先輩が両手で下ろしにかかる。
が、俺も相手は普通じゃないとはいえ女の先輩。ここで俺の息子を見せるのは恥ずかしい。
「風呂場で脱ぎますから」
「パンツも水が滴ってるから!これも脱いで、ここ山の中だから床が乾くのに時間かかるんだよ。いいじゃん、大したサイズじゃないんでしょ」
下ネタをぶっこむなこの昆虫少女。
それを言うならまず髪の毛から濡れたまんまなのでまずタオルが欲しい。
「あ、忘れてた。はい」
そう言って渡されたのは本上先輩のジャージを脱いだ中にあるタートルネックの服を渡してきた。
その瞬間、本上先輩の体は長袖のシャツを着ていた。てっきりブラジャーのみの光景が見えると思ってしまった自分が恨めしい。
渡されたタートルネックは素材がモコモコしてて高級感溢れる感じで使うのを躊躇いながら頭から体から拭いていく。
そうしてる中に本上先輩はパンツを脱がせてしまった。
「ギャーーーーーー!!!」
こっちが驚いてるのも構わず、それを入れた籠は洗濯される運命を辿った。
とっさに息子が見えないように被せたが女の先輩の服でアソコを拭くのは忍びないので他の部位だけ拭いてから股を隠すのに使う事にした。
これをまた本上先輩はプライベートで身につけるのかな。あの人なら気にせずやりそうだから怖い。
絶対精子がつかないように(そもそも興奮してないからつく訳がない)しながら浴室へと向かう。
なんか俺、女の先輩の家にお風呂入る事多いなあ。
この先輩相手に性欲も何もわかないの慣れてしまった展開にシャワーを使いずぶ濡れの体を温める。
「あ、アキくん。その後貸して」
裸で浴室にいる本上先輩に全身流してからヘッドを渡す。
「はいはい。体を洗うタオルは·····」
「鏡の左上」
確かに鏡の左側の椅子に座った目線の少し上に銀色の棒に引っかかったピンク色の網状のゴワゴワした感じのタオルがある。
鏡前が膝より少し下らへんの高さで木板が台になっており、そこにシャンプー一式と石鹸が揃っている。
ボディソープと書かれたボトルがあるのでプッシュ形式なってるそれをピンクのタオルに出して体を洗っていく。
え?本上先輩が入ってる?
いいのいいの。あの人のキチガイだから気にしなーい。キニシナーイ。
だが、気にしなければならない時もある。
「本上先輩!!おっぱいで背中を洗わなくてもいいですから!!自分のを洗って下さい!!」
「分かった」
まったく·······。
何考えてるんだこの先輩は······。
「じゃあアキくんの背中でわたしの胸を洗うことに」
「詭弁はいいからやめて下さい!!」
「アキくんのアキくんが大変な事になるから?」
この人は·····後輩男子に下ネタを言うその頭はどうなってるんだ。
「まあこれでアキくんも元気になったみたいだし」
「どこ見て言ってるんですか!!セクハラですよ!!」
これ本来は言う側逆なんだけどな。
だが、この人に絡むと余計何かしそうなので気にせずに見せるものは見せてから体を洗う作業を続けていく。
「あ、そういえばアキくん」
「なんですか」
まあこの際、ボディタッチがないだけマシか。
ここで思いっきり息子を握るような真似をしてきたらその胸を握りつぶそうかとおもったからり
会話くらいなら許す。
「皮剥けてるんだね痛い痛い痛い!!アキくん!!女の子のおっぱいを強く握っちゃだめだって!!」
この人は喋るのも禁止だな。
楓さん相手だと握れる程どころか揉むことも叶わないからなぁ。
「もう!もげたらどうするの!」
そうなったら楓さんと親しくなれる事請け合いだと思います。
「で、何があったのかは言えない?」
まあ手段はともかく、この人なりに俺に何かあって慰めてるんだろう事は分かったが
「楓さんにフられました」
「ほうほう。···········ええええええええええええええええ!!!」
山奥とはいえこれ、熊とか居たら襲われるくらいの大声なのではないか?
「え!?なんで!?あんなお人好しカップルが!?何!?浮気!?浮気なのね!?目が泳いでる時点でアウトだよアキくん!!さあ尋問の時間だよ!
!」
この人って鋭いところあったのかとか思ったが、小さい虫を相手してるのだから小さい事に気が回るのかもしれない。
俺が浮気?土居先輩とヤったのだからこれは浮気か。と納得できるが楓さんと別れた喪失感が大きすぎる。
「とりあえず悪いのはアキくんとして」
「待て!!何か落ち込んでる後輩男子をとりあえずで悪者にするな!!」
「じゃあ違うの?」
ジト目の本上先輩に俺は顔を反らして口笛を吹いた。
ら、俺の顔を手で包んでグインッと強引に真正面に向かせる。
「話しなさい」
あなたはその手を離しなさい。
首にえらいダメージを受けましたよ。
この先輩がこうも無理矢理事を進めるなんて珍しいなと思った。
「ただい·······ま······」
と、そこへなにやら中年男性の声と共にお風呂の扉が開かれた。
三者三様。時間が止まったかのように感じられただろう。
本上先輩は俺の顔に手を置いたまま、中年男性の方を向いて「あ、おかえり」と返事。っていや!この人、時間大して止まってねえ!
対して俺はこの人誰だという疑惑と全裸で見知らぬ男性もとい推定本上先輩父相手に戸惑いを隠せずにいて。
殊更、白衣に無精髭。額に皺のある色黒のこの方につきましては娘が見知らぬ男性とお風呂に入ってて状況的にキスでもするのかと思わせる光景なのだから当然思考停止を余儀なくされており。
と、その前にお父様?普通、思春期の娘のお風呂を覗くような真似しますか?
「田鼈、後で話があるから部屋まで来てくれ」
いやお父さん!!違いますよ!!多分思ってるのと違いますよ!!これから致すような事は一切ないですからね!!
「ん。分かった。後でね」
そして実の娘はなんでそうも冷静に対応なの!?おかしいって!!
そのお父上はなんとも悲しい顔をしてお風呂の扉を閉めて去っていったという。
「本上先輩?あの人って····」
「お父さん」
この状況で喜んで言うその根性は何なんだ。
「普通の父親はお風呂場から娘の裸を見たりしないんですけども」
「ああ。大丈夫、わたしもやってるから」
いや!余計大丈夫じゃない事態なんですけども!
大丈夫か本上家は!?
「母親は」
が、俺が何気なしに聞いたその一言に機嫌を悪くした本上先輩。
「離婚してるからいないの」
その顔は少し怒ったように眉毛を釣り上げ、頬をぷくりと膨らませた。所謂あなたがそれしてもかわいいだけという事になっていた。
だが内容が内容だけに気まずい雰囲気になる。
そうだった。前に外村先輩から聞いてた事を今思い出した。
「ごめんなさい」
「ま、いいけどね。研究熱心なお父さんだし、そこにお父さんが悪いなんて責められないし。研究者なんてタガが外れてるくらいが普通だと思ってるからわたし」
さいですか。そのカテゴリでいくと、あなたもノーマルだってことになるんですか。
そのまままた体を洗い出す本上先輩。
「わたしが小学校3年生のときにね。お父さん、その日さん徹夜続きで仕事してて、深夜に仕事が終わったみたいでわたしが『臭くて寝れないからお風呂に入って』って言って入らせたんだけど」
小学3年生で父親と一緒に寝るのはどうなんだとツッコミたくなるがここはぐっと我慢する。
「わたしは先に寝ようとしたんだけどお父さんの3日もお風呂入ってない匂いが引いてて眠れなくてさ」
眠れなくなる女王。星宮先輩と椎堂に継ぐ3人目が現れた。
「で、そのまま目を開けて横になってたら最初カチャカチャ服を脱ぐ音からシャワーの音から髪を洗う音やら浴槽に入る音までしたんだけど」
いや、覚めてるとはいえ父親の風呂の音を聞く女子小学生とはいかに。
「そこからガタン!ってすごい音がしたからお風呂にいったらお父さんが浴槽に沈んでてさ。意識もなかったから急いで救急車呼んで助かったんだけどさ」
だからと続けてこう締めくくる。
「わたしもお父さんもお風呂を覗いて溺れてないか見る事にしてるの」
と、言ったから納得する。
「ま、家族だしお風呂見るくらい大したことないよ」
「すみません家族でもないのに一緒にお風呂入ってるんですけどよろしいんですか!?」
「ん?あー。いいのいいの。わたしの裸なんて大した事ないし」
楓さんと比べたら大した事あるんですよ。
「さてと。お風呂入りがてら昔話に付き合ってもらうよ」
いや本上先輩?多分貴方様のお父様は後で話があるとは言ったけども早く来て欲しいと思うんです。
おそらく座布団用意して挟んで会話する準備をしてるかと。
「むかーしむかーし、あるところに本上田鼈というかわいらしい女の子がおりました」
勝手に話し始めた、浴槽に入りながら。
自分のことをかわいらしいとか言う女の子はどうかと思うので先に出ます。
が。俺のお尻に柔らかい感触を与えながら絡みついて離さない腕が2つ。
どうでもいいが、俺と本上先輩とで触れてる部分は双丘という意味では同じなのに感触は雲泥の差なのはどういうことだろうか。
一つの山の大きさ的にはこちらの方が上なのにである。
大きさ=柔らかさではないと?
そもそも物が違うと?
そうですね。俺の胸なんて楓さんと同レベルですもんね。
本人に言ったらブチ切れること必須なので心の中だけに留めますけども。
「話をきーーーいーーーてーーーーー!!いいじゃん!先輩の話を聞くのは後輩の役目だよ?」
先輩を盾に強制するんじゃありません!コラ!そこは握るところじゃないから止めなさい!
大きくなっちゃうでしょ!?
「へへ。今ならお口でしてあげるよ」
結構です。
しがみつこうが相手は先輩である前に女子なので無理矢理出る事は可能である。
が、どうも本上先輩を振り解く事はできず。それどころか、本上先輩が俺のを手で扱(しご)くものだから足腰もぷるぷるしながら一歩一歩踏みしめるように歩くのがやっとななか、俺の亀さんの頭から白いのが無理矢理出る事も可能である。
それも本上先輩の着替え(薄ピンクのレースのブラ、パンツとあって下にモコモコな毛布みたいな生地のパジャマ)に、勢いよく大量に全体にまんべんなくかかってしまった。
「あ~~~~~~~~~~!!!!!」
さすがにこの事態には驚きを顕にする本上先輩は海パン芸人が下手こいた時にやるポーズをとっていた。
こちらは全裸なのですが、その体勢はお尻からアソコから丸見えですよ。
つい見てしまうのは思春期男子なので仕方ないのです。
「わたしの赤ちゃんがーーーー!!!」
この人もう駄目だと思う。
「ちょっとアキくん!このお詫びにわたしの中に出してよ!」
「それはお詫びじゃなくて被害増大というんですよ!とりあえず服を·····着れないですよね」
「まったく!こんな服着て家をうろついてたらわたし変態だよ!」
もう既に変態なのですから問題ないと思います。
かといってこのままなのは絶対駄目なので、俺用に用意してもらった黒のジャージを本上先輩に着てもらってまた自室から俺の為の服を持ってきてもらうことに。
その結果、背中に『夜露死苦』とかかれた特攻服にレースのパンツという出で立ちで本上先輩の父親と三者面談することになった。
········本上先輩?他にチョイスあったと思いますよ?
ポクサーパンツは他にもあるでしょ?
え?自分が普段穿くパンツを人に穿かせたくない?
レースは普段穿かないしそもそもそのレースは外村先輩が女子っぽい下着を買えとうるさいから買ったもの?
だからってあんまりだと思ったからポクサーパンツを穿こうとすると必死に阻止しようとするという謎の羞恥心を発揮する。
本当になんなんだこの人は!?
羞恥心の基準が分からない。
「貴様はふざけとるのかぁああああああああああ
!!!!」
いや、これ。おたくの娘さんのコーディネイトですけども·····。
まあ、目の前に出てきたらそう言いますよね。気持ちは分かります。
「お前なんかに大事な娘を嫁に出せるかああああああ!!!」
でも、こうやって常識的な話ができるだけでもありがたい。
本上先輩のお父さんだから気狂いが出てきそうでこちらと話が通じ合わなかったらどうしようかと思っていたし。
「それはうちの家内の服だぞ!!それを嗅いで離婚した悲しみを我慢してたのにコンチクショー!!!」
うん、知ってた。この人本上先輩の父親だ。
度肝を抜くレベルのアウトローだぞ。
「そんなことよりお父さん。話って何?この後、アキくんと昆虫コレクションを見せる予定だから早くして」
この娘も娘で空気を読まない。
怒り狂ったヤツの血走った目が分からないのか。
「そうかそうか。ならアキくんと言ったか」
「都時です」
ここでいい年したオヤジにまで愛称呼びされるのは嫌なので名字で呼ぶ事をおすすめする。
「君はうちの娘とどこまでイったのかね?」
なんでここの父娘はそろって空気を読まない発言をするかねえ。
実の娘もいる前でそんな話題をよくするなー。
「何もありません」
「え?キスも胸も揉まれてさっきわたしの服に精子かけたじゃん?」
当然の事を言ってこれ以上波風立てないようにするが、空気を読まない娘のせいでその望みは叶わなかった。
「·······貴様は服を着たままするタイプなのか?そんなマニアックな人間にうちの娘はやらん!!」
ゴゴゴゴと地響きがするような効果音をあげて怒ってるところ申し訳ないですが、俺はマニアックでは無いという点がひとつと、あなたの娘自体が既にマニアックな人間なので相手もマニアックでないと付き合うのは無理だと思うんですけど。
マニアックが引き寄せるのはマニアックだけだと思うのです。
もしくは相当なお人好しかのどちらかか。
「まあ、なんだ。この雨の中すぐ帰れとは言わないが明日、晴れたら帰るといい。それまでは僕の部屋で寝るといい」
俺としてはこのままもう1つの選択肢を選ぶと気づいたら妊娠どうこうな展開になりかねないので向こうからそう言われてるのならば喜んで
「お父さん、わたしの部屋で」
「却下」
俺もお父さんと一緒の考えだ。却下
「そこをなんとか」
「できません」
「もうカブトムシ採ってきてあげないよ」
「うぐぐ········駄目だ」
あ、昆虫学者としての意思と常識を天秤にかけた。まだ揺らがない。いいぞ。
「裸で抱き合って寝るのも禁止にするよ」
「だ!·······駄目だと言ってるだろ!」」
「何をやってんだそこの父娘は~~~~~~~!!!」
さすがに常軌を逸した内容に部外者でも突っ込まざるを得なかった。
俺の大声に二人して呆けている。
「他に寝れるスペースはないんですか?昆虫の居ないことを前提で」
俺は折衷案として他に部屋がないか聞いてみた。
中を見る限りまだ、部屋数が1階に4部屋、2階にも、1階と同じ間取りなら4部屋はあると思う。
「ちょっとまってよー?ここは季節モノにしてるし
」
「ちょっと待った」
「何?」
「季節モノってなんですか?」
「そのまんまの意味だよ?春には蝶々、夏には蛍やカブトムシ。秋ほコオロギで、冬には。あ、今の時期はサナギばかり冬眠中だから大丈夫でしょ?うるさくないし」
そう。今は11月、ならば冬眠中だからうるさくはしないだろう。しかし······。
「床まで占拠しているこの状況で寝れませんよ」
今現在いる部屋がそれであり、そこは床に5段くらいの虫の入ったケースが人が1人通れるスペースで点在している状態だった為に、朝起きたら目の前に昆虫なんてことになってしまう。
そんなのはいやだ。
「んー?わたしは平気だけどな」
「そうだね。今の子はよくわかんないね」
あんたら父娘がおかしいんだよ。
「で、隣はお父さんの部屋でしょ?2階はわたしの部屋、ゴキの部屋2つ目。あと、奇蟲部屋に標本やら他の昆虫達の部屋になってるから」
じゃあ台所で寝ますと言うと
「「アキくん(きみ)、常識で考えて台所は寝る所じゃないよ」」
もうこの二人に突っ込んでると疲れるので洗面所のバスタオルで寝る事にした。
翌朝、俺は台所で寝てるところにドナドナしようとする父娘がいるから鍵の掛かる扉のある洗面所に移動した。
して邪魔する者がいなくなったのは良かったが、山の上というのはこの時期寒く、夜は特に冷え込んだ為大量にバスタオルを敷いたり掛けたりして凌ごうとはしたがそれでも朝方には体調を崩してしまった。
俺は重い体を持ち上げて鍵を開ける事はできた。
そこへ人が1人2人3人わらわらわらわらん?
おかしい。ここの家族は本上先輩、その父親の2人だけのはず。
じゃあなぜこんなわらわらわら?
3人どころか5人。それ以上は数えるだけの頭が働かないままぐったりしてしまう。
「風邪だよね?」
「風邪だろ?」
「まったく情けねえ。こんなことならオレんちでも」
「まあ、あの先輩がやったんだろうし。今回は気の毒というべきか」
しばし、時間が空いて目が覚めた時には部屋に明かりが灯り、10畳程の広さのフローリングの床に布団が1つ。そこに俺は寝かされていた。
側には体温計、ペットボトル飲料水(ラベル通りなら水のようだ)。
何かおでこに貼られてると思って触ってみるとどうやら冷却材の類のようだ。今は冷えてないしザラザラした感覚がおでこに当たるだけであるが
そこへ内開きの扉が開き背の高い女が登場。
目を少し開けて快活な笑顔でこちらを見てくるその者の名を平間佐江というそうな。
「お、起きたか」
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