狂ったもの 都時彰編 19

「美人になったんだから良いじゃないですか」

「·········」

あ、無言で睨み出した。これはガチで怒ってるやつだな。

「ほっしー先輩って美人よりもかわいいって言われたいタイプでしたっけ?美人の方が良いと思うんだけどな~。かわいいなんて言われても大した事ないですよ。ぼくなんてかわいいのに残念とか言われますし」

いや、それは末尾がアレなだけで本当にかわいいと賞賛されてないからカウントできないよ。


「·······そもそも美人だと言われた事もねえから反応に困るんだよ」


「聞きましたかトトキン。すごくかわいい発言ですよ。良かった録画しておいて、あ。ほっしー先輩褐色肌だから分かりづらいですけど顔赤くなってる。顔が赤くなるくらい恥ずかし」

「皆河さん止めてあげて。ここで怒って部屋に閉じ籠られたらもっと面白い事できないんだからそこはあえてスルーした方がいいんだよ。あ、星宮先輩バニーガールがいいですか?チアガールがいいですか?選択肢は与えますので皆河さんに用意してもらってファッションショーでも」

「あーなる。そうだね、こんな良い素材なら色々試したいし楽しみたいね~。じゃあとりあえず布面積少なめの水着も追加でペルートに頼んどくから」

「おめえら先輩からかってんじゃねーーー!!!!」

あ、怒るどころかぶちギレた。

ドスドスという表現が似合う程床を踏む足音を響かせて地下にある星宮先輩の部屋へ向かおうとする。

俺も皆河さんも慌てた。部屋に籠られたら打つ手がないからだ。

まず皆河さんが追い付き星宮先輩に抱きつこうとするが全力の回し蹴りがくるのを皆河さんが後退して回避。その隙に俺がとにかく引き留めようとしたが躓いた結果星宮先輩を押し倒す。

俺が上になって星宮先輩の顔の両横に手をつこうとしたら胸に、腰の両横に膝をつく体勢。

俺の股間へ膝蹴りをかましてきた為動けなくなった。

結果部屋目前にいる後輩2人を残してバタン!と扉を閉める音、鍵を閉めるガチャッ!という音がはっきりと聞こえてくる。

「·····なあ?トトキンよ。声も出ない程痛いところ悪いが、きみはなにやら女子に金的される運命にでもあるのかい?」

そうですね。あなたのメイドにも蹴られましたもんね。使えなくなったらどうしてくれようか。

まあ、不本意ながら1度は使いましたけどゲフンゲフン!

でも、デきるなら誰でもじゃないですよ!

やっぱり楓さんとは1度シてみたい欲情は消えてません。

が、この事がバレると逆に俺が消えそうなのであの人が黙ってくれることを祈るばかりだ。

にしても······。

星宮先輩って意外にも胸あったんだな。柔らかいんだなって思っちゃった自分が情けないのと嬉しく思ってるのとなんだかなと。

でも、あれだよ?楓さんに比べてのあるだから実質少し膨らみがある程度だからな。

そして柔らかい。うん、そこ大事。

「······ほっしー先輩、この男。手をわきわきさせてるんですけど?」

「もっぺんけっとばしとけ」

「了解」

これは土居先輩とシた罰でも回ってるんじゃないかと感じてしまう。

ここの女子生徒は鬼か悪魔か。



そのまま待てと暮らせど。あ、1時間程だから暮らしてないか。星宮先輩は天岩戸の如く地下の扉を開け放つ事をしなかった。

仕方なしに今日は帰る事にしようと街中を歩いていると茶髪の根元から3センチ程残したパーマ気味の男が俺の元へ来た。

「都時くんだよね?椎堂さんと仲の良い」

当然、俺に馴染みのない人間だ。上に紺のパーカー。中に緑のTシャツかな。下は同色のジャージを着用。

愛嬌のある笑顔に好感がもてるが俺はノーマルなので残念。

「あ!私、左雨成江(さっさ なりえ)ね。椎堂さんとは陸上部で一緒だったからさ。君のことは椎堂さんからよく聞いてるよ」

左雨?なんか聞いたことあるような。

·············あ~~~~~!?

「アキレス腱の人!」

「ちょっとそれ誰情報!?酷くない!?人のトラウマ抉ってるんだけど!?椎堂さん?椎堂さんなのね!?あの巨乳は···潰れればいいのに」

ごめんなさい!!だって岡庭先輩だったり平間さんから聞いたから!!

その情報と珍しい名字の印象しかなかったからさ!!

「で?誰なの?」

その圧から逃れる事はできなくて岡庭先輩と平間さんを生け贄に捧げた。

「·····あの2人め。まあ、そだけどさ」

なんか後ろ暗い雰囲気が漂ったかと思ったらすぐ霧散してあっけらかんとし出した。

「その····歩けるんですね」

鼻息を吐き出して何か諦めたような表情をする左雨さん。

「あ。えっと····椎堂と同級生ですか?」

「先輩だよーーーー!!!そこんとこ聞いてないのーーー!?」

すみません忘れました。

「もう!西ノ鳥中学2年1組左雨成江14歳元女子陸上部だよ。よろしくー!」

女子でしたか。なんだかカッコいい男子っぽい顔立ちだからまた鷹峰先輩と並んでジャ〇ーズ的ポジからのBでLが始まるのかと思いました。

「あー。あの中二病男子」

知ってるんですね。

「まあ、アタシらの学年じゃ有名だしね。女の方とセットで」

中二病セットですな。新屋敷先輩もあの見た目じゃあ目立つわな。

「で、どうだい後輩。後学の為に足触っておくかい?」

なぬ?それはあれですか!?

今の内に女性慣れしておいていざ事を及ぶ時に慌てないようにするために。

分かりました。そうやって女の先輩が言ってるのであれば男の後輩は従うのみです。

相手の了解は得たので俺はまず、足の付け根から太ももにかけてのラインを丹念に揉みしだくように手を滑らせる。

「ギャーーー!!!違う違う違う違う違う違う違う!!!触っていいのはアキレス腱だけだって!!!」

なんだ。敢えて触ってみたけどやっぱりそうか。

左雨先輩は顔を赤くさせて息を荒げていた。

まあ女の子らしいモチモチ感溢れる肉付きの中にほどよく締まった良い太ももでした。

そのご本人は頬を膨らませてえらいご不満のご様子でした。

「まったく!!椎堂さんに言いつけるよ!!」

「でもすごく気持ち良かったです。ありがとうございます」

「いえいえこちらこそ····って!違うじゃん!!ここは謝罪の場面じゃん!!」

まあなんともノリがいい人で助かる。

「で、まあ。おさわりOKなんですか?だめなんですか?」

なんか既にどうでもよい空気であるが触れるものなら触っておきたいので再度確認する。

「········どうぞ」

見るからに嫌そうな顔をしてジャージの裾を捲るよう左雨先輩。

恥ずかしいというよりこれ以上変なコトされないか警戒されているもよう。

失礼な。これでも1度したらリビドーは治まるから問題ないというのに。え?信用ならない?

これは触らない脚に祟りなしってやつか。

「もう既に嫌な事されてるの!!それでニコニコしてたら変態だよ私!!」

そうですか。左雨先輩は触られて喜ぶ変態じゃないのですね。挿れられて喜ぶ変態なのですね。

「ちょっとこれ幼なじみ警察呼ぶ流れだよね?止めたって聞かないよ」

しまったーーー!!やりすぎたーーー!!

えらいこっちゃえらいこっちゃえらいこっちゃ!!

これは椎堂から説教だけですむわけがない。楓さんもセットで行われる通過儀礼になってしまう。

そこをどうしようか考えてると気づけば椎堂は今入院中だという事に気がついた。

「左雨先輩?ひょっとすると椎堂が今どうなっているかご存知ありませんか?」

その一言にこちらへ向けてキョトンとした表情でスマホを片手に固まる左雨先輩。

「·····何?まさか椎堂さんもアキレス腱を?」

「違いますよ」

どれだけアキレス腱切られた事への恨みがすごいのはお察ししますが。

俺は椎堂が入院するまでの経緯を説明した。

左雨先輩は二の句が告げなくなっていた。

「········ちょっと何を言っていいのか分からないけど。それはひどいよね 。椎堂さんの病院と部屋分かる?」

俺は椎堂の病室の番号を伝えた。

親が行く際についていく機会があったからそれで知っていた。

だがまた行こうとは思わない。平間さんが言った事とは別に全身拘束された椎堂というのを見てるとこちらも精神的に辛くなるからだ。

自分が原因でなんだと思うが、行ってどうこうできる訳ではない。むしろ嫌われてる今となっては行っても逆効果なだけだと思う。

「よし行こう」

と、なぜか左雨先輩。俺の手を取って歩き出すではありませんか。

「ちょっと待ってください左雨先輩。午後6時では面会はやってないですよ」

俺は平日は13時から17時まで、土曜日が13時から17時30分が面会できる時間であることを伝えた。

すると目をぱちくりさせる左雨先輩。

「そなの?」

この人、アホなんですか。この時間やってると本気で思っていたのか

「だってさ。嫌いのままはイヤじゃん。ならさ何度も謝って謝って。許してもらうまで謝るしかないよ」

それで仲直りできるなら世界は平和だと思う。

「とにかく。また行く時分かったら連絡するからスマホ貸して」

と、言われ貸そうと手を伸ばしたら雨がポツポツ降ってきたと思ったら、お互いこのくらいならまだ平気だろと思ってた為に歩いて近くの喫茶店まで歩きながら作業続行してたらすぐさまバケツをひっくり返したようなゲリラ豪雨になった。

それはお互いずぶ濡れになってしまい、スマホもオシャカになってしまったとさ。

「··················。」

「····························ごめん」

仲直りの謝罪の前にスマホを直してほしいと思う。



その後の左雨先輩の行動は見事なもので自分の家が近くだからということで男の俺を自分の家にあげ、左雨先輩の御両親はというと、父親はパチンコへ母親はパートに行っている為不在であるのだとか。

家は娘の左雨先輩1人だけだと告げ、浴槽に湯を入れてる間2人で入ろうと言い出しお互いシャワーを丹念に浴びて温まったあと背中を洗い流しあってって待て待て待て待て待て待て·······。


「左雨先輩馬鹿ですか!?」

「何が!?ねえ!?何が都時くんをそうさせるの!?」

「家に来てからの全部ですよ!?おかしくないですか!?貞操観念とか危機管理とか!?馬鹿ですか!?アホですか!?お風呂くらい先輩入った後でも良いですよ!?」

「そうしたら今度先輩の残り汁とか堪能しそうだし。それは······恥ずかしいから」

羞恥心のベクトルがおかしいぞこの先輩。

「そ!それに雨で冷えてるのに待つなんて嫌じゃん!?なら2人すぐ入った方がすぐ温まるじゃん!!」

もうこの人の考えがよく分からない。

俺は頭を抱えてうずくまった。

しかもこの人、演技じゃなくて素でやってる感じだから余計質が悪い。

頼むから中学生男子の前で股を広げたまま立たないで。別のモノが勃っちゃうから。

「ちょっと体屈めて大丈夫!?体調悪くなっちゃった!?」

逆にアソコが良くなっちゃったからこの体勢なんですけど分かりませんかねえ。分からないからこうなってるんですよねごめんなさい。

だって、中学生男子がこんなイベント断れる訳ないじゃないか。そうしたらこの人も止めずに進めるし。

「さ。お風呂入ろ」

だからなんでこんな場面で笑顔になれるんですか!?恥ずかしいとかあるでしょう!?

「狭くてごめんね。でも私も温まりたいからさ。」

湯の張った浴槽に2人して入るがお互い密着しないと肩まで浸かるのが難しいほどだった。

確かに氷見先生とも入った事がありますけども、年の近い女の先輩が目の前で体を密着させて背中に胸があたるなんて心臓への負担がヤバすぎる。

「じゃあこれで」

俺は、肌のスベスベな少し膨らんだ柔らかい胸の魅力と理性の間で闘いながら浴槽を出る。

「だめ。私が良いと言うまで一緒に入るの」

だが手を伸ばした左雨先輩に間違えて俺の大事な所を触られてヒャン!と変な声を出して力が抜けたところへまた浴槽に戻された。

今度は対面式で。

こうくると俺のお尻らへんに給湯口が有るため火傷しかねないため、左雨先輩と体を密着させて抱き締める形になる。

「───────。」

俺も左雨先輩も顔が赤くなった。

俺は恥ずかしくて声が出なかったが、左雨先輩は逆に空気を紛らわせるために話し出した。

「あ!あーーーー!!······都時くんも男の子だもんね!!でも、その·······私胸ないからさ。反応しないかなって。大丈夫かなって思ったからさ。ほら、椎堂さんからも一緒にいて襲ってこないって言ってたから私レベルじゃなんもないって思ったし」

アホがもう1人いたことが判明した。

椎堂、確かに椎堂の大きい胸見て興奮することはあるけどそこで襲ったら家族内の立ち位置が危ういことになるからな。分別はつけるぞ。

「あれだよ?私、男の子とこうしてお風呂入った事もないし」

でしょうね。あったら痴女ですよ。

「初めて男の子を抱き締めたし」

だからなんだというのだろう。こちらの体は反応するばかりだからこれ以上初めて連呼は控えてほしいのだが。

「さて。じゃあ出ますか」

いや、それ以上話もなく終わるんかい!脈絡もなく出るんかい!

まあ出る事に反対ではないから良いのだがなんか釈然としない。

しないため·····。

「コラ~~~~~!!私の入ってたスペースに入るな!!湯を飲むな!!」

せめてこの人にも俺と同等かそれ以上の羞恥心を与えてからじゃないと出られないため。多少殴られるのは覚悟で行った。

案の定、頭をベシベシ叩かれて首に腕回されてさらに膝蹴りを腹に食らった。

「ねえ!?あなた馬鹿なの!?人の話聞いてた!?駄目だって言ったよね!?」

左雨先輩には言われたくない。

と、俺はまた膝蹴りしてくる足を取りアキレス腱を触ってみた。

そこは本来人間が歩くためにある程度の柔軟性を持たせるために柔らかさがあるべきなのだが鉄の棒でも入ってるのかというくらい固かった。

「本当にアキレス腱切られたんですね」

「まあ。筋肉ってゴムみたいなもんで1度切られたら繋げても前みたいに自在に伸ばしたり縮めたりできないからさ。ほら切れた輪ゴムを結んで本来の長さより短くなる感じ。あれと同じ。結んだ箇所は固いし伸びづらいでしょ」

それは陸上部の左雨先輩としては致命的であり。

「これを機に陸上部止めたんですね」

「正確には席は残ってるけどこの足だから私が離れてる状態なんだけだね。ねえ?いつまで私の足持ってるつもり?」

ただいまの左雨先輩は左足だけで立ってる状態のため、俺の方にも少し体重が乗っている状態である。

左雨先輩右足の太ももは俺が頂いた。

「だから少し太ももも肉付きがよくぷにぷになんですね」

「指でつつくなつまむなーーー!ねーーー!スマホを壊した事は謝るからさーーもうやめてーーー!!」

そうなのだ。この先輩、あの雨の中俺のスマホを手に取って濡らしたどころか滑って落として走行中のトラックの下敷きにしたのだ。

だからこそのお詫びで一緒にお風呂なのかもしれないがそれだけでは許すまじ。

左雨先輩のスマホはその時まだポケットの中だった為無事なのが余計に腹立たしいったらありゃしない。

「で、ココは真っ黒なんですね。でも中はピンク」

「広げるなーーー!!ねえ本当に止めてってば!!」

「でも俺のも見たし触ったしなあ」

「た、確かにそうだけど······」

こういう時はおバカで助かる。

こちらの言い分に乗ってくれるから。

楓さんならこうはいかない。

「スマホ買い替えないとなぁ。誰かさんのせいで違約金も発生するから何万かかることか」

「分かったわよ!!好きになさい!!」

なにやら半泣きになりながら言っているが言質はとった。

「じゃあ·····」

俺は左雨先輩を押し倒した。

正直な話、女性に求めるボディラインって胸が大きいのはもちろんだけど、それだけじゃなくて引き締まった腰····も。良いんだけど性的な興奮という意味では少しお腹に肉がついている方がグッとくる。

そういう意味では左雨先輩はどストライクだった。

胸の方は······異性に揉まれると大きくなるっていうしこれからで良いか。

俺は楓さんにバレなきゃいいという甘い考えに陥っていた。

男子中学生がここまで裸の女性の先輩を見て何も起こらないわけがない。

「待って!!生はやめて!!ゴムはつけて!!」

仕方ない。ここで問題を起こすと困るのは俺も同じなのでズボンのポケットに···。

「左雨先輩?俺のズボンは?」

「え?さっき洗濯に出したよ?」

なんてこったい。

まだ洗濯機がグイングイン動いているじゃありませんか。おまけに所要時間は20分をさしている。

そんなに待てやしない。

「あーーーー!!!」

途端に左雨先輩が騒ぎ出した。

俺に慌ててタップし、起き上がるやいなや洗濯機の蓋を空け、手を中へ突っ込んだ。

「スマホをポケットに入れたまま洗濯しちゃった~~~!!ふえ~~~ん!!」

あ~あ、御愁傷様です。

なんかオーバーリアクションな気もするがスマホの洗濯騒動で性欲も失せてしまった為探して見つかったバスタオルを巻いて脱衣所を後にする。

左雨先輩もこのまま裸なのもなんなので後についていく。

「なんで裸で来るんですか!?」

「別に良いじゃん。既にもう見られてるし」

もう左雨先輩なに食わぬ顔してるし。感覚が麻痺している。

まあ俺が持っていったせいかもしれなんだけども。

左雨先輩が先頭に立ち、風呂場から左へ曲がりすぐの階段を上へ進む。

本人は気づいているか分からないが後ろから階段をのぼると左雨先輩のお尻が丸見えどころかその奥のモノまで見えるからまた反り立ってしまった。

「左雨先輩、背中綺麗ですね」

つい話してしまったが元陸上部なだけあって背筋がほどよくついているのが素晴らしい。

「ふふん♪背中で語る女なのよ私」

なるほど、喋ると馬鹿がばれるんですね。

「にしても····左雨先輩。寝癖ひどいですね」

「ちっげえよ!!これは天然パーマだから!!寝癖じゃない!!長くしても手入れ大変だから短くしたんだけどどうしても先がハネた感じは残るんだよ!!」

なるほどなるほど。だから全体的に髪の毛くるくるな感じになってるですね。まあ、頭の中身もクルクルな感じになってますけども。

言ってるうちに2階に上がった左側の一室が左雨先輩の空間らしく。そこに入った真正面のロッカーから着替えを出し、着ていく。

「左雨先輩?タンスとかは無いんですか?」

「あー。服を畳むのめんどくさいから全部ロッカーに服をハンガー毎かけてるの。前にタンスもあったんだけど洗濯した物を畳まずに床に散乱させてたら母さんに理不尽にぶち切られて。で、2つのロッカーが私の服の収納スペースって訳」

「どこが理不尽なのか逆に説明してほしいところなんですがその前に左雨先輩」

「なんだ都時後輩」

「なんで急に呼び方変える!?」

「今面白いなって思い付いたから。うん、決まり」

失礼ながらこの人が女子陸上部辞めてて良かったと思う。

これ以上椎堂にアホさ加減が移ったら大変な事だからな。

ここでニマニマ笑っているだけのこの人には俺がこんな事考えてるだなんて分からないんだろうな。

と、そんなことより今優先するべくは


「なんで収納スペース以外に足の踏み場もないくらい散らかってるんですか!!」


「アッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

この先輩は笑って誤魔化そうとしてるのが一目瞭然だ。

部屋は15畳はあるだろうかそのスペースは脱ぎ散らかされた服、下着。はたまた食べたカップラーメンの残りやら弁当とか。

酷いと埃が被った勉虚机の前に携帯ゲーム機と据え置き型のゲーム機がごっちゃに置かれた上に漫画の山と財布やら鞄らしき物まで雑然と置かれている。

土岐早苗さんの地下スペースを想起させるがあの人の場合は趣味の物だけがごちゃごちゃに置かれているだけで生活に必要な物は愛実さんと共用して衣装ケースに入れてるらしいのでまだマシである。

そう、この先輩はマシなんてレベルで片付けてはいけない。

片付けなくてはならないけども。これは1人では到底無理な物量である。

うーん。ここで誰か助けを呼びたいが----。

よし、ここは

俺は意を決して電話する

コール音が5回程鳴る。留守番電話サービスへ接続となる。切る。

ここまで出ないとなると相当なんだろう。

でも。左雨先輩の事となれば駆けつける性格なのは間違いないからあてにしたいのだがやはり難しいか。

俺は電話は止めてラ〇ンに切り替えた。

『左雨先輩の家が汚いの一言ではすまないくらいになってるので助けてもらえませんか』

既読もつかない。

これは完全拒否されているやつか。

きついなー平間さん。

まあ、椎堂の件がそう簡単に水に流せるとは思っていないけれども。

どうしよう。平間さんで駄目なら俺が連絡先を知ってる陸上部員では椎堂に土居先輩なのだが双方共に却下せざるを得ない事情があるためあてにできない。

「左雨先輩」

「ん?なにー?」

こっちはこんなにも部屋の状況を疑問視しているというのに当人は普通にベッドに隙間を空けて寝転んで漫画を読んでいるではないか。

ちょっとこの先輩を埋めてしまってもいいのではないだろうか。

実際こうなった事への仕打ちを1度受けてみないとわからないのではなかろうか。

この人は1度痛い目みないと分からないと思うんだ。

いや、うん。物理的に痛い目はみてるんだけどそこじゃない。

アホをほったらかしにして良かった試しはない。

「左雨先輩の方で誰かここに呼べませんか?」

「あー。私スマホ今行方不明中だからわかんねえわwww。」

この先輩ぶん殴っていいですか。この場面でふざけた笑い方するようなのは駄目だと思うんですけど。

女の子としてというより人として。

「······じゃあスマホさえ見つかればOKですね」

「そだねー。んじゃま探しますか。私も見つかったらツ〇ツ〇やりたいしな」

耐えろ。耐えるんだ俺。見た目はやんちゃな男子中学生でも歴とした女子中学生なんだ。

女性には優しくするように楓さんにも言われたし我慢我慢。

ここはうだうだせず、スマホを探しがてらこの大量のゴミの山をどうにかせねばならない為、誰でもいいから連絡した方がいいのだがどうしようか。

あ、そうだ。今の今星宮先輩の家から出てきたんだから星宮先輩に電話して

『·······あんぁ?』

なにやら頬張ってるご様子。

「ちょっとお願いしたいことが」

プツッ!ツー、ツー、ツー。

電話が切られた音を残してしばらく固まる俺。

なんでだ!?今日2人目だぞ拒否られたの!!

あ、でも。あれか。星宮先輩の場合はまたウィッグ以外にも何かしろとお願いされると思ったのかもしれない。

いやだなあ。そんなのは皆河さんと相談しながらじゃないとできないって。

俺、そんなに信用できないほどの事したかなあ。美人になる手伝いしただけなのにひどいじゃないか。

しかし、星宮先輩が駄目となるとわっ!?

何かが俺の足元を横切った。

そいつの正体は分かっている。壁をものすごいスピードで登っているから。

「左雨先輩。殺虫剤は」

と、言い切る前にロッカーから取り出したそれでヤツを仕留めていた。

それをティッシュで丸めて外へ捨てている。

ちょっと待てい!!外へ捨てるのかよ!!近隣住民の迷惑になったらどうするんだ。

と、そちらを覗き見るとどうもこの家と壁の間の庭というには少し狭いスペースであったため、出入り口とは別の方角でもあるし。ほっとけばいいのか。

正直触りたくないしな。

「左雨先輩、よく触れますよね」

「1人でいる時間が長いと慣れるだぞ」

さいですか。その前に片付けようとかなりませんか。アホですか

ならば専門家も呼びますか。本上先輩という超変人を

電話をかけるとあら不思議すぐに繋がるではありませんか。

『なにー?』

俺は足元にまたアレコレ来るのを避ける為廊下へ出て扉を閉める

「ちょっとアレが大量にいそうな現場にいるからさ」

『今すぐ行く!!』

積極的にも程があるだろ女子中学生。

『場所はどこ?』

あ、そうか。スマホから今いる住所割り出して本上先輩に送ればいいのか。

「住所、そっちにラ〇ンする」

ラ〇ンへ切り替える

虫好き『あー····ここか。わたしの家って星宮さんの家より南へ行った山奥だから自転車で30分くらいかかるかな』

トトキ『なら待ってます』

虫好き『なんならかっ飛ばすから』

トトキ『安全運転でお願いします』

虫好き『フハハハハハ!未知なる虫達がわたしを待っている!』

そこまで一般民家に期待はできません。

そこでラ〇ンは途切れた為ガチで飛ばしてくるつもりかもしれない。

まさか左雨先輩とゴのつくものきアドレナリンを出しまくる同い年の女の子が来るとは予想していないだろう。

さて、アホと異常者が出会うとどうなるか。



「来たよーーーー!!!」

大音声でバタンと扉を開け放つ音を残してこちらへ勢いよく移動するドタドタという足音。

先輩ですよね?女性ですよね?女子中学生で合ってますよね?

「まったく······。ガキかよ」

ん?なにやらもう1人来たようだが、この声はもしや·····。

そしてどこかの扉を開く音とパタパタとスリッパで歩く音が間髪を容れず鳴る。

「おーーー!!トイレにかみきり虫はっけーーーん!!」

この人馬鹿なんですか!?



























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